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不倫相手の妻に「一生、あなたを許さない!」と脅された 慰謝料払ったのに、なんとかならない?

2020年09月11日 09:51  弁護士ドットコム

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夫(妻)の不倫相手を絶対に許さないーー。不倫をされた側としては、このような感情が湧き起こることがほとんどだろう。こころの傷は簡単には癒えなくても、不倫相手に慰謝料を請求することで気持ちに区切りをつけられる場合もある。


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しかし、中には不倫相手を許せないあまりに、行き過ぎた「復讐」に走ってしまうケースもあるようだ。弁護士ドットコムにも「過去の不倫相手の奥さんが家を訪ねてくる」という相談が寄せられている。



相談者によると、過去の不倫相手である男性とは縁を切り、慰謝料も支払済だという。現在は別の男性と結婚し、新たな人生を歩んでいるところだ。



そんな相談者の家に、過去の不倫相手の妻が訪ねてくるという。妻は、相談者の夫に過去に相談者が不倫していた事実などについて話したこともあったようだ。



●場合によっては「犯罪」が成立する可能性も…

相談者はいつまた過去の不倫相手の妻が家を訪ねてくるのか不安を抱えている。このような妻の行動に法的な問題はないのだろうか。



離婚・男女問題に詳しい長瀬佑志弁護士は「相談者が過去に不倫をしてしまったとはいえ、不倫された妻は相談者に対して何をしても許されるというわけではありません」と指摘する。



「相談者はすでに不倫相手とは別の男性と再婚しているとのことですから、不倫相手の妻が何度も相談者の家に訪ねてくることは、態様や頻度、その発言内容によっては、相談者や再婚相手に対する脅迫罪に該当しうる行為といえます(刑法222条)。



また、不倫相手の妻が相談者の夫に対し、相談者が過去に不倫をしていたことを告げることは、相談者に対する名誉毀損に該当しうる行為といえます(刑法230条)」



●損害賠償請求も考えられる

長瀬弁護士によると、不倫相手の妻の一連の行為は「刑事責任だけではなく、不法行為に基づく損害賠償責任も問われうるもの」だという(民法709条)。



「相談者から不倫相手の妻に対し、一連の行為に対する慰謝料として損害賠償を請求することが考えられるでしょう。



また、参考になる裁判例として、不倫された妻が、不倫相手の女性の職場に不倫を暴露する旨の手紙を送付したり、架電をしたりしたことについて、『不貞行為等に起因するものとはいえ、その内容や頻度、執拗さ等に照らし、社会通念上被告が受忍すべき限度を超えたものであるから、名誉毀損、脅迫ないし業務妨害の不法行為を構成する』と判示したものがあります(東京地判平成24年2月24日)」



このような不倫相手の妻の行動をやめさせるために、できることはあるだろうか。長瀬弁護士は、次のようにアドバイスする。



「『妻の言動が違法であること、そしてこれ以上継続するようであれば損害賠償請求をするほか、告訴すること』を妻に通知し、抑止することが考えられます。



もし相談者から通知してもなおも妻の言動がおさまらないようであれば、通知にとどまらず、損害賠償請求をする訴訟を提起したり、告訴の手続きを進めたりするほか、関係各所に事前に連絡し、これ以上の被害が拡大しないよう協力を求めておきましょう」




【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所
事務所URL:https://nagasesogo.com