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育児アドバイザーに聞く、みんなの子育て相談室 第42回 短所を長所に変える、親の"ことば"とは?

2020年08月26日 11:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

親は「我が子の短所を直してあげなくては将来大変なことになるのでは」と思い、ついつい子どものダメなところに目がいきがちですね。これは、親としての責任や愛情からくる行動ですが、言われ続けた子どもはどう受け取っているのでしょうか。

今回は、お子さんの短所を直したいという親心に注目し、「息子は引っ込み思案な子です。見ていると歯がゆくて、なんとか直して積極的にしてあげたいのですがどうしたらなれるでしょうか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
○指摘された子どもの心情は?

子どもができていないところを直してあげなければと思うと、そうした行動がますます気になってしまいます。そして、「あなたは引っ込み思案だから損するのよ」「もっと自分からやりたいって言ったほうがいいよ」など、あの手この手でアドバイスを繰り返してしまう方も多いのではないでしょうか。

言われた子どもは、「僕のためを思って毎日欠点を指摘してくれてありがとう。なんとか直して人並みになれるように努力するね」と思ってくれればいいのですが、実際問題そうはいきません。では、子どもはどう受け止めているのでしょうか。

自分の子ども時代を思い返してみると、言われれば言われるほど、「自分はダメな子なんだ。できない子なんだ」と受け止めて、ますます"できない暗示"にかかってしまうような気がしていました。

とはいえ、「欠点ばかり指摘して恨んでやる……!」とも思わないのが、子どもの健気なところです。そのため、指摘してしまったからといって親として落ち込む必要もないと思います。

大切なのは、「よし! 頑張ろう」と思うような"ことばかけ"。では、どのようなことばをかければ、子どもはそう思えるのか、2つコツをご紹介しましょう。
○頑張ろうと思わせる"ことば"の2つのコツ

1つ目は、子どもの良い面を見つけてことばにすることです。

先ほどのお母さんに、「では、お子さんの良いところはどんなところですか?」と聞いてみたところ、だいぶ考えて「コツコツ努力するところでしょうか」とおっしゃいました。

「具体的にはどんな時ですか?」とさらに伺うと、「絵日記の宿題でとても丁寧に絵を描いて、最後までやり遂げていました」とおっしゃったので、「すごいですね! お子さんはすでに自分のこだわりを持っていて責任感もお持ちなのですね」というと、ハッとされていました。

そのあとも、お手伝いなどたくさんの良い面のお話が続きました。そして最後にそのお母さんは、「そんなの当たり前だと思って息子には言っていませんでした。良い面を見るってそういうことなのですね。ちゃんと息子を褒めたいと思います」とおっしゃっていました。

親はつい、気になるところだけを指摘してしまいがちですが、いい面をことばにしているうちに、短所があまり気にならなくなるようです。

親に短所をことさら指摘されなければ、子どもものびのびと長所を伸ばし、数年後には短所も解消されているでしょう。なぜなら子どもは、いい面を教えてもらうことで自分に自信が持てるように成長するため、(この場合の例なら)積極的になれる日が必ず来るからです。

2つ目は、マイナスな表現をプラスの表現に変えることです。例えばコップに入った半分の水があったとします。それを見て、「もう、半分しかお水がない」とネガティブに捉える人と、「まだ、半分お水が残っている」とポジティブに捉える人がいます。

このように、同じものを見ても、人はそれぞれ違う捉え方をします。短所に見えることも、別の視点で見てみると長所になり得るのです。

この考え方を子どもに対しても使ってみましょう。先ほどのお子さんの例であれば、「引っ込み思案な」と見えていることも「思慮深い」と捉え直して見ると、短所も長所に見えてきます。自分が気にしていることも、別のお母さんからすると、うらやましいと思うかもしれません。どうぞプラスな表現に変えて、お子さんを見て欲しいと思います。

実をいうと、これが将来の自己アピールにも大きな影響を与えていくのです。私は大学でキャリア講座をする際、就活の面接用に「自己紹介」の練習をしてもらうのですが、「自分のいいところがない」と悩む学生が多くいます。謙虚な学生が多いともとれますが、小さい頃から親にそう言われ続けてしまったからではないかと思いました。

我が子が将来、自分の良いところをしっかり話せるよう、親は短所がたくさん出てきたら、それを言い換えるようにしましょう。

参考までに一覧を載せておきますので、今のうちからネガティブワードをポジティブワードに変換して、お子さんに伝えられるように心がけられるといいですね。

[ネガティブな表現]→[ポジティブな表現]
甘えんぼう→人にかわいがられる
あわてんぼう→行動的 / 積極的
意見が言えない→控えめ / 協調性がある
おしゃべり→社交的 / 明るい
落ち着きがない→好奇心旺盛 / 行動的
おっとりした→マイペース
頼りない→優しい / 控えめ
短気→感受性豊か
調子に乗りやすい→明るい / 行動的
おとなしい→おだやか
勝ち気→自信に満ちている
反抗的→自分の意見が言える
軽率→行動的
けじめがない→集中力がある / 持続力がある
強情→意志が強い
面倒くさがり→こだわらない

天野ひかり あまのひかり ・親子コミュニケーションアドバイザー ・NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事 上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師など。 自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰。 ■著書 ・Amazon子育てランキング1位のロングセラー 「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版 ・最新刊 「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。 この著者の記事一覧はこちら(天野ひかり)