2020年09月18日 10:11 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの影響で、入園者数を制限している東京ディズニーリゾート(TDR)。運営するオリエンタルランド(千葉県浦安市)が、契約社員のダンサーや出演者に、配置転換や退職を求めると報じられた。
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東京ディズニーランドとディズニーシーは7月1日から再開したが、毎年恒例の「ディズニー・ハロウィーン」や「ディズニー・クリスマス」のイベント、プログラムは中止。期間限定のショーやパレードもなくなり、ファンからは「寂しい」という声が上がっている。
日本経済新聞(9月14日)によると、イベントが中止となり仕事がなくなった契約社員のダンサーや出演者に対し、園内の業務にうつるか退職金を受け取り退職するかを選択してもらうという。対象は1000人程度だという。
ファンからは「夢と魔法はどこへ…」「ダンサーさん達ほど大事にしてもらいたい」と心配する声が上がっている。はたして、今回のオリエンタルランドの措置は法的にどう考えられるのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。
ーーダンサーや出演者は退職するか配置転換を受け入れるかの選択を迫られています。オリエンタルランドの措置は法的にはどう考えられますか。
配置転換とは、同一企業内で担当する職種や所属する部署を変えたり、勤務地の変更を命ずる企業の措置ですが、どのような場合でもこれができるとは限りません。
これまでの裁判例では、転勤の事案ですが、労働条件として、勤務地を特定場所に限定する内容にはなっていない、逆に転勤を命ずる根拠規定などがあり、実際に頻繁に行われていた場合に転勤命令を認めます。
しかし、業務上の必要性がない場合や、他の不当な目的から命令する場合、あるいは従業員に著しい不利益を与える場合は、無効であるとされています。
ーー今回は、全く職種が違う業務への配置転換となります。
ダンサーや出演者はそもそも、パレードやショーなどの催し物で活躍する、観客を楽しませる、という業務を担う条件で雇い入れられたはずです。まさかダンスやショーへの出演以外の業務に配置転換の打診がなされるなど予想だにしていなかったでしょう。
また、オリエンタルランドが「現在のディズニーランドとは別の場所に新たなテーマパークの営業を始めたので、その新テーマパークに移ってくれ」というようなことならば話もわかりますが、今回は、そうではありません。全く職種が違う業務への配置転換です。これでは業務上の必要性があるとは言いがたいでしょう。
ダンサーなどが退職したり、会社が契約更新をしなければ雇用契約は終了しますが、今回の配置転換命令は、単に雇用をとりあえず維持する、という目的だけのものです。
しかしながら、今回のコロナ禍は全世界的に企業活動や経済活動に影響をもたらしています。特に多数の観客を楽しませるエンターテインメントやテーマパーク関連の企業が、未曾有の大幅な減収減益に陥っていることは、報道もされており、誰の目にも明らかです。
ある意味、従来の判例の流れがそのまま当てはまらない状況であると言えるでしょう。今回の会社の措置は、雇用を維持するための苦渋の選択とも言えるでしょう。
そのため、あながち、退職とともに、それに加えて、配置転換による就労の維持を選択肢の一つとしてダンサーなどに提案する今回の会社の措置が、無効とは言いがたい面もあります。
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html