2020年08月31日 14:31 弁護士ドットコム
福岡市中央区の商業施設「MARK IS 福岡ももち」で8月28日夜、女性(21)が殺害された事件をめぐり、近くで血のついた包丁を持っていたとして自称・住居不詳、無職、15歳の少年が銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕された。
【関連記事:「なんで避けないの」歩道走るママチャリ、通行人と接触し激怒…悪いのはどっち?】
報道によると、少年は26日に少年院を出た後、翌27日、入所する福岡県内の更生保護施設から失踪していたという。
ネット上には「更生させるための施設ではないのか」「なぜ逃げ出せたのか」などの声が上がるが、そもそも更生保護施設とはどのような場所なのか。
犯罪や非行をした人たちの中には、刑務所や少年院などから社会に戻ってきたときに頼れる人がいなかったり、住居がなかったりするなどの理由で自立が難しい人たちもいる。
更生保護施設はこのような人たちの社会復帰をサポートする民間施設だ。全国に103の施設があり、うち100施設は更生保護法人が運営している(ほか3施設は社会福祉法人、NPO、一般社団法人が運営。2019年4月1日時点。『令和元年版 犯罪白書』による)。
主に保護観察所からの委託を受け、保護観察または更生緊急保護の対象者で行き場がない人に対し、宿泊場所や食事の提供、就職援助や生活支援などをおこなうことで、再犯防止に取り組んでいる。
施設ごとにルールはあるため、一定の制限はある。たとえば、門限や食事の時間などが決められているほか、飲酒や金銭の賃借などは禁止されている。しかし、刑務所や少年院とは違い、原則として施設の出入りは自由だ。
更生保護施設に対する近隣住民の理解は欠かせない。対象者が精神障がいを抱えていたり、性犯罪の加害者である場合は、近隣住民への配慮やケア体制が整っていないことなどを理由に受け入れを拒否する施設もあるという。
少年院を出院した場合、かならずしも親が引受人になるとは限らない。中には、なんらかの理由で養育者に引き受けを拒否されたり、家庭内で虐待や不適切な養育を受けているなど、さまざまな事情で「帰る場所」がない少年たちがいる。
更生保護施設に入所するのは、そんな少年たちだ。
少年は女性を刺したことを認める供述をしていると報道されている。少年が女性の殺害に関与したとみられているが、事件の詳細は明らかになってはいない。
いかなる理由があれ、なんの罪もない人の命を奪うことは許されない。しかし、今回逮捕された少年が更生保護施設に入所した背景には、行き場がなく頼れる人がいなかったという事情もあったのではないだろうか。