長引く新型コロナウイルスによって、鉄道業界も"新しい生活様式"に対応しなければ段階に来ている。
JR各社が8~9月にかけ、2021年春以降の終電時刻の繰り上げや減便を相次いで決定した。JR東日本は、東京から100キロ圏内の各路線について、30分程度の終電繰り上げを発表。新型コロナウイルスの流行を契機に利用客の働き方や行動が変化したことで、深夜時間帯の電車需要が大幅に減少しているという。
同社は9月3日付けのリリースで「今後、感染が収束した後も、テレワークやEコマースなどはさらに広く社会に浸透していくことが想定され、お客さまの働き方や、行動様式も、元に戻ることはないと考えています」と見解を述べている。
事前アンケートでは、繰り上げ実施に反対する人はごくわずか
同社はさらに、
「こういった状況を踏まえ、鉄道事業者として安全かつ利便性の高い鉄道サービスを今後もサスティナブルに提供するためには、お客さまのご利用の変化により柔軟に対応することが必要となります」
と終電時刻見直しの背景を説明。設備工事の効率化や関係者の働き方改革にもつながるとして、利用客の理解を求めた。
JR西日本も、深夜時間帯の利用客減少を理由に終電時刻を繰り上げる。近畿エリアの主要線区を対象に10~30分程度繰り上げることで、約50本の列車を削減。同社は
「近年、帰宅時間が早まり、深夜時間帯のご利用が減少しています。特に、24時台については、そもそもご利用が少ないことに加え、さらに減少しています」
と傾向を分析しており、事前に実施したアンケート調査では「私鉄と同じ時間ぐらいまでの運行」「最終新幹線からの接続確保」「夜間のイベントに対応」といった条件の下でならば、終電繰り上げに反対する人は8%しかいなかったという。
JR九州の青柳俊彦社長も、8月下旬の記者会見で在来線の減便に言及。「需要減退に応じて規模縮小が必要だ」などと述べた。鹿児島線などが中心で、都市圏以外の減便も検討するという。
テレワークの拡大で定期代の支給をやめる企業も出るなど、鉄道の利用状況は変わりつつある。一方、都市部では、交通網が発達していることから、これまで自家用車を持たずに生活してきた人も多い。新型コロナウイルスを機に、今後、人々の"移動"についての考え方も変わっていくだろう。