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WEC:トヨタ、TS050ハイブリッドで挑む最後のル・マンで3連覇を目指す

2020年09月11日 18:31  AUTOSPORT web

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トヨタTS050ハイブリッド 2019ル・マン24時間
WEC世界耐久選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは9月19~20日、フランスのサルト・サーキットで開催される第88回ル・マン24時間レースに、大会3連覇をかけ2台のトヨタTS050ハイブリッドで挑む。

 2018年、翌19年とル・マン連覇を達成したトヨタのLMP1マシン『トヨタTS050ハイブリッド』は、2021年のWECレギュレーション変更にともない、今シーズン限りでその役目を終える。

 残り2周でのストップや、現レイアウトのコースレコード樹立などさまざまなドラマを作ってきたTS050ハイブリッド。2016年のデビュー以来、進化を続けるそのマシンは、ル・マンで初めてハイブリッドLMP1カーが走行した2012年と比較してエネルギー回生率は150%増加、また燃料消費量を35%減らしながら1周のラップタイムは約10秒向上している。

 そんなトヨタTS050ハイブリッドは、WEC第7戦として例年の6月ではなく9月に行われことになった今季の特別なル・マンで、他の58台のマシンとともにサルトのグリッドに並ぶ。
 
 新型コロナウイルスの影響を受けた2020年のル・マンは、97年の歴史の中で3度しかない6月以外の月に開催される大会となる。さらに、新型感染症の拡大防止の観点から例年20万人以上訪れる観客を入れず、無観客でのレースとなることが決定済みだ。
 
 また、これに関連してル・マン市内で行われていた恒例の公開車検やドライバーズパレードランも中止に。走行スケジュールも変更になるなど、いつものル・マンとは大きく異なる環境下で24時間の戦いが繰り広げられることになる。

 そのル・マンでトヨタが狙うのは大会3連覇、そして通算6度目のポールポジション獲得だ。今年ポールポジションを奪えば、その数はプジョーが持つ歴代3位の記録に並ぶ。また、3連覇の達成では優勝トロフィーを永久に保有する権利が与えられるのだ。

 一方、チーム内での争いは、前戦・第6戦スパ・フランコルシャン6時間を終えた時点で7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス)組が、8号車(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー)組を12ポイント差でリードする展開となっている。

 しかし、今季ル・マンでは“ダブルポイント制”が採られており、ポールポジションでの1ポイントを含め最大獲得ポイントは51点に上る。選手権をリードする7号車がさらにリードを広げるのか、2連覇中の8号車がこのル・マンで逆転して最終戦バーレーンを迎えることになるのか、シーズン終盤の選手権争いという点でも今大会は注目の一戦と言えるだろう。

■小林可夢偉「ル・マンでの勝利を切望している」 

「ル・マンというシーズン最高の舞台で勝つことは、つねに我々の目標であり最大の挑戦です。2連覇中のチャンピオンとしてこのレースを迎えられることは大変光栄です」と語るのは、TOYOTA GAZOO Racing WECチームの村田久武代表。

「例年、耐久レース特有の熱狂的な空気をつくってくれるファンの皆さまに我々の挑戦を見て頂くことを楽しみにしているのですが、今年は残念ながらそれが叶いません。とても特殊なル・マンになるとは思いますが、この環境下でレース開催にこぎつけ、我々に挑戦するチャンスを与えてくれたACOフランス西部自動車クラブの多大な努力に感謝します」

「ファンの皆さまと直接会場でお会いすることはできませんが、ご家庭から観戦されているファンの皆さまへの感謝を胸に今年のル・マンに挑みます」

 新型コロナの影響を受け、例年とはまったく異なる状況で迎える2020年のル・マン24時間レースは、9月19日(土)の現地14時30分(日本時間21時30分)にスタートが切られる。

 トヨタの3連覇を目指しル・マンに臨むTOYOTA GAZOO Racing WECドライバーたちのコメントは以下のとおりだ。

7号車トヨタTS050ハイブリッド
●小林可夢偉
「ここ数年、我々7号車は勝つチャンスがありながらも、それを逃してきました。それだけにル・マンでの勝利を切望しています」

「いつかその日が来ると信じて戦ってきましたが、それが今年であることを願っています」

「最高の性能を発揮するTS050ハイブリッドの最後となる今年のル・マンが無観客で行われるのは残念ですが、遠くからTVで観戦してくださるファンの皆さまの応援を背に受けて頑張ります」

●マイク・コンウェイ
「もうル・マンでの2位には飽きた。既に我々7号車は3度も2位に終わっており、もちろん今年の目標は優勝だ。ル・マンはそれだけ特別なレースであり、どれだけ勝つことが難しいか、歴史が物語っている」

「この年に一度のレースのために、チームは車両を作り上げてきた。僕自身も、シーズンを通してずっとル・マンのことを思い続けてきたんだ」

「昨年は不運だったけど、今年はまた大きなチャンスがある。我々には素晴らしいTS050ハイブリッドがあり、ふたりの最高のチームメイトがいるので、いつものように自分たちのレースを戦っていくつもりだ」

●ホセ・マリア・ロペス
「僕はツーリングカーで3回世界チャンピオンになっているが、ル・マンで勝つことはつねに僕の夢だった。このレースで勝つことは、僕のレースキャリアの中でも最高点となるだろう」

「最高のチームメイトとともに、最高のチームに所属している今こそ目標は明確であり、それは表彰台の真ん中なんだ」

「しかしル・マンは非常に困難で、多くのドライバーが惜しいところまで行きながら勝てずにいる。僕はTOYOTA GAZOO Racingでル・マンを戦い、勝利を争うことができるという幸運に恵まれたし、このチャンスをものにすべく全力を尽くすよ」

■8号車トヨタTS050ハイブリッド
●中嶋一貴
「ル・マンは私にとって多くの意味を持つ、特別で、唯一無二なレースです」

「2012年に初めて出場したときから、私にとって最大の目標はこのレースでの勝利でしたが、2018年、2019年と優勝することができた今でもそれは変わっておらず、我々全員が勝利という唯一の目標へ向けて突き進んでいます」

「もちろん2度ル・マンを制することができたこと、そして日本人ドライバーとして初めてそれを達成できたことは光栄です」

「しかし、私自身はさらに記録を伸ばすことを目指しています。このレースに勝つことがいかに難しいかはとても良く分かっています。何が起こるか分かりませんので、自分の仕事に最大限に集中して挑みます」

●セバスチャン・ブエミ
「ル・マンは今年最大のレースですが、いつもよりも長く待つことになった。この特別な年にル・マンで戦えるのは幸運だし、TOYOTA GAZOO Racingのためにも良い結果で終えたいと思っている」

「我々は2年連続でル・マンを制しているが、もちろん今年の目標も3度目の勝利で、そのために全力を尽くすよ」

「今年はファンの皆のいないコースでのレースとなるけれど、我々はその状況にも適応していく必要がある。とはいえ集中力や決意は変わらない。我々はふたたび勝つために全力を尽くすだけだ」

●ブレンドン・ハートレー
「ル・マンでの勝利、表彰台の最上段に登ることはすべてのドライバーにとっての夢なんだ」

「もちろん、今年は観客の方々がいないなど、いつもとは大きく違うレースになると思うけど、勝利のために求められるファイティングスピリットと、そのチャレンジは変わらない」

「非常に多くの要素が絡み合うので、チーム全員が一丸となり、それぞれが完璧に自分の仕事をこなさなくてはならない。長く、厳しい戦いになりますし、何が起こるか分からないので、そのための準備を完璧にする必要があるね」