NTTインディカー・シリーズのミド・オハイオレース2は、シリーズの第11戦となる。
このレースが終われば、残りのレースは10月のインディアナポリス、ハーベストGPの2戦と、セント・ピータースバーグの1戦、計3戦を残すのみ。
2020年は全14戦として行われ、その内ロードアメリカ、アイオワ、WWTR、そしてこのミド・オハイオがダブルヘッダーで開催され、ハーベストGPを加えると14戦中10戦が1週末に2レース開催されたことになるが、いまだにその2レースを連勝したドライバーはいない。
同じレーストラックでも、そう簡単にポンポンと連勝ができるほとインディカー・シリーズも甘くはない。
このミド・オハイオでも結果的に言えば、レース1はペンスキーのウィル・パワーが、レース2はアンドレッティ・オートスポートのコルトン・ハータが制している。
特にレース2はレース1のデータが反映されることにより、各チーム、各マシンはより進化した速さを見せようとトライする。それはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨も例に漏れず、苦い思いをしたレース1の結果を覆すべく、エンジニアらとミーティングを重ねていた。
そこに一筋の光明が差し込んだのが、予選前の雨だった。通り雨だったが路面は完全に濡れ、ウエットでの予選になった。雨を得意とする琢磨にとってはウェルカム。予選で前のポジションを獲得するチャンスだった。
琢磨は予選グループの最初の組みでコースに出るが、セッションが始まるや否やスピンするマシンが続出する。
琢磨もかろうじてコース上に止まっていたが、まったくペースが上がらず、乾いてペースが上がるライバルたちに差をつけられる一方だった。おそらくタイヤの内圧設定が間違っていたという中で、琢磨のタイムはなんと11番手。トップから10秒も話されており、明らかに何かが間違っていた。
まるでレース1の悪夢再来のようだったが、レース2も22番手という後方からのスタートになってしまった。
レースはグリーンフラッグ直後に、サンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン)のコースオフからの接触で、フェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ)、アレックス・パロウ(デイル・コイン・ウィズ・チームゴウ)がコースアウトする波乱の始まりだった。
そして15周目にはターン1でダルトン・ケレット(AJフォイト)のコースアウトで2度目のフルコースコーションになる。これをチャンスと読んだRLLRは琢磨をステイアウトさせた。同じ作戦を取ったのはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ)のみだ。
琢磨はイエローが解除されたリスタートからマルコを引き離しにかかり、15周の間トップを走行。5秒以上のマージンを稼ぐ走りを見せた。この瞬間が今週末のハイライトだったかもしれない。
32周目にアンダーグリーンの中でピットインしコースに戻ったが、残念ながらポジションは18番手のままになってしまう。
その後ポジションを上げようと試みるも、なかなか抜きにくいミド・オハイオでは、順位も上がらず、2度目のピットイン以降でもう一度イエローコーションが出れば、ほのかな期待も持てたのだが、アクシデントは起きなかった。
最後のピットで替えたブラックタイヤもペースを上げるきっかけにはならず、今日も後方でこう着するレースをすることになってしまった琢磨。
「予選前に雨になった時は、やった!と思ったんですけどね。すぐにやんじゃいました(笑)。雨は得意にしてるので期待してたのに」
「走り始めたらウエットタイヤが全然グリップしなくておかしかったですね。おそらくタイヤのプレッシャーもおかしかったと思うんですけど、他にも原因があったかもしれない」
「レースは2度目のイエローコーションになった時にステイアウトして、ポジションを上げようとトライしたんですが、他のマシンの列に入るような形になって、ポジションも上げられませんでしたね。昨日みたいに後ろの方で戦っているなら、違うアプローチをしようと思ったんですが……」
「この週末は本当にうまくいきませんでした。昨日の反省もあっていろいろ考えたことをトライしたんですけどね。それがうまくいかなかったのが悔しいです」
「次のハーベストGPは今年1度レースしてますし、その時はサスペンションにトラブルがあったのはわかっているので、良いペースで走れることを祈ってます」
これで4位を維持していたシリーズポイントも7位まで転落した。
チームメイトのグラハム・レイホールは2戦連続の4位でランキングを上げ、またポイントリーダーのスコット・ディクソンも、レース1、レース2後方からの追い上げで共に10位まで挽回してレースをフィニッシュした。
やはりランキング上位に残るドライバたちは、着実にポイントを重ねる。琢磨は残り3戦でどれくらいポイントを稼ぐことができるだろうか。