2020年08月30日 09:41 弁護士ドットコム
タレントのマツコ・デラックスさんは、元交際相手と「決闘」したことがあるそうです。
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情報番組「5時に夢中!」(7月27日放送回)で明かしたもので、番組内容を紹介する記事(スポーツ報知・同日配信)によると、電話出演したマツコさんは、元交際相手と別れた際に「傘で決闘したことあるもん。土砂降りの中で」と語りました。
過去に出演したラジオ番組でも、「別れ際、決闘した」「傘で殴り合いよ」など約30年前のエピソードを披露しています。
日本では「決闘罪ニ関スル件」という法律で「決闘罪」が規定されています。どんなときに、決闘罪は適用されるのでしょうか。東山俊弁護士に聞きました。
ーー決闘罪とはどういう犯罪でしょうか
刑法には、暴力を振るった場合の暴行罪はありますが、決闘することに関する処罰規定はありません。
明治22年(1889年)制定の「決闘罪ニ関スル件」という規定で、決闘することを決闘罪として処罰の対象としています。
日本には決闘の風習がなかったため、決闘に関する処罰規定がありませんでしたが、当時新聞記者だった犬養毅元総理大臣に対して決闘の申し込みがあり、その報道がきっかけとなって決闘の申し込みが流行したために、処罰の対象となったようです。
もっとも、日本では決闘の風習が広まることはなく、決闘罪が適用されているのは、1対1の決闘ではなく、暴力団や不良グループ同士の抗争のようです。
ーーマツコさんの件は決闘罪になるのでしょうか
判例は、決闘の定義を「当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもって争闘する行為」としており、復しゅうといった目的は不要です。また、方法も限定されておらず、1対1である必要はありません。
今回の件でも、一方的に暴力を振るったことがきっかけでけんかになった場合であれば、当事者の合意がないので決闘罪になりませんが、場所や時間を決めて決闘をした場合には、形式上は決闘罪となると思われます。
ーーボクシングなどの格闘技の試合は、決闘罪とならないのでしょうか
格闘技も合意により暴行をもって争闘していることから、形式的には決闘罪となります。 ただし、ボクシング等の格闘技は、ルールで危険性を排除しているといった事情があることから、社会的相当性のある行為として違法性がありませんので、決闘罪となりません。
決闘罪の成立のためには、暴力を振るう必要がありません。一方的に暴行を受けて負傷した場合でも決闘罪が成立します。また、法律には、決闘罪のほかに、決闘を挑む罪やこれを受ける罪、決闘に立ち会う罪等が規定されています。これらの罪も、暴力を振るう必要がありません。
【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/