2020年09月16日 13:41 弁護士ドットコム
フレックスや在宅勤務制度を使えるのは、子育て中の社員だけ。産休、育休の社員が抜けた分をカバーしても評価や対価が得られないーー。子どものいない社員からの強い不満が「子どもがいないことを理由に職場で不快な経験をされた男性&女性へのアンケート調査」によって明らかになった。
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アンケートを実施した「ダイバーシティ&インクルージョン研究会」発起人の小酒部さやかさん(NPO法人「マタハラNet」創設者)は9月16日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで開いた会見で、「(子どもの有無による)女性同士の対立ではなく、組織のマネジメント、人事制度の問題だ」と調査結果について述べた。
また同発起人の朝生容子さん(「子どものいない人生を考える会」主宰)も、「カバーする社員に評価や対価をきちんとすることで、不快な経験やハラスメントは減っていく」として、子どもの有無にまつわる不快な言動の背景には、企業側の制度の不備が隠されていると指摘した。
アンケートは、子どもがいないことで不快な経験、不利益な扱いをされた経験のある15~60歳の男女を対象に、オンラインで実施(調査期間:2019年12月10日~2020年1月31日)。有効回答数は107件(女性:96件、男性:5件)となった。
アンケートでは「不快な経験」「不利益な経験」の内容や行為者についてたずねた(複数回答可)。
不快な経験として「子どもがいるといかに素晴らしいか聞かされた」(54件)が最多で、「なぜ子どもを作らないのか原因を追及された」(37件)、「子どもがいることが、いかに大変か聞かされた」(35件)、「子どもがいないことで人より劣った者として扱われた」(22件)と続いた。
また不利益な経験としては、「子どもがいない」ことが理由の超過勤務や、育休・時短者の業務のカバーによる業務負荷の増加があげられた。「子どもがいないので、いつも残業していて当然と残業を強いられた」(36件)、「産休・育休の制度利用者や子どものいる社員の業務のしわ寄せを受けた」(34件)と並んだ。
なお、「不快な経験の行為者」をたずねる質問では、最多が女性同僚(51件)となり、男性上司(41件)、顧客・取引先(20件)が続いた。また、「妊娠中・子育て中の社員からされた不快な経験」に関しては、圧倒的に女性同僚(47件)、女性上司(20件)からの行為だったと答えた人が多数を示した。
この結果について、小酒部さんは「産休、育休カバーする女性の中には、不妊治療中や流産、死産した経験のある様々な人がいる」と述べ、これに加えて「女性が多い職場では、産休や育休にともなってカバーする機会が多くなってしまうこと、女性同士では子どもの話が話題にあがることが多いからかもしれない。ただ、不快な経験をした人たちが望んでいることは、相手に対する怒りではなく、カバー分の対価や評価を得るということ」と強調した。
フリー回答欄では「子どもの写真をたびたび見せられたり、成長の話を聞かされて辟易する」、「生まれたばかりの孫をお披露目に来て、赤ん坊を見せよう、抱かせようとしてきたりして、とてもつらくて不快で泣かないようにするのが精一杯」など、行為者には悪意がなかったであろうものも含まれる。
朝生さんは、「捉え方の問題かと感じるものもあるかもしれない。ただ、調査の目的は、(悪意はない行為でも)傷つく人もいることに気がついてほしいというのが趣旨。不快と感じる背景にはそもそも『評価されていない』『対価がない』という根源的な不満、ストレスがあるのではないか」と指摘した。
小酒部さんは、適切な評価と対価に加え「子育て中の社員だけが守られる制度であれば、分裂したままになってしまう。フレックス制度や在宅勤務制度を全社員が使える制度にするなど、ダイバーシティがこどものいない社員にもメリットがある制度にしてほしい」と述べた。