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SNSアニメ「モモウメ」誕生秘話! 共感の嵐を呼ぶ“あるあるネタ”はどう生まれる? スタッフが明かす【インタビュー】

2020年09月05日 18:51  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

『モモウメ』(C)モモウメ2019
「職場あるある」をネタにしたショートアニメ『モモウメ』が今、アツい。

新人OLとベテランOLコンビによる“ゆる面白い”漫才のようなやりとりが人気の秘訣。
YouTubeで毎週1話配信され、人気の動画は900万回以上の再生数を誇る。SNSを中心に幅広い層から人気を集めているのだ。


『モモウメ』の制作を手掛けるのは、デジタルマーケティング会社の株式会社キュービック。アニメ制作会社ではない同社が、なぜアニメ作品を制作するに至ったのか――。

本稿では『モモウメ』誕生秘話に迫るべく、本作のプロデューサーである内田真之介氏と制作担当の株式会社ファニムビの中道一将監督に取材を決行。
キャラクター設定やネタづくり、さらにマーケティング会社ならではのSNS戦略についても話をうかがった。
[取材・文=阿部裕華]

■仕事の楽しさを表現したい。『モモウメ OL篇』誕生秘話
――マーケティング会社であるキュービックが、なぜアニメの制作に至ったのでしょうか?

中道監督:僕もそれ知りたい。

内田P:何回も聞いてるから知っとるやろ。

中道監督:あはははは。

内田P:僕が入社した当時はキュービックに動画やアニメをつくる部署はありませんでした。でも、僕は動画クリエイティブとして入社したんです。
それで「内田さんの強みが活きそうだからやってみよう!」と動画制作がスタートし、そのままアニメ制作が進行しました。

――実写ではなく、アニメにしようと考えたのには何か理由が…?

内田P:僕ら日本人にとって、アニメは特別な存在です。ずっと慣れ親しんできた友だちのよう。幼少期から大人になるまで、アニメはいつも僕らの側にあり続けますからね。
老若男女問わず、世代を超えて多くの人々に愛されるものにしたいと思ったら、やっぱり「アニメ」だなと思いました。

そんなタイミングでちょうど僕の同級生で映像監督をやっている友だちから「これを見て」とURLが送られてきました。それが中道さんの制作したカナダ留学のアニメ作品だった。
「めっちゃおもろいやん!一緒におもろいことできそう!」と思ってすぐさま電話をしました。


『モモウメ』を制作する前に、「こういうのつくりたい!」と僕からいくつか広告案件の映像を依頼し、そのあと、弊社で展開している薬剤師の転職メディアのプロモーションとして『モモウメ(薬剤師篇)』が誕生しました。


――中道監督はお話をいただいたとき、率直にどう思いましたか?

中道監督:光栄でした。お電話いただいた時、僕からも詳しくお話を聞かせてくださいとお願いしました。内田さんからは「アニメでおもしろいことをやろう!」と言われました。

――モモちゃんとウメさんははじめ薬剤師でしたが、様々な職業を転々として、今はOLに落ち着いていますよね。この展開はふたりで話し合って決めていったのでしょうか?

内田P:2人が薬剤師からいろんな職業に挑戦することになったのは、もっと多くの仕事の悩みを解決したいと思ったからです。薬剤師さんだけじゃない、様々な職業につく皆さんを元気にしたかった。
でもいざ「いろんな職業篇」をつくり始めてみると、『モモウメ』の世界観をなかなか醸成できないことに気づきました。

「薬剤師篇」は全12話の中で薬剤師であるモモちゃんとウメさんのストーリーや世界は一通り出来上がっていました。
でも「いろんな職業篇」では1話につき一つの職業を取り扱うため、世界観が都度異なり、ストーリーがリセットされてしまいます。アイドルや美容師などいろいろつくってみたものの、1話で完結してしまうと『モモウメ』全体の世界観が表現できない。

やはり『モモウメ』の世界観を大事にしたいよね、という話になって。方針転換を決めました。

中道監督:『モモウメ』の世界観をつくって毎週配信していくと考えたとき、自分たちがやりたいことじゃないと続きません。
たとえば、いろんな職業の中に占い師がありますけど、僕は占い師をやったことはないし、普段から占いへ頻繁に行ってもいない。深く知らない職業を軸に作品をつくり続けるのは難しかった。


内田P:まず自分たちが共感できないと作品づくりで分からないところが出てきてしまいます。「いろんな職業篇」では題材にする職業の人にヒアリングしたり、徹底的に観察したりしていましたが、とにかく大変でした……。

占い師の方の仕事を理解するために何度も占いへ通いました。時には「あなたの前世は牡蠣です」と言われたことも(笑)。どんな反応したらよかったんでしょう…?(笑)

――最終的に、OLを題材にしたのはなぜですか?

中道監督:OLも僕らは経験したことがないけれど、僕は会社(ファニムビ)を経営しているので上司の立場や組織の難しさを分かっている。
内田さんの働くキュービックさんでもたくさんの人が働いているし、会社の中でインサイト(ユーザーが行動するために必要なニーズ)を見つけられる可能性がある、それならきっと共感してもらえるストーリーが描けるはず!という結論が出ました。

内田P:ちょうどその当時、「働き方改革」という言葉が走っていたこともあって、「働き方がどう変わったら多くの人が幸せになれるんだろう」と考えていました。

僕らは『モモウメ』を作る中でいろんな人にヒアリングをしますが、仕事が楽しくないと思う理由を尋ねると「会社の上司・同僚と上手くいかない」といった人間関係に対する不満がすごく多かった。
仕事そのものよりも人間関係に悩む人が多かったんです。

裏を返せば、心地よい関係性ができることで、仕事を楽しめるかもしれない。人間関係から働き方改革ができるような、仕事が楽しいと思えるような表現にフォーカスしたいと思いました。

アニメを通して職場の人との関係の豊かさや笑いを伝えたかった。「働く」にフォーカスした王道のアニメにしよう!と話し合って、「OL篇」に辿り着きました。
忖度せずにお互いにめっちゃ意見言い合いました。

中道監督:意見を言い合う中で衝突したことは何度もあります。意見を言い合わないといいものができないので。

■動物キャラクターから着想を得た『モモウメ』のトレードマーク
――テーマが変化していった一方、ずっと受け継がれているのが『モモウメ』ふたりのトレードマークであるマスクです。薬剤師以降のお話でマスクを外そうと思わなかったのか気になります。


中道監督:うちの会社(ファニムビ)でずっと動物のキャラクターを使ったおもしろいアニメをつくりたいと思っていたけど、全然上手くいかなかったんですよ。
だから、『モモウメ』のお話がきてキャラクターデザインを考えたとき、クマのキャラクターにあるような口元の白い丸い部分をどうにか表現したかった。あれ、めっちゃ可愛くないですか? 絶対につくりたいと思った。

それが人間だとマスクでできる!と思ったんです。なので、マスクは絶対外さない。
あれはクマのキャラクターの口元の白い丸い部分だから。聖域です。

内田P:一度聖域を外したデザインをつくってもらったこともありましたけど、無言で返しましたもん。

中道監督:全然可愛くなかった(笑)。

内田P:結局、コロナウイルスの影響で、マスクキャラクターの需要が上がってしまいましたしね……。
「コロナウイルスの影響ですか?」と聞かれたり、SNSでつぶやかれたりしていますけれど、もとからつけています。

――マスクにそんな事情があったとは……。『モモウメ』のキャラクターデザインはパッと見て分かりやすいのも特徴ですよね。

中道監督:アニメキャラクターをデザインするときのポイントの一つに、シルエットだけで誰か分かることがあります。
『モモウメ』の場合、丸を2個描いて認識できるシルエットにしようと思い、あの形にしています。厳密にはモモちゃんは丸2個ではなく、丸と雲のような形ですが。

というように、キャラクターデザインをしました。キャラクターを覚えてもらいやすいのはアニメとして強いですし、グッズ化もしやすい。
ほかにも、デザイナーや制作メンバーに「どういう人がベテラン(新人)に見えるか」といろいろ聞いて、ゆるいキャラクターデザインになりました(笑)。

――モモちゃんが24歳、ウメさんが40歳と絶妙な年齢差だと思います。どういった経緯でこの年齢差に決めたのでしょうか?

中道監督:実は僕が40歳、内田さんが41歳なんです(2020年9月時点)。仮にウメさんを30歳にしてしまうとどういうキャラクターにすべきか分からなくなる。理解に時間がかかるんですよ。
目指す世界観を実現する上で、とことん感情移入できるようにするためにこのウメさんの年齢を設定しました。

一方、モモちゃんが24歳なのは自分たちの周りの後輩と同じくらいの年齢差というのがあります。40歳と24歳だったらこの関係が成り立つだろうなと考えながら年齢を設定しました。

内田P:『モモウメ』を一緒に立ち上げたデザイナーと僕は、モモちゃんとウメさんと同じくらいの年齢差なんです。うちの職場のコミュニケーションのやり取りもまさにあんな感じなので、照らし合わせています。

歳が離れている分、先輩も後輩も互いに気を遣う。その垣根を『モモウメ』を通して無くしたいという想いもあるのかもしれません。

中道監督:モモちゃんの気持ちは正直分からないことも多いけど、歌謡曲が趣味とかは僕と同じなんです。僕らが楽しんでつくれそうな設定をキャラクターに組み込んでいきましたね。

――モモちゃんとウメさんの関係性が羨ましく感じます。なかなか新人とベテランがあそこまで仲良くするのは難しいような気もしていて。

内田P:そんなこともないですよ。僕が親父ギャグを言うと普通にスルーされますしね~(笑)。
普段から後輩とは軽口を叩き合いながら会議したりしてますよ。僕らにできるんですから、簡単に誰でもできるはず。

中道監督:「こんな関係性のふたりいないよ」とコメントをたまにいただくのですが(笑)、モモウメのなかのやり取りは制作チームでの実体験です。
→次のページ:時流を掴んだネタづくり

■時流を掴んだネタづくり
――キャラクターデザインや年齢差は「薬剤師篇」から受け継がれていますが、もう一つ個人的に大好きな『4C2』ネタも「薬剤師篇」から。あのネタが生まれたキッカケをぜひ教えてください!



中道監督:先ほど話に上がった『モモウメ』の立ち上げから一緒に作品づくりに携わってくれているデザイナーの子を喜ばせるためにつくりました。

内田P:2.5次元がめっちゃ好きなんですよ……。ネタの企画会議でその子が「2.5次元やりたいで~す」と言って。
薬剤師ということでワセリンをテーマに2.5次元のネタを考えてくれました。保湿を「4C2」で表現したときはさすがだな、と。

中道監督:閃きましたね~。ただ、その時はおもしろいと思ってつくりましたけど、私の予想以上に反響が大きくて(笑)。逆に聞きたいんですけどなんでここまでウケていると思います……?

――2.5次元とBLという、どちらも話題性の高い題材を組み合わせているのが注目されるのかなと…。あと、歌詞の面白さと歌謡曲的な曲調が絶妙です。

中道監督:なるほど。2.5次元もBLも全く分からないまま作っていましたね。

内田P:あれはイケると思いましたよ! 僕も監督もおっさんなので、最初は2.5次元のことをどれだけ議論しても分かりませんでしたけど。
女性メンバーに歌詞を見せて、意見を聞いて、反映して、どんどん良くしていきました。

中道監督:次は『ワセリンの王子様』が主役の話やりたいです……。

――4C2以外にも、『モモウメ』では1話ごとにさまざまな話題を取り上げていますが、テーマはどのように決まるんでしょうか?

内田P:制作チームと監督の定例会議でざっくりネタ探しや取り上げるネタの順番、スケジュールを決めて、監督にシナリオをお願いしています。
そして僕らがマーケティング会社の強みを活かし「OLの方はどんなことを考えて行動しているのか」をリサーチしてファクト集めをし、枠組みとインサイトを組み合わせて最終的なネタをつくっている感じです。

ただの「あるあるネタ」ではなく、『モモウメ』の世界観に合うかを監督の方で判断してもらっていますね。

――今年3月の時点ですでに「テレワーク」ネタを取り入れていましたよね。


内田P:ネット上ではトレンドの流れが速いので、WEB上でアニメを展開している以上、時流を取り入れていくのはマストだと思っています。
テレワークが増えている話を耳にした時、それをモモウメに取り入れようと監督と会話しました。

――時事やトレンドをなぜここまで早く配信できるのでしょうか。

中道監督:動画を制作するときは、A案だけではなくB案も考えているんです。時世がどう転んでも共感できるネタを仕込む状況をつくれるように、2本道で進んでいる。
具体的に落とし込んであるA案と、ざっくりとしたボケ・ツッコミのテンポだけが決まっているB案があって、時事ネタを取り入れたいときはB案と結びつけるようにしています。

――時流を掴むためにSNSからネタを仕入れることもありますか?

内田P:もちろんそれはしていますが、SNSは氷山の一角でしかないと思っています。だから、生の声はとても重要です。
直接ヒアリングをすることでわかるココロの本質がある。

見る人の気持ちに寄り添って、素直に代弁することが『モモウメ』の大事な部分だと思います。

――『マウンティングマウンテン』ネタもSNSきっかけですか?


内田P:そうですね。実際に身の回りでそういうことって起きているのかヒアリングをしてみると、海外のホテルのプールでサングラスをかけて撮影した写真や夜景の綺麗なレストランで恋人とフレンチディナーなどの写真がたくさん出てきて、現実離れしたSNSの世界に「これは何かあるぞ」と興味を持ちました。

実際にヒアリングをしてみると、Instagramに投稿するために、海外旅行に行ったり、テーマパークの新アトラクションは日本に上陸する前に海外で乗ったりする。というお話をお聞きして…僕おじさんだからそういうのに疎かったんですけど、すごい世の中だなぁと驚愕したのがきっかけです。I

でも、「Instagramに投稿する心理って、マウントの取り合いに近いんじゃないか?」と思ったんです。

試しに”マウントを取る”ってどんな気持ちなんだろうと、ファミレスでモモウメ制作チームの男ふたりでマウント合戦をしてみたんです。
実際マウントをとるってめちゃめちゃ大変なんですよ。男ふたりはすぐに限界がきました(笑)。

きっとこのマウント合戦に辟易している人も少なからずいるはずです。だからこそこの窮屈さすらも笑いに変えられたらなって。すぐさま監督にアイデアを話して…『マウンティングマウンテン』が生まれました。

中道監督:転機となった回でしたね。実はマウンティングマウンテンの前につくってお蔵入りした幻の0話があるんです。

内田P:いつかは出したいですね(笑)。

中道監督:今のテンポやフォーマットはこの動画で確立されました。

そもそも現代はなかなかじっくり動画を見る時流じゃなくなってきているんです。会社の若いメンバーと話してみるとテンポが速くないと見ないです」「ながら見できるくらいでいいんじゃないですか?」と言われて…ハッとしました。

中道監督:このやり取りがすごく重要だったんです。内田さんと僕だけじゃ考えつかなかった発想だと思います。
若い世代の人がアドバイスしてくれたから、今のモモウメテンポになってより多くの人に見られるようになりました。

■学生をターゲットにしたTikTokの縦動画が『モモウメ』の転機に
――『モモウメ』はYouTubeでの動画配信だけではなく、Twitter・Instagram・TikTokなどさまざまなSNSを活用しています。それぞれのSNSの役割、媒体によって合う動画のフォーマットなどはあるのでしょうか?

内田P:『モモウメ』は新しいジャンル“SNSアニメ”に挑戦しています。“SNSアニメ”という言葉も僕たちが生み出しましたが、それぞれのSNSの特徴に合わせて配信コンテンツを変えているアニメは他にないと思います。

YouTubeは『モモウメ』のメインとなるショートアニメを配信し、世界観を楽しんでもらう場所です。
Twitterはユーザーとのコミュニケーションを取る場所、Instagramはモモちゃん・ウメさん・その他キャラクターの画像や素材を見ることができる場所、いわばギャラリーとして活用しています。

TikTokは音楽とともに若い世代のみなさんにも楽しんでもらいたいという考えですね。
どのSNSでもモモウメの世界観に触れてもらえるようにすることが目的です。

――だからTikTokでは、学生ネタになっているんですね。

内田P:そうです。いろいろ調べてみたらTikTokが若い世代に支持されていることを知り、使ってみようと。TikTokは実写が主でアニメがさほどありませんでしたから、もしかしたら受け入れてもらえるんじゃないかと。

中道監督:TikTokを使い始めた最初もいろいろ模索していましたよね。変わったノリに挑戦してみたり、4コママンガを動画にしてみたり。
そんなとき、内田さんが「TikTokに合う学生ならではの雰囲気でやりましょう! 」と風呂敷を広げ始めて。

内田P:TikTokは中高生が多く見ているので、OLではなく学生のモモちゃんを登場させることにしました。一発目にタピオカのネタを持ってきたのも、流行をいち早くとらえたかったから。


中道監督:あの動画は遊び心を爆発させましたね(笑)。歌をうたえるスタッフに歌ってもらって、動画もクリエイティブとしての粗さをかなり残したままでした。

内田P:かっかっかっかっと笑ってしまった。あまりに面白かったのでそのままアップロードしました(笑)。

中道監督:正直、本当にこのまま世に出しちゃっていいんですか!?と思いました。

内田P:でも、一気にたくさんの方に見られるようになりました。それまでは平均の再生回数が100回前後だったのですが、タピオカの動画はアップロードして間もなく100万回ほど再生されました。

中道監督:驚きでした…!

内田P:さらにタピオカのあとに出した『親友と好きな人が被りました』がもっと見てもらえるようになりましたね。


中道監督:1本目のタピオカはロジックが一切なくて、だからこそ面白く、多くの方に見てもらえた動画だと思います。
2本目に出した『タピオカ音頭』は70万ほどの再生回数で、1本目が当たり過ぎたこともあり少し不完全燃焼でした。

しかし1本目が大当たり、2本目はさほど再生回数が伸びなかった事で、3本目以降にどうつくればいいか道筋を考えることができました。
だからこそ『親友と好きな人が被りました』は再生回数が伸びたんだと思います。何事も試行錯誤が大切ですね…。

――TikTokでバズが起こったことで、YouTubeの視聴者層に変化はありましたか?

内田P:実は『モモウメ』はTikTokから知名度が上がっています。学生がおもしろいと思うと、兄弟や親御さんに話しブームが幅広い層へと広がっていく。学生がブームをつくると思っています。
TikTokを楽しみつつ、そのうちYouTubeチャンネルにも気づいてくれます。実際「娘・息子が教えてくれた」「妹から知った」というコメントが多いです。

当初モモウメは20から30代のはたらく女性をターゲットにしていましたが、結果的にTikTokがキッカケで視聴者層が広がりましたね。
今は40~60代の方たちや、男性の視聴者も増えています。「会社や社会はよく分からないけど、おもしろい!」とコメントをくれるお子さんもいらっしゃいますよ。

■いつもユーザーの近くにいる。『モモウメ』を国民的アニメへ
――『モモウメ』を通じて視聴者のみなさんに一番伝わってほしいことは何ですか?

内田P:働く人たちのマインドをポジティブにしたいと思っています。これは「薬剤師篇」からずっと続く精神です。
職場や働き方のネガティブな部分を代弁しつつも、それを笑いに変えていきたいです。

日曜の夜に「明日からまた仕事に行きたくない…月曜が憂鬱…」という想いをどれだけ減らすことができるか。
また金曜日に一週間にあった嫌なことを『モモウメ』を見てスッキリしてもらえるか。常に考えながら制作しています。

「モモウメを見るようになってから最近、自分の職場の上司も可愛く見える」とコメントを見て、僕たちのやっていることは間違いじゃなかったと確信に変わりました。
監督とふたりでニヤニヤしながらいつもコメントを見ています。

中道監督:『モモウメ』の関係を見て、誰と働くかで仕事の楽しさが変わることが伝わってほしいです。楽しい人と働いたら、どんな仕事も楽しいということが言いたい。
ひとりでは仕事は楽しめません。職場で感性の合う人をひとり見つけてほしい、そんな想いが届いてほしいです。

――最後に、『モモウメ』の今後の展望を教えてください。

内田P:もちろん『モモウメ』という今まで積み上げてきたスタイルはありますが、そのスタイルにとらわれ過ぎないようにこれからもチャレンジしていきたいですね。
結局は僕ら作り手が楽しく制作に向き合えていることが大事。僕らが楽しんで仕事する姿がアウトプットされて近い将来モモウメに現れてくると思います。

最終的な目標としては視聴者と近い距離でいられるアニメになりたい。視聴者の心のいつもそばにいるような国民的アニメになりたいんですよ。
今出しているLINEスタンプもこれからもっと種類を増やしていく予定ですし、いつかは近所のスーパーやコンビニエンスストアに『モモウメ』のスイーツがあるなんてこともやってみたい。
必ずどこかに『モモウメ』がいる、生活の一部になれるようにしていきたいです。

中道監督:ショートムービーが最近増えているので、今後どうなっていくのか楽しみです。
ただ今の社会に大きな変化があっても、モモウメはこれまで通りライトな感覚のショートムービーをつくりたいですね。内田さんは長いのもやりたいですか?(笑)

内田P:うん、やる。5時間くらいのアニメやりたい(笑)。

中道監督:それは…逆に長すぎる……(笑)。でも「誰もやっていない」という意味ではいいかも(笑)。やりましょう。

内田P:より多くの人に見てもらえるようになって今までとは比べ物にならないくらいコメントをいただくのですが、『モモウメ』を好きな人はみんな優しくて平和なコメントが多くて、いつも僕たちが癒されています。『モモウメ』で生まれたコミュニティから豊かな世界を僕たちが実現できたらいいなと思っています。