トップへ

これから買うなら「Air」「Pro」どっち? 最新iPadのラインナップを整理してみた

2020年09月29日 16:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
メガネっ娘が垢抜けしたように変わった新iPad Airにゾッコン惚れた

筆者は、長らくiPad Proを使っているユーザーです。だから、ラインナップ的には下位モデルにあたるiPad Airは、デザインや機能もどちらかといえばトラディショナルなので、新しいモノ好きな筆者は正直あまり注目していませんでした。

ところが、アップルは先日開催したイベントで最先端の「A14 Bionic」チップと電源ボタンにTouch ID指紋認証センサーを載せ、さらに5色ものカラバリをそろえる2020年モデルの最新iPad Airを艶やかに発表しました。その時、筆者は「どちらかといえば地味なほうのクラスメイトの女子が、ある日メガネからコンタクトに変えて髪型もイメチェンしてきたらまんまと一目惚れしてしまった…!!」ぐらいの衝撃を受けました。物欲も一気にフルスロットルです!

発売されて間もない2020年モデルのiPad Proはさておき、それよりも前の世代のiPad Proや第3世代のiPad Air、スタンダードな無印iPadをいまメインで使っているユーザーは、この機にiPadを買い替えるなら「ProとAir、どちらを選ぶべきか?」と迷っているのではないでしょうか。ここはひとつ冷静になって、各モデルの違いを分析してみましょう。

iPad Proの「いいところ」を挙げてみよう

ユーザーとして筆者の主観的な評価と感想ですが、iPadで最大サイズの12.9インチのモデルを擁する高機能なiPad Proは、情報の「アウトプット」と「インプット」の両方に優れていることが大きな魅力だと思います。

「アウトプット」とは、映像や写真を見たり、ビジネスドキュメントを含むファイルを表示する際のパフォーマンスのことですが、実はアウトプットだけなら他のiPadシリーズも十分に優れていると思います。例えば、2019年に発売された第7世代のiPadも、Retinaディスプレイの画質においては上位モデルに引けを取っていません。

ところが、おもにクリエイティブワークの「インプット」側では、iPad Proの圧倒的な高性能がものをいいます。オールスクリーンデザインのLiquid Retinaディスプレイは画面が広々としていて視認性が高いだけでなく、最大120Hzの高速リフレッシュレート表示に対応するProMotionテクノロジーによって、特にApple Pencilで描画したときにペン先のスムーズな追従性が得られます。

オーディオに目を向けると、iPad Proにはスタジオ品質のマイクが搭載されています。高性能な外付けマイクを使うことなく動画の音声が収録できるので、楽器を練習する際にiPad Proで動画を撮って演奏のデキをチェックする際にとても便利です。筆者は、在宅スタイルで仕事をする機会が増えてから、ビデオ通話にマイク性能の良い2020年モデルのiPad Proをよく使っています。通話相手にも声が聞こえやすいと好評です。

カメラの性能についてはいうまでもなく、2020年のiPad Proは最高峰の機能とスペックを備えています。12MPの広角カメラと10MPの新しい超広角カメラにより、構図を使い分けながらクリエイティブな写真や動画がiPad単体で撮影できます。さらに、LiDARスキャナがiPad Proのカメラやモーションセンサーなどと連係しながら、他のiPadよりも一段と高度な3Dオブジェクト認識やARコンテンツの描画ができる点は、今後高度なAR体験を取り込んだゲームやアプリを楽しむ際にiPad Proのアドバンテージとして際立ってくるはずです。

そしてiPad Proは、快適なテキストタイピングを可能にするMagic Keyboardや、軽やかな手書き入力を実現するコンパクトで高機能な第2世代のApple Pencilをインプットデバイスとして使える唯一のiPadでした。新しい第4世代のiPad Airは、この点でiPad Proと肩を並べることになったわけですが、先述のProMotionテクノロジーの有無や、iPad Airに最新のA14 Bionicが搭載されることによる体感の差がどれぐらい現れるのか注目です。
新しいiPad Airはどこまで「Pro」に迫っているのか

最先端の5nmプロセスルールによる製造技術を駆使して作られたA14 Bionicチップを搭載するiPad Airは、タスク処理の速度や安定感においてA12Z Bionicチップを搭載する最新のiPad Proを凌ぐのでしょうか。

A14 Bionicは、6コアのCPUと4コアのGPUを搭載しています。一方、iPad ProのA12Z BionicチップはCPUとGPUともに8コア構成です。アップルはその比較を数値として公表していませんが、特に高度なグラフィックスの描画処理の速度や安定感についてはiPad Proの方がより高いパフォーマンスが期待できるかもしれません。実機による体感も比較してみたいところです。

クリエイティブワークのインプット性能に注目すると、新しいMagic KeyboardやApple Pencilに対応したことのほかに、第4世代のiPad AirはProにどこまで迫ることができたのでしょうか。

まず、USB-Cコネクタを搭載したことで、デジタルカメラなどにUSBケーブルで直結して素速くデータを取り込み、アドビのPhotoshopやPremiere Rush、Pixelmator Photoなどのフォト&ムービーエディタアプリによる作業への移行が可能になります。

筆者が今年、最前線で活躍されているレコーディング・エンジニアの方にお話をうかがった際に、昨今は音楽制作に携わるエンジニアの方々も、クラウドやネットワーク通信を活かしたリモートワーク環境の導入に関心が集まっていると聞きました。

仕事仲間同士で録音・ミックスダウンした音源を確認のためクラウド経由で送り合ったり、iPad Proで受け取ったファイルを自宅スタジオのAirPlay 2に対応する機材に送り出して内容をチェックする際にも、音源ファイル1件あたりのサイズが大きくなっているため、作業には高速で安定したネットワーク環境とデバイスのスペックが欠かせないそうです。Wi-Fi 6にも対応したことなど、第4世代のiPad Airが通信性能をブラッシュアップしたことで、プロのクリエイターにも魅力的なツールとなるはずです。

iPad Airは、クリエイティブツールとして上位のProに迫る性能を獲得しました。Wi-Fi専用モデルのベーシック価格は、11インチのProと比べて22,000円、12.9インチのProに比べると42,000円も違います。これまで、iPad Proが欲しくてもなかなか手が出しづらかったという人に、iPad Airは強くおすすめできると思います。

タイピング感が心地よく、iPadの保護カバーとしても堅牢性に富んでいるMagic Keyboardにも対応したことで、iPad AirはノートPCよりも小回りが利くモバイルワークステーションとして、ビジネスパーソンの期待にも応えてくれるでしょう。在宅ワーク・テレワーク用ツールの本命としても人気を集めそうです。
新しい「第8世代のiPad」の特徴

2019年に登場した第7世代iPadは、画面が少し大きい10.2インチのRetinaディスプレイになり、Smart Connectorの搭載でアップル純正のSmart Keyboardに対応しました。Wi-Fi+CellularモデルはeSIM内蔵になり、ビジネスシーンでノートPCの代わり、またはサブ機としてiPadを活用する人の姿もよく見かけるようになりました。

9月18日に発売された第8世代のiPadは、Touch IDを搭載するホームボタンをフロントベゼルに残すトラディショナルなiPadのデザインを継承しています。ストアで実機に軽く触れてみましたが、外観はカラバリも含めて大きく変わっていないようでした。第1世代のApple PencilとSmart Keyboardには引き続き対応します。

第8世代のiPadは、A12 Bionicチップを搭載しました。第7世代のiPadは第6世代のiPadからA10 Fusionチップを継承する仕様だっただけに、大きなステップアップを遂げた格好です。ちなみに、A12 Bionicは2019年3月に発売した第3世代のiPad Airと同じです。

さらに、スタンダードクラスのiPadでは初めて、AI処理や画像解析など複雑なタスク処理を担う第2世代のNeural Engineを搭載。クリエイティブワークがよりスムーズにできたり、ARコンテンツもサクサクと描画するパフォーマンスの大幅向上が期待できます。

最新の第8世代iPadの魅力は、以下のようにまとめられると思います。

初めてiPadを使う人にも覚えやすく、周りにiPadを長く使っているユーザーがいれば使い方を教えてもらえることも期待できるトラディショナル・デザイン
基本パフォーマンスを高めながら、販売価格は昨年発売のモデルから据え置き

日本では、文部科学省が推進する「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」の追い風を受ける格好で、価格が手ごろでパフォーマンスに優れるiPadが全国の小中学校に普及しつつあります(関連ニュース:「学校に1人1台のiPadを導入した自治体、WindowsからiPadに鞍替えの理由」)。筆者の友人宅も、一昨年に子どもが高校に入学する際に学校の教材としてiPadを買っていました。

アップルも新製品の発表会イベントで、新しいiPadが「過去1年間に発売されたWindowsのノートPCより最大2倍、Andoridタブレットより最大3倍、そしてChromebookよりも最大6倍速い」ことを強烈にアピールしていました。安価なだけでなく、さまざまなユーザーの期待に応えてくれるiPadは、iPhoneに例えると今年の春に発売された第2世代の「iPhone SE」のような立ち位置にいるデバイスなのかもしれません。
シリーズ最小サイズ「iPad mini」の特徴

そして、シリーズ最小の7.9インチパネルを搭載する第5世代iPad miniも販売を継続します。iPad miniは、実際に使ってみるとその独特な利便性が実感できるデバイスです。片手で持ちながらApple Pencilで軽快に操作できるサイズ感が何よりの魅力。iPadOS 14からの新機能である、手書き文字を瞬時にデジタルタイピングテキストに変換する「スクリブル」にも相性が良さそうです。

画面が比較的小さいので、もし在宅ワーク・在宅スクールのメインツールとしてビデオ通話に活用することを視野に入れているのであれば、10.2インチパネルを搭載するiPadなど、画面の大きなデバイスを選んだほうがよいと思います。

あるいは、外出の多いビジネスパーソンがサブ端末として常時バッグに入れて持ち歩きながら、ビデオ通話によるプレゼンテーションにも活用できるデバイスとして選ぶのであれば、iPad miniもよき選択肢になります。iPad ProやiPad Airと“ダブルiPad体制”で華麗に使いこなすのもよいでしょう。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら(山本敦)