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「中学教師から性被害」訴えた女性の控訴審、被告の本人尋問ないまま結審 …12月判決へ

2020年09月24日 19:31  弁護士ドットコム

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中学3年のときから札幌市立中学の男性教師による性暴力を受けていたとして、フォトグラファーの石田郁子さんが教師と札幌市を相手取り、損害賠償を求めている控訴審が9月24日、東京高裁(後藤博裁判長)で結審した。判決は12月15日。


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1審では、性暴力がおこなわれた時点から20年以上が経過していたため、民法上の損害賠償請求権が認められる期間(除斥期間)が過ぎているとして、東京地裁は昨年8月、石田さんの訴えを退けていた。



●1審では、性暴力があったかどうかの判断に踏み込まず

訴状などによると、石田さんは1993年、中学3年生のときに男性教師からキスされ、わいせつな行為が始まった。大学2年生の19歳になるまで行為は繰り返されたという。石田さんは2016年2月にフラッシュバックをともなうPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した。



石田さんは、この時点を除斥期間の起算点として主張した。



しかし、東京地裁はこれを認めなかったため、石田さん側は不服として控訴した。控訴理由書では、「子ども時代に受けた性被害は、被害を自覚して声を挙げるまでに非常に長時間を要するため、PTSDを発症した被害時を除斥期間の起算点とすべき」と訴えていた。



9月24日に開かれた口頭弁論には、新型コロナウイルスの感染予防のために席数を減らされた法廷に、石田さんの支援者が入りきらないほど集まった。石田さん側は、除斥期間に対する判断に事実確認が必要だとして、男性教師を本人尋問に呼ぶよう求めたが、東京高裁は認めず、そのまま結審した。



口頭弁論後、石田さんは「私がこの裁判で訴えたのは、男性教師がまだ教育現場にいることが許せなかったからです。しかし、1審では性暴力があったかどうかという判断もせず、私のPTSDさえ疑わしいという判決でした。子どもがこれ以上、被害に遭わないよう、控訴審では次につながるような判断を期待しています」と語った。



●教師による性暴力の予防や再発防止を訴え

石田さんは訴訟を通じて、「信頼する教師から子どもへの性暴力は気づきにくいし、被害に遭った子どもは何をされたのか理解するまでに時間がかかる」とその実情を訴えてきた。現在、性犯罪被害者や支援者らによって、刑法の改正を求める声が高まっており、法務省では今年6月に「性犯罪に関する刑事法検討会」を設置。7月9日に開かれた会合では、石田さんに対するヒアリングがおこなわれている。



また、石田さんは今月、文科省に対して、教師による性暴力の予防や再発防止のための政策を提言しているほか、被害当事者団体「フェアネス・ジャパン」( https://twitter.com/FairnessJapan )を立ち上げ、法整備を求めるネット署名を実施している。