「“キャリア面談をするように”と会社から言われているのですが、どのようにやったらいいでしょうか?」「キャリアとは会社が用意するものではないのですか?」──これは、先の見えない時代で、従業員のモチベーション向上を図るべく始まった“キャリア開発施策”で苦悩する管理職の声です。
管理職の本音としては、「キャリア支援をして業績が上がるのだろうか?」と悩むところ。今回はこれからの時代に求められる、部下のキャリア支援の仕方についてお伝えします。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
キャリア開発は本当に必要? そもそも何なのか
“キャリア開発”とは、将来にわたる職務経験や、これに伴う能力開発を中長期的に計画することです。経済学・経営学の言葉で、主に企業で社員のキャリアを育成する際に用いられます。
キャリア開発を進める具体的な仕組みを「キャリア・ディベロップメント・プログラム(CDP)」といい、目標設定、適性判断、教育・研修・人事異動・昇格まで含みます。
先の見えない時代、また個人の多様化が進む時代においては、キャリア開発施策に上司が関わっていくことが求められます。部下のキャリア開発支援をすることで、部下のモチベーションを向上させ、組織成果に繋げていく流れを作らなければならないのです。
今どきの若者は学生時代にキャリア教育をしっかり受けており、自分自身のキャリアを考えることをしてきています。しかし、管理職世代は「キャリア教育なんて、受けたことも聞いたこともないし……」といったことがほとんどだと思います。なので、冒頭のような嘆きが頻繁に聞かれるのです。
キャリア支援の前に、まずは自身のキャリアを振り返ってみて
部下のキャリア開発支援には、上司自身が自分のキャリアを考えるタイミングを持つことが必要です。自分自身のキャリアを考えることによって、その方法を学んでいくのです。次のような、3つのステップでキャリアを振り返っていきましょう。
1.これまでの“仕事人生”での出来事を年次ごとに振り返りながら、自分のモチベーションの上がり下がりを見ていきましょう。モチベーションが上がった時、下がった時の具体的な出来事を振り返っていくことが大切です。
2.振り返る中で,役割や仕事への関心の変化、培ってきた能力,大切にしたい価値観を明確にしていきましょう。この「役割」「関心」「能力」「価値観」がこれからのキャリアを考えていく際のカギになっていきます。
3.上記2つのステップで見えてきた自分自身の関心や価値観から生まれる“生きがい”や“働きがい”に繋がるものを軸に、これからキャリアプランを描いていきます。
その際に、これから果たしていかなければならない“役割”と、そのために培っていかなければならない“能力”を考えていきます。キャリアプランは時系列に具体的に考えていくことがお勧めです。ざっくりとしたものであるほど、その達成は難しくなるので……。
部下のキャリア開発支援をする前に、まずはこの3ステップを自分自身のキャリアで行ってみてください。
その後に、部下との面談でこれまでの仕事を振り返りながら、今現在を明確にし、将来のキャリアに向かってのプランを具体化していきましょう。その後は、ことあるごとの面談の中で確認と支援をしていけばいいのです。
現在、求められるマネジメントの基本は部下の“内発的動機付け”です。部下自らがその仕事を自律的にこなし、成長していく。そして、組織の成果が上がっていく現場を創っていかなければなりません。
“内発的動機付け”の高い職場を作るためにも、本日お伝えしたキャリア開発支援といったものを前向きに捉え、進めてみてください。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。