2020年09月04日 10:01 弁護士ドットコム
交際中の相手が既婚者だと分かれば、大きなショックを受けることになる。相手と過ごした時間が戻ってくることはなく、こころの傷もただちに癒えることはない。せめて、金銭を支払うことで償ってほしいと思うのも自然なことだろう。
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弁護士ドットコムにも、交際中の男性が既婚者だと分かり、「手切金」を請求したいという女性が相談を寄せている。
相談者が男性の「正体」を知ったのは、交際を始めてから約1年半後のことだった。知人からの情報で、彼が妻子もちの既婚者であること、年齢を詐称していることを知ったという。
ショックを受けた相談者は、男性に「手切金」を要求。男性も嘘をついていたことを認め、「示談書を書き、100万円を支払う」と、同意した。
ところが、男性はその後、示談書や支払いの話になると「今から死ぬ」と騒いだり、ごまかしたりしているという。
相談者は、男性と2人きりで会うことは避けたいと思っている。そのため、LINE上で示談書を作成することを検討中だ。
そもそも、LINE上で作成した示談書に効力は認められるのだろうか。
田中真由美弁護士は「LINE画面で示談書を作成しても示談の効力は認められます。その示談書に基づき、相手方が任意に支払うのであれば問題はありません」と語る。
問題は男性が手切金を支払わなかった場合だ。この場合、相談者はLINE上で作成した示談書(LINEの画面)を証拠として使い、訴訟を提起することを検討しているという。
しかし、田中弁護士は「LINE画面の示談書の記載内容にもよりますが、当該LINE画面だけでは『証拠』としては弱い面が出てきます」と指摘する。
「たとえば、LINEのトークの相手の氏名が画面できちんと表示されているならば、相手の意思表示の証拠の一つとして認められる可能性はあるでしょう。
一方、ニックネームであるような場合には、請求の相手方とトーク画面の相手の同一性について他の証拠で補う必要があります」
また、LINE上で示談書を作成する場合について、次のようにアドバイスする。
「男性の住所が不明である場合には訴訟提起も難しくなってしまいます。示談書を作る場合は、少なくとも相手方の氏名、住所については記載した方がよいでしょう」
【取材協力弁護士】
田中 真由美(たなか・まゆみ)弁護士
あおば法律事務所共同代表弁護士。熊本県弁護士会所属。「親しみやすい町医者のような弁護士でありたい」がモットー。熊本県弁護士会子どもの人権委員会、両性の平等に関する委員会所属。日弁連男女共同参画推進本部委員、家事法制委員会委員。得意分野は離婚、家事全般。
事務所名:あおば法律事務所
事務所URL:http://www.aoba-kumamoto.jp/