今年の第8戦イタリアGP、第9戦トスカーナGPの赤旗中断後のレースリスタートは、スタンディングスタートが実施されたが、以前は、赤旗中断後の再スタートは、セーフティカー先導でのローリングスタートが採用されていた。
セーフティカーはレースを安全に進行するために 1993年から本格導入され、セーフティカーが先頭車両の前を走行して隊列を整えてから コースを外れ、レースが再開されるようになった。
当時、ローリングスタートによってレース再開後のアクシデントは減ったが、エキサイティングなレースを期待するファンにとっては不満だった。
赤旗が出ず、ドライコンディション下における黄旗でセーフティカーが導入される場合は、現在もローリングスタートでレースは再開されているが、過去にローリングスタートで特に問題となったのが、雨のなかでのローリングスタートだ。
この問題は2014年あたりから検討事項に挙がっていたが、最終的には2016年のイギリスGPでのローリングスタートが問題となった。
当時、レースはセーフティカーの先導で5周走行した後にローリングスタートしたが、「セーフティカーランが長すぎたため、全員が同じタイミングでピットに入ることになった」(バトン)。
そのため、全チームのレース戦略が似たようなものになってしまい、リスタートの醍醐味だけでなく、レース中の駆け引きもほとんど見られなかった。
このレースで優勝したルイス・ハミルトン(メルセデス)でさえ「グリッドには水たまりがあったけど、それがレースというもの。ウエットタイヤで始まったけど、セーフティカーが長すぎて、リスタートのときにはインターミディエイトで走るようなコンディションになっていた」。
「2008年にインターミディエイトでスタンディングスタートしたとき通常のスタートを切ったときのほうが、コース上の水は多かったね」と不満を漏らしていたほどだ。
そこでFIAは2017年からウエットコンディション下に限り、セーフティカー先導でレースを開始(再開)した場合でも、セーフティカーがピットに戻った後に、全車グリッドにつき、スタンディングスタートを切ることができるようレギュレーションを変更した。
ただし、赤旗後は必ずスタンディングスタートが切られるわけではない。レースディレクターがコース状況を考慮して、スタンディングスタートに適していないと判断した場合は、ローリングスタートを選択することもできる。
それはマーシャルポストにある掲示板で「SS」(スタンディングスタート)か「RS」(ローリングスタート)のいずれかを表示することでドライバーに知らせることになっている。
これは2018年のスポーティングレギュレーションから記載、運用されることになり、ウエットコンディション時だけでなく、ドライコンディション下での赤旗中断後にも適用された。
このとき、ドライバーの何人かは「異なる状況のタイヤでのスタンディングスタートは危険だ」と不満を述べていたが、当時レースディレクターを務めていたチャーリー・ホワイティングは「レギュレーションで赤旗時にはタイヤを交換できるため、ほとんどのドライバーが新品タイヤでスタートするので、危険な状況には直面しない」と一蹴していた。
セーフティカーラン後にスタンディングスタートが初めて適用されたのは、2019年のドイツGP。4周のセーフティカーランの後、スタンディングでレースがスタートされたドイツGPは、スタートで大きな混乱はなく、最後尾からスタートしたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が2位表彰台を獲得するというエキサイティングなレースとなった。
そして、赤旗中断後のドライコンディションでのスタンディングスタートは、第8戦イタリアGPがレギュレーション変更後、初の適用レースとなった。続く第9戦トスカーナGPも含めてどちらのレースも赤旗後、エキサイティングな展開になったことは記憶に新しいところだ。
今後も日曜日のレースがウエットコンディションでスタートしたとき、もしくは赤旗中断後のスタート時にはレースディレクターが「SS」と「RS」のどちらを選択するのかを注目してほしい。
またレース中に赤旗が出たときは、再開する際に各車どのタイヤを選択したのが勝負の重要なポイントになることを気に留めておいてほしい。