今季予定されている全17戦のうち9戦を終え、シーズンも折り返し点を越えた。直近のイタリア2連戦では、ピエール・ガスリーとアルファタウリ・ホンダのコンビによる初優勝、アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)の初表彰台といううれしいニュースもあったが、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は2戦連続してパワーユニット(PU)由来のトラブルでリタイアに終わっている。
ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターは「再発しないよう、対策を打って臨む」としながらも、ムジェロで起きたトラブルは「F1プロジェクトとしてこの5年で初めてのトラブル」であり「非常に複雑怪奇な事象」だと、かなり厄介なものだったことを示唆していた。
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──まずは今週末のロシアGPに向けての意気込みをお願いします。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):今シーズンここまで3連戦を3回、計9戦を終えてきたわけで、ここからがシーズン後半戦になります。いっそう戦闘力を上げて、戦っていきたいと思っています。4台完走4台入賞で、後半戦に向けて弾みをつけたいですね。
──イタリア2連戦でのマックス・フェルスタッペンのトラブルに関して、その後わかったことはありますか?
田辺TD:前回の2回のリタイアは、いずれもパワーユニット(PU)に起因するものでした。その原因究明と対策をここに来る前に重ねてきました。再発が起きないよう、対策を打って臨むつもりです。
──トラブルは「様々な要因が複雑に絡んでいた」とのことですが、PU内の要因ですか。あるいは縁石や路面温度など、外的要因ということでしょうか。
田辺TD:PU内ですね。
──ICE単体のトラブルではない?
田辺TD:違います。
──前回のトラブルでダメージを受けて、使えなくなったユニットはありますか?
田辺TD:いえ、使用予定のプールに入っています。
ー今まで起きたことがあるトラブルですか?
田辺TD:初めてです。私の経験というか、F1プロジェクトとしてこの5年で初めてのトラブルでした。
──まだ原因は掴み切れていないのでしょうか? 再発への不安はありますか?
田辺TD:複雑に絡み合っているひとつひとつを潰していき、対応を打って、今回臨んでいます。それでも100%はあり得ませんが、再発しないという前提で持ってきています。
──他の3台にも、同様の対策を施した?
田辺TD:はい。4台揃ってです。
──浅木泰昭さくらR&Dセンター長は、「単一モードの影響も、少しあったと思う」と言っていました。
田辺TD:そこは複雑に絡み合った、ひとつの要素ではあります。
──フェルスタッペンのクルマだけに2回トラブルが起きたのは、単純に偶然なのでしょうか。あるいは運転の仕方が影響していますか?
田辺TD:運転にはまったく関係はありません。たまたまフェルスタッペン車に出ただけです。
──2回続けて。
田辺TD:はい。最悪でした。
──事前に起きる可能性が想定できていれば、データ上防げたトラブルでしたか?
田辺TD:そうですね。想定を大きく外れていた、と言えばいいのか。
──その類のトラブルが起きることは、想定するのが難しかった?
田辺TD:そうです。非常に複雑怪奇な事象と言いますか、よくわかっている人でも、なかなか理解しにくいものです。
──モンツァとは違うトラブル?
田辺TD:違います。
──出力が出ないのは、何かが壊れたわけではなく、データ上フェイクモードに入った?
田辺TD:正常では無くなったということですね。
──レッドブル側との関係は、悪化していませんか? ミーティングで、何か言われたとか。
田辺TD:「すべてにおいて協力するから、なんでも言ってくれ」と、エンジニアが言ってくれました。こちらも何が起きたのか、その後どんな対策を取っているのか、すべて伝えています。チームとして解決しようというスタンスで、「お前ら何やっているんだ」というような非難は、一切受けてません。
──車体側でも対処できうるトラブルですか?
田辺TD:基本的には、PU側で対処してます。小さな部分で、安全予防的にやってくれたところはありますが。
──フェルスタッペンからは2回のトラブルの際に、厳しい言葉が無線で流れました。田辺さんはどういう気持ちで聞いてましたか。
田辺TD:大変申し訳ないという気持ちでしたね。ドライバーにしてみれば、当然の反応だと思います。何を言われても、しょうがないです。