2020年08月22日 09:01 弁護士ドットコム
おいしい海の幸を獲るには、ルールを守らなくてはいけない。徳島県阿南市消防本部の消防署員5人が、バーベキューをするため美波町の海岸で伊勢エビなどを密漁していたと報じられた。
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NHKなどの報道(8月11日)によると、署員らは8月7日、美波町の明丸海岸で、モリを持参し、素潜りで伊勢エビ2匹とサザエやトコブシ21個を密漁したそうだ。
見つけた徳島海上保安部の事情聴取に、署員らは「バーベキューで食べるだけなら大丈夫だと思った。伊勢エビなどを採ったのは今回が初めてだった」などと話しているという。
この海域で伊勢エビなどの漁業権を持つ地元の日和佐町漁協は「漁業権の侵害にあたる」として、刑事告訴を検討しているという。
密漁をすると、どのような罪に問われる可能性があるのだろうか。
「1カ月のうち10日は船に乗っています。姫路で釣り好きな弁護士といえば知らない人はいません」と胸を張るほど釣りを愛する山崎喜代志弁護士に聞いた。
ーー本件のように、密漁をすると、どのような法的責任を問われる可能性があるでしょうか
漁業法で漁業権は「一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」と定められ、都道府県知事等が地元漁協等に免許を与えます。
漁業権を持たない人が、伊勢エビやサザエなどを勝手に獲ることは、漁業法違反で20万円以下の罰金に該当します。処罰には漁協等の告訴が必要です。
また、徳島県漁業調整規則では禁漁サイズと禁漁期間が定められていて、これに違反すると、6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に該当します。こちらは告訴が不要です。
たとえば伊勢エビについては、食べてしまって証拠がなくなっているので判断できませんが、5月15日~9月15日が禁漁期間です。
バーベキューで食べる程度の実害であって、「今回が初めて」というのが本当であれば、通常は告訴されないでしょうし、告訴されたとして、検察官の判断で起訴猶予になる可能性もあります。しかし、何度も繰り返していれば、処罰されることもありえるでしょう。
しかし、大々的な密漁となれば、がっつり処罰されます。今回は素潜りだったということですが、潜水具などを使うと、水産資源保護法違反により3年以下の懲役又は200万円以下の罰金ということになります。
近年、約216キロのナマコの密漁に対して、懲役10月と罰金30万円(執行猶予3年)の判決が言い渡された裁判がありました。乾燥ナマコは中華料理の高級食材です。
ーー我々が意図しない密漁で罰せられないために、どのようなことを気をつければよいでしょうか
国内沿岸のほとんどで、漁業権が設定されており、水面や水の底に定着する海藻類・貝類は採取禁止です。潮干狩りのように入漁料を支払ってその許可を得なければなりません。鮎釣りなどの川魚釣りも同様です。
ただ、海釣りは魚が泳ぎ回っていてどこの漁業権者の魚か特定できないので、手釣りや竿釣りでは一般的に処罰されません。
ただ、都道府県規則や海区漁業調整委員会指示で釣りが禁止されることがあります。結局、趣味の釣りでいきなり捕まることは通常ないと思いますが、誰も釣りをしていないところで釣りをするのはリスクがあるので、都道府県の水産課に聞くのが安全です。
今回の密漁者は地方公務員ということです。たとえ、刑事処分を受けなくても、地方公務員法上の懲戒処分を受けるおそれがあります。免職・停職・減給・戒告とありますが、刑事処分がなければ戒告といったところでしょうか。彼らの一番の心配はこれですね。
【取材協力弁護士】
山崎 喜代志(やまさき・きよし)弁護士
交通事故、男女トラブル、家事、労働など幅広い分野を扱っています。法律で全てを解決できるわけではありませんが、非常に有力なトラブル解決の手段です。どのようなことでも、遠慮なくご相談ください。
事務所名:山崎喜代志法律事務所
事務所URL:http://www.yamasaki-lawoffice.jp/