2020年F1第6戦スペインGPを11番グリッドからミディアムタイヤでスタートし、タイヤに厳しいバルセロナ-カタロニア・サーキットにおいて1ストップ作戦で7位入賞を果たしたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)。そのレースで最も活躍したドライバーをファンの投票で決定する『ドライバー・オブ・ザ・デー』にも選出された。
今回、ベッテルが7位だったにも関わらずドライバー・オブ・ザ・デーに選ばれたのは、ピットストップ戦略を巡ってチームと意見が食い違うなかで、チームの意見を尊重し、見事1ストップ作戦を成功させたことが無関係ではないだろう。
予選11番手に終わったベッテルは、ミディアムタイヤでレースをスタートさせた。
「正直、1ストップでいくことは念頭になかった。だからスタート直後にソフトタイヤでスタートしたほかのドライバーの後ろで、自分もタイヤに苦しみ出したので、29周目にピットインしたんだ。だって、そのときは僕たちはまだ1ストップはまだ考えていなかったからね」
「もし最初から頭のなかにあったら、スタート時に履いたミディアムをもう少し労って、第1スティントを長くしただろう。そうすれば次に履くソフトタイヤでの周回数を少なくできる」
29周目にピットストップしたベッテルは14番手に後退するも、前を走るライバルたちが先に2回目のピットストップを行うと、再びポジションはスタート時と同じ11番手に上がる。そこでベッテルはチームにレースペースをどうすればいいのか尋ねたが返事はなかった。
しばらくして、チームから「このタイヤで最後まで行けるか?」という無線に、「だったら数周前に言ってくれたら良かったのに」と返事をした。
このやりとりを尋ねられたベッテルは、特にチームとわだかまりがあるわけではないという。
「無線で意見が食い違うことはよくあることだよ。僕はマシンのフィーリングは把握しているけど、周りのドライバーがどんな戦略で戦っているかというレースの全体像が見えているわけではないからね」
「だから、『こっちはこう考えているけど、どう思う』というコミュニケーションは普通なこと。しかも、国際映像の無線は僕たちのすべての無線を流しているわけではない。どの会話が流れたのかはわからないけど、僕たちがこのレースでひどく混乱していたということはない」
会見に同席していたマティア・ビノット代表も、今回の無線のやりとりをこう説明する。
「コミュニケーションはとても重要だが、簡単ではない。特にレース中のドライバーとのコミュニケーションでは、ミス・アンダースタンディング(誤解)が生じやすい。それはドライバーとピットが離れており、しかもドライバーはバトルをしているので、正確な状況を把握するのが難しいからだ。だからこそ、コミュニケーションが大切なんだ。最終的にわれわれの戦略はうまくいった」
最後にベッテルは、こう釘を刺した。
「僕たちはレース中は無線で話をしているけど、一日中、無線で話をしているわけではない。いつもは顔を合わせて会話している。だから、何も問題はないよ」