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レッドブル・ホンダ分析:デプロイ切れでも“スーパーアタック”。セットアップも決まり、メルセデスに迫るベストポジション

2020年08月30日 12:41  AUTOSPORT web

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2020年F1第7戦ベルギーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが、第7戦ベルギーGPの予選で3番手を獲得した。予選3番手は第6戦スペインGPに続いて今シーズン最多となる4回目。フェルスタッペンは予選3番手が定位置になっている状況を「3番手をサブスク(定期購読)しているみたい」と表現したが、今回の予選3番手はいつもとは違う。それはメルセデスのバルテリ・ボッタスとの差が、1000分の15秒という僅差だったからだ。

 アタックが終わってピットに帰ってくるフェルスタッペンに対して、担当レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼが「よくやった」と称えるが、フェルスタッペンはこう言って悔しがった。

「エネルギーが切れるのが、少し早かったんじゃない」

 このエネルギーとは、回生エネルギーのことで、いわゆる『デプロイが切れた』ことを意味する。

「最終コーナーの立ち上がりで、本来なら回生されたエネルギーのデプロイがなかった」(フェルスタッペン)

 予選後、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターもデプロイが切れていたことを認めている。

 そのことは、走行データにも現れている。フェルスタッペンの予選中のフィニッシュライン通過時のスピードは、Q2とQ3の1回目はともに時速227kmだったのだが、最後のアタックは時速222kmで、時速5km落ちている。

 しかし、これはトラブルでもなく、ホンダのエネルギーマネージメントのミスでもない。というのも、1周7km以上あるスパ・フランコルシャンでは前の周にフル充電したとしても、どうしてもデプロイが足りなくなり、どこかでデプロイ切れが起きるからだ。そのため大切になるのが、限られた回生エネルギーをどこで使用するかだ。

 その配分に関して、ホンダはそつのない仕事をしたと言っていいだろう。それは、フィニッシュラインのスピードが前のアタック時よりも時速5km落ちたものの、フェルスタッペンの最後のアタックのセクター3は、自己ベストだったからだ。

 アタック直後は無線で悔しがっていたフェルスタッペンだが、予選後の会見では、こう言っていた。

「これから、データを見てみるけど、おそらく、別のどこかで有効に使えていたんだと思う。でも、デプロイが切れれば、ドライバーとしてはパワーを失ったと感じるのはいつもこと。だから、もしあそこでデプロイが切れていなくても、結果は同じだったと思う。3番手は今日考えられるベストポジションだったと思う」

 それでは、なぜパワーサーキットのスパ・フランコルシャンで、レッドブル・ホンダはメルセデスに迫ることができたのか。それはレッドブルの車体が、スパ・フランコルシャンでしっかりとセットアップされていたからだ。デプロイはアクセル開度に関係しており、一般的には全開時に、決められた時間エネルギーが放出されるようプログラムされている。アクセルを開くタイミングが早ければ、それだけ早くエネルギーが放出され、その後のスピードが伸びる。

 スパ・フランコルシャンでレッドブルの車体がうまく仕上がっていたことは、チームメートのアレクサンダー・アルボンが開幕戦以来の5番手を獲得したことでもわかる。

「今週末はフリー走行1回目から、マシンがいい感じだった。だから、あとはファイン・チューニングしていくだけで良く、セッティングで悩むことなかった。コーナーでマシンが安定していたから、自信を持ってコーナーに進入できた。最後のアタックはターン1で小さなミスをしてしまった。あれがなければ4番手につけることも可能だったけど、5番手という結果にはひとまず満足している」(アルボン)

 つまり、フェルスタッペンが最後のアタックの最終コーナーでデプロイが切れたということは、その直前までの全開率がそれ以前のラップよりも高くなっていた可能性がある。フェルスタッペンの最後のアタックは、ホンダのエンジニアの予測を超えたスーパーラップだったと言っていいだろう。