政府の観光支援事業「GoToトラベルキャンペーン」をめぐっては、その開始時期や東京都除外などが物議を醸してきた。慶応義塾大学特任准教授などをつとめる若新雄純氏は9月17日、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)に出演し、
「今回のGoToトラベルの東京対応はホントもったいないと思っていて、色んな事を変える大チャンスだったのに。超もったいないですよ」
と残念そうにその理由を語った。国交省は15日、10月から東京を追加する方針を発表。新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、最終的に決定するという。(文:okei)
観光地を救うには、"平日でも旅行に行ける体制"を作るべき
報道を受け、若新氏はGo Toトラベルがもっと平日の利用を促し、有効に活用されるべきだった、という持論を語った。「そもそも東京を解禁すれば、土日に人が集中し、密になるに決まっている」と苦言を呈し、さらに「観光地を救うと言っているけれど、昔から観光地を救うのは分散なんですよ」と主張した。
観光客はどれだけ土日に大勢来てもキャパが決まっているし、料金も上げきれない。そのため平日の空いているときにお客さんに来てほしいのが観光地の本音だという。これに関しては「コロナ問題になる前から言われている」と指摘した。
「コロナに関係なく観光地を救うためには、"平日でも旅行に行ける体制"を作らなければいけなかった。だけど日本人って平日に対してクソ真面目だったから、平日って絶対旅行に行けなかったんですよ、気持ち的にも。ようやく今回それを色々見直すチャンスがあったと思うんです」
若新氏は、国が主導して消費者が土日に縛られない文化をつくり、むしろ土日は割引をしないで平日半額にすれば、そもそも収入がゼロの平日に売上が立つと提案。「観光地も温泉も、皆平日に(商売を)回したいですよ」と平日利用をしやすいキャンペーン内容にすることの意義を語った。
観光・仕事・学校・休日・旅行、全てのライフスタイルを変えるチャンスだった
企業の場合は、働き方改革の一環で義務化された有休取得とセットにして、旅行を促すことを提案する。「有給消化の義務化をGoToと組み合わせれば、社会も救うしコロナの密も回避できて、有給も取れる。しかも皆分散して新しい社会が作れる」と利点を述べた。
学校に関しても、今回のコロナ対策でオンライン授業や動画配信などを工夫するようになってきたのだから、これまでの型を変えていける可能性があるという。
「今までは、家族旅行で学校を休むとひんしゅくを買ったが、国が方針を決めて日本全体を救うために『GoToで平日家族旅行に行くのは必要』ってしちゃえば許せたと思うんですよ」
親のスマホやパソコンで動画配信や宿題、授業範囲の情報を受けられるし、親も旅先で仕事が気になれば、パソコンを持参して多少のテレワークをすればいい、と話す。「宿題プリントなどもデジタルですぐ送ってもらえる」「友達がわざわざ家まで届けてくれなくてもいい」などとこれまでの形式を変えられることも示唆した。その上で、
「今回の件は、観光・仕事・学校・休日・旅行、すべてのライフスタイルのあり方を変えられるかもしれないチャンスだったのに。GoToを普通に今やったら、皆週末の1泊2日に集中しますよ」
と再びチャンスを活用しきれなかった残念さを語っていた。確かに、職場も学校も誰もが平日に旅行に行ける雰囲気と利用しやすいシステムをつくり、人々の動き方を変えていけば、観光地も救われるし経済も回せるだろうと納得できる。
ネット上では「そうそう、若新さんの言う通り。休みを分散しないと」「ごもっとも。」「良い事言うわぁ!!」などと賛同する声が多く挙がった。番組MCでジャーナリストの堀潤さんも「観光庁長官、入閣」と冗談めかして賛意を示していた。