2020年08月20日 10:11 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、海水浴場の開設が見送られた地域も少なくない。ところが、閉鎖されているビーチに勝手に侵入して、水遊びするという観光客があとをたたず、地元は対応に苦慮している。法的には、こうした迷惑客を「立入禁止」にすることはできないという。
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京都府伊根町では、新型コロナの影響を受けて、今年の「海開き」を見送った。町・企画観光課によると、海水浴場の入り口付近に看板を設置して、開設していないことを周知しているが、それにもかかわらず、観光客が遊泳しているという。
昨年夏、約320万人の海水浴客が訪れた神奈川県も、今年はすべての海水浴場が閉鎖されている。例年ほどではないが、県内外から一定数の客がビーチにやってきているが、「立入禁止」とすることはできず、地元は頭を悩ましているという。
こうした迷惑な客をどうして罰することはできないのか。
海水浴場に関しては、海岸を管理する「都道府県」の条例で定められている。たとえば、神奈川県の条例では、海水浴場に持ち込んではいけない器具などについて触れられているが、「立入禁止」に関する条文はない。
また、神奈川県によると、海岸法でも特に定めがないため、原則として、「ビーチは自由に利用できる」という。藤沢市などは、観光公式ホームページやフェイスブックを通して、遊泳を控えるよう呼びかけているが、あくまで「お願いベース」で強制力はない。
当然のことながら、開設が見送られた海水浴場での遊泳は危険が伴う。実際にそうしたビーチで水難事故が起きている。
報道によると、徳島市川内町の小松海岸では、県立高校生がおぼれて、救助されたが、搬送先の病院で亡くなった。神奈川県大磯町の大磯海岸でも、70代男性がおぼれて、搬送先の病院で亡くなった。
過去には、和歌山県の海水浴場で中学生がおぼれて亡くなった事故をめぐり、両親が引率者のほか、県を相手取って、損害賠償をもとめた訴訟があった。
判決は、(1)海水浴場の設置に瑕疵がある場合、(2)その安全性を確保するための措置として構築された監視体制および救助体制に瑕疵がある場合、(3)監視体制および救助体制を構築する要素となる人的機構が救助活動をおこなうにおいて、故意または過失があった場合――には、「国家賠償法の責任を負うべき」としながらも、県に対する請求を棄却している。
神奈川県の海水浴場では、「閉鎖していても客が来てしまう」という想定があったため、最低限のライフセーバーや警備員を配置して、万一の事故に備えている。県の担当者は「自己責任だからと言って、ほったらかすわけにはいかず、できることはやっていこうということになった」と話している。