2020年F1第8戦イタリアGPの予選は、相手のトウ(スリップストリーム)を利用しようと、アウトラップではポジションを巡ってさまざまな駆け引きが見られた。
そんななか、フロントロウを独占したメルセデスの2台は、予選Q3では2回のアタックとも真っ先にコースイン。しかも、2台は間隔を空けてアタックしていた。そのことを予選後のFIA会見で尋ねられたルイス・ハミルトンは、その理由をこう答えた。
「2019年のことがあったから、僕たちは今年どうするか事前に対策を練っていた。ストラテジーチームは良い仕事をしたと思う。金曜日も、そして土曜日もその話し合いは続けられ、今回の予選ではバルテリ(ボッタス)が先にアタックし、僕が2番目に出ることになった」
「ただ、僕は彼のトウにつきつつも、クリーンエアで走るという微妙なポジションでアタックすることになった。それがどれくらいのポジションなのかは教えられないけどね。みんなはトウにつくのがベストだと思っていたようだけど、それだと最終セクターの中間地点でタイムを失うんだ」
一方、ハミルトンの前でアタックを行ったバルテリ・ボッタスは、前車のトウをまったく利用できず、1000分の69秒遅れの2番手に終わった。ボッタスは今回メルセデスが採った戦略をどう受け止めているのだろうか。
「1番目に出ていくのか、あるいは2番目に出ていくのか、さまざまな検討を行った結果、僕とエンジニアによる分析ではふたつにそれほど大きな違いはなく、わずかに先頭のほうが良かったため、僕は最初にコースインすることを選択したんだ。なぜなら、完全なクリーンラップなので自分の走りに集中でき、アウトラップでも自分のペースでタイヤをマネージメントできるからだ」
ただし、最終的にはチームメイトにポールポジションを奪われたため、少し後悔している様子も見えた。
「Q2で一度トウを利用する機会があったので、使ってみたら意外と良かったんだ。結局、それが今日の僕のベストタイムだった。先頭でのアタックでは、確かにコーナーでは速かったけど、ストレートでは風を切って走らなければならないからね。まあ、どっちが良かったのかはデータを見るまではわからないね」
このことは、メルセデスでトラックサイドエンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンも認めている。
「昨日、トウの効果に関して分析したところ、計算では我々のマシンはストレートでは得をするものの、コーナーでかなり失っていることがわかった。そのため予選セッションをシンプルにして、我々のマシンのアドバンテージを活かそうと、クリーンエアのなかで走らせることにした」
予選モードの禁止が注目されるなか、メルセデスは金曜日のフリー走行からモードの使い方だけでなく、トウの使い方もシミュレーションしていた。マシンの開発だけでなく、そのマシンをいかに走らせるかという点でも、メルセデスは王者にふさわしい仕事をモンツァで行っていた。