TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加するトヨタ育成の勝田貴元は9月4~6日、エストニアで行われたWRC世界ラリー選手権第4戦『ラリー・エストニア』にトヨタ・ヤリスWRCで参戦。最終日まで総合5番手につけるも、クラッシュを喫し無念のリタイアとなった。
日本人WRCレギュラードライバーを目指す勝田は、TGRラリーチャレンジプログラムの下で今年1月に行われたWRC開幕戦モンテカルロ、2月の第2戦スウェーデンに参戦した。その後、シリーズは新型コロナウイルスの影響で約半年におよぶ長い中断を余儀なくされ、これにともないWRCチャレンジプログラムも一時的に中断されていた。
しかし、WRCのシーズン再開に合わせてプログラムもふたたび始動。勝田はTOYOTA GAZOO Racing WRTとともに第4戦エストニアに臨むこととなった。
WRCイベントとしては初開催となるラリー・エストニアは、高速グラベル(未舗装路)ラリーで知られるラリー・フィンランドとそのキャラクターが似ているとされる。勝田は以前、同イベントにR5カーで2度出場しているものの、WRカーでの参戦は今回が初めてとなった。
4台のトヨタ・ヤリスWRCを含め計11台のWRカーが顔を揃えた今戦、勝田は序盤から安定した走りを披露し大部分のステージで、メーカーワークスドライバーたちの間に割って入る6番手タイムを記録する。デイ2最後のSS11ではステージ5位となるタイムをマークし、総合順位でも5番手で1日を終えてみせた。
しかし、総合5番手で迎えた競技最終日のSS13で、痛恨のコースオフを喫しマシンは横転。ラリー続行が不可能となり、ここでリタイアを喫することになった。
このアクシデントについて、勝田はペースノートを作る際の判断ミスがコースアウトの原因であると述べている。
「僕がクラッシュしたコーナーは、ペースノートに記していた角度よりも少しきつかったのですが、それはレッキでの自分の判断ミスです。スピードが高すぎて側溝にはみ出し3、4回転してしまいました」と勝田はクラッシュの様子を説明した。
ラリー全体では、走るごとにフィーリングが良くなったといい、土曜日にはチームメイトに近いタイムを出せたことで自信を深めたようだ。
「土曜日はかなり自信を持ってドライブすることができましたし、ステージを重ねるごとにどんどんフィーリングが良くなっていきました」
「そして、いくつかのステージでは、世界最高のドライバーであるトヨタのチームメイトに近いタイムを刻むことができました。同じクルマで、彼らと自分を比較することができたのは本当に有意義でした」
■間違いなく今までで最高のパフォーマンスだった
「(リタイアの原因となった事故は)大きなクラッシュでしたが、ダン(ダニエル・バリット:コドライバー)も僕も無事でした」と勝田は続ける。
「チームには本当に申し訳なく思います。彼らは素晴らしいマシンを作ってくれましたし、アクシデントが起こるまでは走りを楽しんでいました」
「この週末に得た多くのポジティブな学びが将来、僕をより強くしてくれると確信しています」
プログラムのインストラクターを務めるヤルッコ・ミエッティネンは「金曜日から土曜日にかけてのタカ(勝田)は速く、コンスタントで、本当に良い走りをしていた」と勝田の走りを評価した。
「特に土曜日の走りはクリーンで、迷いのない運転をしているように見えたし、間違いなく今までで最高のパフォーマンスだった」
「日曜日の朝のSS12を終えた時点で彼は総合5位につけ、トップとの差は1kmあたり0.41秒だった。この差は予想よりもはるかに小さく、1kmあたり0.81秒差だったラリー・スウェーデンと比べても大きく改善されている」
リタイアという結果ながら存在感を存分に示した勝田の次なる挑戦は、10月8~11日に行われるWRC第6戦イタリアだ。このラリーも勝田はR5カーで3度の出場経験を有するが、ヤリスWRCでの参戦は初めてとなる。