日産自動車は9月16日、『Power of Z』と題したオンライン公開イベントを開催し、国内外で高い人気を誇るスポーツクーペ『ニッサン・フェアレディZ』の7代目プロトタイプを世界初公開した。
GT-Rと並びニッサンを代表するスポーツカーであるフェアレディZは、1969年に初代S30が登場。ロングノーズ・ショートデッキのスタイリングと、当時の欧州産GTカーに引けを取らないパフォーマンスの高さで人気を博し、特に北米市場では大ヒットを記録した。
その後、第2世代のS130を皮切りに伝統を紡いでいったZは、現行モデルのZ34型に至るまで、実に50年以上の歴史を誇る。また、モータースポーツにおいてもその活動の歴史はサファリラリーなどで活躍したS30型240Zに始まり、後継モデルであるS130~Z32が北米IMSAシリーズで大活躍をみせた。日本ではスーパーGT GT500、GT300の両クラスでZ33が活躍したほか、6代目のZ34がピレリスーパー耐久シリーズでいまなお現役でレースを戦っている。
そんなフェアレディZの次世代モデルは、2020年からスタートする事業構造改革計画“NISSAN NEXT”のなかで、ニッサンが今後18カ月の間に投入する12車種の新型モデルの1台とされ、新生ニッサンを象徴するアイコンのひとつとして登場予定だ。
今回、ニッサン・パビリオンでワールドプレミアされた車両は7代目Zのプロトタイプだが、公開イベントに登壇した内田誠CEOは「このクルマはコンセプトカーではありません」と述べた。
内田氏によれば、Zらしさに溢れた新型モデルのデザインは「ほぼ完成した」といい、その設計においては「伝統に忠実であることを大切にした」という。
そのエクステリアデザインは日本のデザインチームによって開発され、S30、Z32をイメージしながら現代的な雰囲気を組み合わせたものとなっている。「こ」の字型を描く特徴的なLEDヘッドランプは240ZGのデザインを彷彿させる点において、その特徴のひとつだ。
また、サイドシルエットはロングノーズから続くルーフラインが垂直に切り立つテールエンドが終わりを迎える伝統的なデザインを継承。リヤに向けてなだらかに傾斜するラインはS30が持つ特徴的なシルエットが表現されている。
リヤのデザインはS30とZ32を含む歴代Zのテールランプからインスピレーションを受けたデザインが与えられているが、そのデザインは現代風にアレンジされたものだ。
インテリアではオーナーがスポーツカーのドライビングを最大限に楽しめるよう、プロレーシングドライバーとともに理想的なメーターデザインや、室内空間のあり方が検討された。
その特徴のひとつは12.3インチのフルデジタルメーターディスプレイであり、エンジン回転計の針が真上を示すと同時に、シフトアップインジケーターが点滅することでドライバーにシフトアップを促すもの。他の計器類も、一目でクルマが最適な状態であることがわかるようにデザインされているという。
パワートレインの詳細や気になるスペック等の発表はなかったものの、新型ZはV6ツインターボエンジンと6速マニュアルトランスミッション(6速MT)が採用されることが明らかにされた。
6速MTの採用について、自身最初の愛車にフェアレディZを選ぶほど大のZファンでもある内田氏は「私の血がそう語ったというか……絶対にマニュアルじゃなければならないと思ったのです」とコメントした。
「スポーツカーにお乗りの方々はマニュアルが大好きですからね。ギアシフトの瞬間は人馬一体となりますね。本当に自分の身体がクルマとつながっている感じになるんですね、まさにパートナー、相棒です。そこが大事な要素だと思います」
「今年の夏に発表した最新のEVである『アリア』は、最先端の電動化、運転支援技術を搭載し、これまでになかったまったく新しいドライビングを提供します。そして、革新の伝統を受け継ぐZは、ドライバーが主役の、ピュアスポーツカーとして、世に送り出します。Zは、私たち日産のDNA、情熱そのものです」
日本だけでなく世界からも熱い視線が向けられる新型フェアレディZ プロトタイプ。半世紀以上にわたる“Zの歴史”を継承する、7代目の市販車モデル登場に向けた続報はもちろんのこと、将来のモータースポーツシーンに登場するか否かを含め引き続き注目すべきモデルと言えそうだ。
■フェアレディZ プロトタイプ 主要諸元
エンジン:V6ツインターボ
トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション
全長:4,382mm
全幅:1,850mm
全高:1,310mm
ホイール/タイヤ寸法:
フロント:255/40R19
リヤ:285/35R19