2020年F1第7戦ベルギーGP予選でのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、今季の定位置ともいうべき3番手だった。とはいえ2番手バルテリ・ボッタスとの差は0.015秒と、これまでで最も接近できた。パワーの優劣がタイムに影響しやすいスパ・フランコルシャンで、メルセデスにここまで近づけた要因は何だったのか。
一方で最後のアタックでのフェルスタッペンは、回生エネルギー切れを訴えてもいた。そのあたりの事情を、ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターに語ってもらった。
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──今日はレッドブル・ホンダの2台がトップ10内に、アルファタウリ・ホンダは11、12番グリッドという結果でした。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):まずまずの結果かなと思います。フェルスタッペンはボッタスに対し、非常に僅差につけての3番手。開幕戦からここまでのタイム差を見る限り、今までよりも近づけたかなと。3番手というポジションは変わらないまでも、メルセデスに接近できました。
アルボンはちょっと残念で5番手でしたが、レースではいつも強さを発揮していますから、いいペースで走って順位を上げてもらえればと思います。アルファタウリのふたりはニュータイヤでスタートできる最前列ですし、レース戦略、序盤のパフォーマンスなど、十分に期待できます。
──スパ・フランコルシャンはパワーサーキットで、予選での苦戦が予想されたわけですが、終わってみれば今季最もメルセデスに近づけた結果になりました。そこは、どう評価していますか。
田辺TD:車体、パワーユニット(PU)を合わせたパッケージとして、うまくまとまったということだと思います。かなり長い2本のストレートでのパワー勝負が注目されがちですが、中盤の下りでの中高速コーナー、最後のシケインなどとの兼ね合いをどうするか。その辺りをチームがきちんとセッティングできて、ドライバーもマシン性能を引き出せた。その結果だと思います。
──フェルスタッペンが最後のアタックを終えたあと、「エネルギーがなくなった」と言ってました。実際Q2でのアタックと比較すると、最高速が時速5kmほど遅いです。もしエネルギーが残っていたら、0.015秒稼いで2番手に上がれていたでしょうか?
田辺TD:まだそこまで、計算はしてないです。
──フェルスタッペンが言っていたように、実際にエネルギーがなくなっていたのでしょうか?
田辺TD:はい。切れていましたね。
──このコースはエネルギーデプロイメントが非常に難しいコースですが、あのアタックの時だけ何か想定外のことが起きたのですか?
田辺TD:Q3でのスロットルの開け方、運転の仕方などが微妙に変わって、それで切れてしまったんだと思います。
──とはいえ最後のセクター3で、自己ベストの区間タイムを出しています。
田辺TD:どこで稼いだかということですね。ただ、100%ということではなかったと、それは確かです。(回生エネルギーが)余ってしまってはどうしようもないし、足りなくなるのもまずい。
──アルボンはQ2でのセクター1の高速区間が、異様に速かった。あれはフェルスタッペンのスリップにつけたということですか。
田辺TD:いや、クルマがよかったのだと思います。狙ってスリップにつけたらそれに越したことはないのですが、そうではありません。
──逆にQ3ではフェルスタッペンがアルボンの後ろにいてタイムを更新していますが、あれも引っ張ってもらったわけではないのでしょうか?
田辺TD:どれぐらいスリップが効くかわからないのですが、逆に近づきすぎると、下りの中速区間での影響が大きい。なのでどのクルマもそれほどつきすぎずに、そこそこの距離を保って走ったはずです。