2020年09月11日 16:11 弁護士ドットコム
俳優の伊勢谷友介さんが大麻取締法違反の疑いで逮捕されたことをめぐり、映画監督の紀里谷和明さんが、とんだとばっちりを食らっている。
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紀里谷さんは9月9日、ツイッター上で、伊勢谷さんの名前と混同されて「大変迷惑している」と投稿した。そのうえで「その多くが誤解であったと気付いたツイートですが、それすら気づかず、そのままの認識の人達が世の中にいると思うとゾッとします。実害が発生する可能性もあり、厳重に対処していきます」とつづった。
さらに紀里谷さんは「情報をきちんと確認しないままの発信は一般人であろうと勘違いではすまされません」「既に弁護士チームを発動させています」「数日中に削除されない場合は、IPアドレス開示の仮処分手続きに入り、手順を踏んで損害賠償請求までやります」とつづけている。
紀里谷さんは、映画監督デビュー作「CASSHERN」(キャシャーン)に伊勢谷さんを起用したことがある。また、紀里谷(きりや)と伊勢谷(いせや)は、たしかに似てなくもないが、間違えるほどではないように思える。インターネットの権利侵害問題に取り組む中澤佑一弁護士に聞いた。
――伊勢谷さんと紀里谷さんを混同したツイートは削除しないとダメなのでしょうか?
逮捕されたと名指しされた場合、人違い、かつ、本当は逮捕されていないのであれば、名誉毀損など、人格権が侵害されていると言えます。
そこで、紀里谷さんとしては、人格権に基づいて、その記述について削除請求をすることができます、法的な判断としては、投稿者やその記述を掲載しているウェブサイト側に削除義務が生じます。
――勘違いでもダメなのでしょうか?
まず、削除義務という点においては、投稿者の主観的な故意や過失は、考慮外の事情ですので、勘違いで投稿したことを理由に削除義務を免れるということはありあません。
損害賠償責任についても、"故意または過失により"という要件ですので、勘違いであっても賠償義務は認められます。
刑事上の責任(刑罰)については、「故意」の点が問題となりますが、法的な細かい議論は飛ばして、結論だけ言えば、今回のような勘違いの場合は、犯罪の成立を否定する事情にはならず、犯罪が成立すると考えられるでしょう。
――その他のポイントは?
作家・投資家の山本一郎さんが、自分宛てに、政治家の山本太郎さんに対する非難や中傷が大量にメールされることをブログに書いていました。
今回のケースのような、よく確認しない人による何となくの勘違いを発端にした誹謗中傷や名誉毀損というのは、思っている以上にインターネットにあふれているのかもしれません。
繰り返しになりますが、勘違いであっても法的な責任は発生します。そして、何より相手にとってはとんでもない迷惑ですので、自身が発信する情報に責任を持つことはインターネットを利用するうえで重要です。
【取材協力弁護士】
中澤 佑一(なかざわ・ゆういち)弁護士
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。
事務所名:弁護士法人戸田総合法律事務所
事務所URL:http://todasogo.jp