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安東弘樹のクルマ向上委員会! 第36回 安東弘樹、ロータス「エリーゼ」を買う!

2020年09月18日 11:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
クルママニアの安東弘樹さんが新車を買った。長らくポルシェ「911 カレラ4S」(マニュアル、右ハンドル)が停まっていた安東家の“スポーツカー枠”だが、後継車はロータス「エリーゼ」というクルマだ。なぜ、これにしたのか。安東さんに聞いた。

※文と写真はマイナビニュース編集部・藤田が担当しました

「ポルシェを売って、ロータスのエリーゼを買うことにしました!」。安東さんからこんなメールを受け取ったのが2020年3月のこと。早く実際にクルマを見て、なぜエリーゼに決めたのか詳しく話を聞いてみたいと思っていたのだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、自動車関連の取材に同行させていただく機会がめっきり減ってしまっていた。今回はようやく、エリーゼに乗って某イベントに現れた安東さんに話を聞くことができた。

マイナビニュース編集部(以下、編):どうしてエリーゼにされたんですか?

安東弘樹さん(以下、安):雑誌の取材でマニュアル(MT)の輸入車特集がありまして、「エリーゼ」、「メガーヌ R.S. トロフィー」(ルノー)、「up! GTI」(フォルクスワーゲン)、アバルト「124 スパイダー」の4台に乗ったんですよ。

まずはアバルトに乗ったんですが、ベースのマツダ「ロードスター」よりトルクはあるんですけど、やはりベース車と同じでペダルレイアウトが右側に寄っていて、「ヒール・アンド・トウ」(MT車を運転する際のテクニック。右足でブレーキとアクセルを同時に踏む)もすごくやりにくいんです。

それで、次にエリーゼに乗ったのですが、もう楽しくてしょうがなくて、その瞬間、「ヤバい、これだ!」っていうか、昔の松田聖子さん風にいうと、「ビビビッ!」ときた感じでした。

まずはペダルレイアウトが、もともとイギリスのクルマということもあって完璧でした。シフトフィールは「カキン! カキン!」という感じで節度があって、これもいい。エリーゼのシフトノブはこの辺り(左肩のちょっと下くらいの位置でシフトを握る仕草をしながら)にあって、もちろんストロークは非常に短いです。

編:シフトノブがその位置にくるっていうのは、自分が座っているシートも低い位置にあるからですか?

安:それもあります。座席は低いですよ。なんといっても、サイドシル(ドアを開いて乗り込むときにまたぐ部分)がこの辺り(胸と腰の間くらいを示しつつ)にありますから。普通、ここですよね?(膝のあたりに手を持っていきつつ)。

(シフトの位置が近いので)ステアリングとシフトの間の手の移動も少なくて、そこもまたいいんですね。それで、「もうダメだ! このクルマしかない!」っていう感じになってしまいました。

編:ポルシェと比べてどうですか?

安:取材の後、帰って自分の「911」にも乗ってみたんですよ。もちろんすばらしいクルマなんですけど、エリーゼと比べるとやっぱり、1,550キロの重さを感じました。これはエリーゼの1.5倍以上なんです。ポルシェの動力性能は倍くらいあるんですけど。

たぶん、アウトバーン(ドイツの高速道路、速度無制限の区間がある)を走るのであれば、エリーゼはとてもじゃないですけど、時速200キロが限界です。カタログ値は最高速度230キロになっていますが、新東名高速を走った時、120キロで風切り音が盛大に聞こえてきました(笑)。それでスタビリティが悪くなることは一切ないんですけど、音だけでも、時速150キロで巡行しようという気にはならないですよね。

ただ、このコンプライアンスの時代に、ポルシェって200キロ以上出さないと、思いっきり楽しめないんですよ。でも、そんな速度を出せるところなんて、日本にはないじゃないですか。富士スピードウェイのホームストレートくらいですかね。でも、そんなに頻繁に行けるわけでもないし。それで、「あれ、なんでこのクルマに乗っているんだろう?」と思っちゃったんですよね。

エリーゼは、街で楽しめる。もう、これだと思いました。もう52歳なので、これからのことを考えると、そんなに長い間、こういうクルマを存分に乗りこなせるかどうかも分かりません。だから、「今だ」と思いました。

安:ポルシェには11年乗りました。もちろん、6年ローンも返しました。右ハンドルでMTという特殊な仕様だったので、データがなくて値段が付きづらいクルマだったんですが、(価値を分かってくれた)輸入車専門のお店で買い取ってもらって、それを頭金にして、ローンを組んでエリーゼを買いました。予想より高く買っていただいたので頭金が多くなり、1円も払わずに納車となりました。ちょっと嬉しかったです(笑)。

編:「911」の新型に乗り換えるのに比べれば、半分くらいで済みましたね(笑)。

安:半分より、もっと安いですね。今の「911 カレラ4S」でMTを待って買ったらオプション込みで2,000万円を超えてしまいます……。ですから、値段は半分未満なのに、エリーゼは乗って楽しい。

編:今の年齢で、なおかつ日本に住んでいる安東さんにとっては、目いっぱい楽しめるクルマであると。

安:そうですね、「ガスペダルをベタ踏み」する機会も頻繁にありますし。911だと、2速でもベタ踏みしたら違法な領域に達してしまいますので、そこは全然、違いますね。

編:エリーゼだと、持っている性能の中で使える範囲が広いというか、力を出し切れるという感じですか?

安:本当にそうです。しかも、それは能力が足りなくて我慢しているという感じではなくて、それが楽しいんです。乗ってて、ニヤニヤしてしまう(笑)。

それに、本当に疲れないクルマなんです。購入した販売店のオーナーさんによると、ほかのエリーゼユーザーさんは「長距離を走るとさすがに疲れる」とおっしゃる方が多いそうなんですが(笑)。

この間、エリーゼで名古屋まで行ってきましたが、乗れば乗るほど一体感が増していく感じがして、全く疲れなかったですね。片道400キロ弱ですけど、トイレ休憩さえなければ、ずっと乗っていられたくらいです。何が疲れるのか、ほかの人に聞いてみたいです(笑)。

編:デザインはどうですか? 白が少しベージュっぽくて、イギリスらしい感じですね。

安:意識していなかったんですけど、白地に赤のストライプって『サーキットの狼』っていう漫画に出てくる「ロータス・ヨーロッパ」と同じなんですよね。それは、ちょっと恥ずかしいですね(笑)。

編:狙って買ったと思われる(笑)。

安:しかも、ロータスですから。「主人公の風吹裕矢みたいに、撃墜マークもつけなきゃいけないのかな?」みたいなね(笑)。

編:形はどうですか? もともと安東さんは、シックな感じのクルマがお好みなのかと思っていたんですが……。

安:これまでは、デザインとしてはあまり好みではなかったんですけど、フェーズ3といわれるこのデザインになって、しかも白地に赤のストライプというのは、すごくシックに感じました。原色系のエリーゼはいまだにピンとこないのですが、このカラーリングはマッチしていると思います。

編:このクルマがやってきて、ご家族の反応はいかがでしたか? 息子さんはさぞ喜ばれたのではないかと思うんですが。

安:長男は興味津々でしたけど、乗ってみたら、もう、あまり乗りたくなくなったみたいですね(笑)。乗り方が、こう、寝そべるような恰好になるんですけど、そうすると、足をどうすればいいのかが、なかなか難しいじゃないですか。足を伸ばしてかかとだけ床に付けておくのか、膝を曲げて足の裏を床に付けておけばいいのかが分からなくて、足が痛かったみたいなんです。普通のクルマだと足の裏が床に付きますが、ロータスの場合は寝転がるような格好になるので。

編:大人だったら踏ん張れる?

安:でも、つらいと思います。私はペダルを踏んでいるからいいんですけど、助手席の人は、乗り心地はあまり良くないみたいですね。

この間、長男に「メルセデス(もう1台の愛車であるメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」)とロータス、どっちがいい?」って聞いてみたら、食い気味に「メルセデス」っていう答えが返ってきました(笑)。

編:運転できる年齢になれば、また変わってくるかもしれませんね。

編:クルマの軽さを追求するため、普通のクルマには当たり前のように付いているものでもエリーゼには付いていないと思うんですが、そのあたりは?

安:快適装備でいうと、エアコンとパワーウィンドウ「だけ」しか付いてないです。ナビだけは後付けで無理やり付けましたけど、ほかはサングラスとドライビンググローブを置いておける棚があるくらいですね。

編:パワステもついていないんですか。

安:もちろん、付いてないです。それがたまんないんですよ。「すえ切り」(停車状態でハンドルを切ること)なんて、絶対にできない。しようとも思いません。この間、トレーニングのし過ぎで左肩を痛めたんですけど、その時はステアリングを回すのが大変でした。

編:走っている時の乗り心地は硬いんですか?

安:硬いです。段差は「カタン、カタン」という感じですね。

編:このクルマ、しばらくは乗りますか?

安:そう思います。代わりになるクルマがないので。

こんなクルマ、もう出てこないと思うんですよね。エリーゼの新型は近く出るらしいんですけど、ACC(高速道路を前車に追走して設定速度で走ってくれる機能)が付くんじゃないかとかいう噂もありますし、絶対に車両重量は重くなりますよね。MTは残すと思うんですけど、こんな戦闘機みたいなクルマは、もう出てこないでしょうね。

編:では、大満足の買い物だったと。

安:そうですねー。ただ、ヘリテージエディションの後に出たエリーゼの限定車が675万円くらいだったんですよ! 色は違いますし、ストライプもないし、内装の革部分の範囲にも差がありますし、さらに屋根も、ヘリテージエディションはボディと同じFRP(繊維強化プラスチック)で、後発の限定車はファブリックの幌なんですけど、それにしても、100万円くらいは違いますから、「おいおい!」とは思いました。ちょっとショックというか、ベースは同じクルマなのに、なんでこんなに違うのっていう感じですね(笑)。でも後悔はしていませんし、とても満足しています!

安東弘樹 あんどうひろき 1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。 この著者の記事一覧はこちら(安東弘樹)