84年生まれの僕が子どもの頃に遊んでいたハードといえば、スーパーファミコンやプレイステーション、セガサターンがメインになる。スーファミは小学校低学年ぐらいまで遊び、高学年になる頃にポリゴンゲー全盛期が訪れて「実写じゃん!」と驚いた記憶がある。
当時、インターネットはまだ一般にはほとんど普及していなかったため、ゲームの情報はクラスの友達同士で共有しているということが多かった。あとは、なぜかNTTが出版していた、中盤ぐらいまでしか紹介していない中途半端な攻略本を頼りにしてみたり。あれはあれで面白かった。アイテムのイラストとか掲載されてて、想像力を豊かにしてくれる。
面白いのは、各地の子どもたちがネットのない時代に、同じようなゲームの同じようなバグ情報、裏技について割とよく把握していた、という点だ。たとえば『ファイナルファンタジーVI』では頭にドリルを装備できる、みたいな話は知らない子の方が少なかったほどだ。
なぜ、あの時代のゲームキッズたちは、ネットを介さずにそんな情報を知り得ていたか。今回は、今はもう滅びようとしている、かつて当たり前だった「子どもたちの情報交換」について振り返っていきたい。(文:松本ミゾレ)
「広辞苑みたいな分厚い裏技特集本が売ってた」
先日、5ちゃんねるに「インターネットがない時代になぜか全国のみんながゲームの同じ裏技を知っている」というスレッドが立っていた。スレ主はかつて当たり前だったこの事態について「なんでなの?」と疑問を呈している。
スレッドにはその仕組みについて解説する書き込みが多い。いくつか紹介してみよう。
「広辞苑みたいな分厚い裏技特集本が売ってた」
「にいちゃんが見つけて弟が話してクラスのやつが塾かミニバスで話してどんどん伝染する」
「電話自体はあったわけだし、離れた土地に同年代の従兄弟や親戚が居ればそこでも情報交換はされるしな」
ネットがなくても裏技が満載された「大技林」などの攻略事典はいくつも出版されていたし、それを買うなり立ち読みなりする子どもは昔は多かった。その情報を同じクラスのみんなに教えるとヒーローにもなれた。
また、兄弟が仕入れた裏技を弟たちが継承し、それもまた学校で披露してみんなが幸せになることも昔はよくあった。電話は既にどの世帯にもあったので夜に友達に「こういう裏技見つけた!」と自慢したりもできたし。
インターネットを介して情報を仕入れるという手法自体がまだ存在しなかったとしても、そこまで不自由はなかったと記憶する。
当時はゲーム雑誌が読み物としても面白かった
ゲーム雑誌の影響も当時は大きかった。僕はまだ「ファミ通」が「ファミコン通信」という名で売られていた頃から読んでいたけど、暇つぶしで遊んだことのないゲームの裏技ページまで読み耽っていたもんだ。
それに、コラムも結構読み物として面白いものが多かった。ゲームアイドル何某ちゃんの日記みたいなものも連載されていて、それなりに読み応えもあった。僕みたいなゲーム好きは他にも何人かいたし、昔は兄弟も多い世帯だらけだったので、兄弟が買ってきたゲーム雑誌をボロボロになるまで回し読みする子供も結構いたものである。
そうやってゲームの裏技についての知識を吸収して、翌日学校で「お前これ知ってるけ?」と自慢する。そういうのが、ゲームキッズたちの一種のコミュニケーションだったんだろう。
今でもたまにコンビニでファミ通を見かけるが、さすがに買うことはなくなった。大人になると、かさばった雑誌の処分も億劫になっちゃうので……。
あと、これは私見だけどもゲームの裏技どころか攻略においても、ネットの攻略まとめサイトに頼るより、紙媒体で確認する方が楽しい気がする。なぜかネット経由で仕入れるゲーム情報って凄く味気ない。あれは、なんなんだろう。