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「わいせつ教師は懲戒免職に」 教師による子どもへの性暴力、被害者が文科省に政策提言

2020年09月10日 10:21  弁護士ドットコム

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社会問題化している学校教師による児童や生徒への性暴力。政府がわいせつ行為をした教員への厳罰化を検討する中、教師による性暴力被害の当事者が9月9日、「教師によるわいせつ行為が発覚した場合は懲戒免職」「教員免許の再取得を不可とする」など、再発防止のための政策を文科省に提言した。


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政策提言をおこなったのは、在校時から札幌市立中学の男性教師に性暴力を受けていたとして、教師と札幌市を相手取り、損害賠償訴訟を起こしている石田郁子さん。NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士らとともに同日、文科省の佐々木さやか政務官とオンラインで面談した。



石田さんは自身の経験や、被害当事者のアンケート調査などから、生徒が被害を相談しても教師や学校が隠蔽する悪質なケースがあることを説明。「政府はわいせつ行為をした教師への厳罰化を検討していますが、現在の問題点はまず教師がわいせつ行為をしたという認定をしてもらうことのハードルの高さです。被害の訴えがあったら、第三者委員会による調査を義務付けてほしい」と話した。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)



●教師によるわいせつ行為「厳罰化しても隠蔽されるだけ」

教師によるわいせつ事件は過去最多となっており、現在、政府はわいせつ教師を懲戒免職にすることや、教員免許再取得に規制することなど厳罰化を検討している。



これに対して、石田さんは「厳罰化したとしても、ばれないようにするだけではないか」と懸念を示した。石田さんは、被害当事者のアンケート調査をおこなってきたが、「子どもが相談をしても、ほかの先生が見て見ぬ振りをしたり、学校側が隠蔽したりと、子どもたちのSOSは届いていないケースが多くありました。私自身、提訴前に札幌市教育委員会に対し、証拠を揃えて性被害があったことを訴えましたが、認めてもらえませんでした」と話す。



「現在の問題点は、教師によるわいせつ行為を認めさせることのハードルの高さにある。厳罰化は、そのハードルを超えた後のことなので、ほとんどの被害は防げないのではと懸念しています。事実認定も教育委員会の職員は専門家ではないので、利害関係がなく、性犯罪に詳しい専門家に任せるべきです」



また、石田さんは教育委員会ごとに処分の基準が異なり、わいせつ行為をおこなった教師でも「停職数カ月」で済む場合があることや、教員免許を失っても3年を過ぎれば再申請することが可能で、別の学校で教員を続けているケースがあることなどを指摘した。



「被害当事者たちは、加害教師がいまだ教育現場にいて、別の子どもたちに被害が出ているのではないかということを心配する人が多い」として、現在の教育行政での問題点をふまえたうえで、次の政策10項目を提言し、さらなる防止策を求めた。




(1)文部科学省による懲戒処分の基準・調査方法の統一。原則、懲戒免職を求める。



(2)第三者委員会による調査を必須とする。



(3)教員免許の再取得を原則不可とする。



(4)依願退職・異動によって教師に責任回避させない。追跡調査の仕組みを作る。



(5)他の教師による通報の義務化、連携できる職場環境を作る。



(6)疑いのある教員を一時的に現場から離れさせる仕組みを作る。



(7)性暴力やその対応に関する、教員への研修。



(8)生徒及び教員への定期的な実態調査。



(9)教員採用時に、子どもへの性暴力の可能性チェック。



(10)恋愛など教師と生徒以外の関係の禁止。




石田さんは9月、被害当事者団体「フェアネス・ジャパン」( https://twitter.com/FairnessJapan )を立ち上げた。法整備を求めるネット署名を実施、「教師によって性被害をうけた当事者の声を、防止のための政策に反映していきたい」と話している。