2020年08月27日 10:01 弁護士ドットコム
夫(または妻)の不倫が発覚し、その事実だけでなく、相手の人となりにショックを受ける人もいるようだ。
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子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板には「主人の不倫相手がブスだった」という投稿があった。投稿者が興信所に依頼し、夫の不倫が判明。不倫相手は、夫と同じ会社に勤務する独身女性で相談者より年上だったという。
投稿に対しては、同じ経験をしたという女性から「わかる。私より年上のおばさん、ブスだった。もう何年も前だけど、ショックで立ち直れなかった」「私の場合はガリガリの元ヤンBBAでした。酒飲みでヘビースモーカー」などのコメントが寄せられている。
投稿者は夫と話し合う予定だという。子どもがいるため、離婚することは視野に入れていないが、「不倫相手には制裁を加えたい」と考えているようだ。
離婚問題に詳しい河内良弁護士は「夫と離婚せずに不倫相手のみに慰謝料を請求する場合、離婚する場合に比べて慰謝料が低くなるため、満足な金額がもらえない可能性もあります」と指摘する。ほかにも、次のような点で注意が必要だという。
「不倫相手が負担する慰謝料の義務は、夫と連帯して負うものとされています。そのため、夫には請求せず不倫相手にだけ請求した場合、後日、不倫相手から夫に対して、夫が負担すべき部分を返せと請求(『求償』)される可能性はあります」
さらに、河内弁護士は、夫と話し合う前に「事前準備」をしておくことが必要だと語る。
「話し合いの結果、夫が逆ギレのような反応を示し、夫が離婚を希望して譲らないようになる場合もありえます。
そのため、話し合いを持つ(つまり、夫に対して『不倫に気づいた』と告げる)前に、証拠固めとともに、財産分与や婚姻費用の請求ができるように夫の財産を調査しておくとよいでしょう」
夫が不倫しているのでは?そのような疑いを持ったときは、投稿者のように興信所を利用して証拠を固めること、証拠を固めるまでは不貞行為に気づいていることを弁護士以外の誰にも悟られないようにすることが重要だと河内弁護士は話す。
とはいえ、興信所を利用するにも費用がかかる。かかった費用を不倫相手に請求することはできるのだろうか。
「興信所の費用については、不貞行為と興信所費用の支出に因果関係があるかという議論に尽きます。裁判例では請求を認めたもの、認めなかったものと両方あります。
もっとも『請求できる』とした裁判例でも、かかった興信所費用全額を請求できるとはせず、かかった額のごく一部の極めて低い金額しか認めていません。
そのため、興信所費用を回収できるという期待は持たないほうがいいと考えられます」
配偶者の不倫を疑った場合は、思わず感情的になってしまったり、冷静に行動できなくなったりすることもある。その結果、実際には配偶者が不倫していたにもかかわらず、裁判で不倫の事実が認められないなど、不利な状況に追い込まれる可能性もありうる。
河内弁護士は、次のようにアドバイスする。
「不倫の場合における慰謝料請求については、証拠をどのくらい掴めるかが重要になります。不倫を怪しんでいることが配偶者やその不倫相手にバレてしまうと、2人が警戒して会わないようになり、証拠集めができなくなって、結果として負けてしまいかねません。
たとえ、怪しいと思ったとしても、その『怪しいな』という思いは心に秘めて、早めに弁護士に相談してください。既に述べた『事前準備』のやり方も、弁護士の指導のもとでおこなった方が良いでしょう。
離婚問題を取り扱う弁護士は、おおむね興信所との繋がりを持っています。そのため、弁護士に興信所の紹介を受けることができる場合も少なくありません。
なお、この『怪しいな』という思いを友達に打ち明けると、その友達が配偶者にバラすこともあるので、情報管理にはくれぐれも注意をしてください」
【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp