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IZ*ONEの実像と魅力に迫る映画『EYES ON ME : THE MOVIE』 努力を惜しまず、ファンを思う12人の姿

2020年08月17日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

IZ*ONE『Oneiric Diary(幻想日記)』

 グローバルグループ・IZ*ONEの初のアジアツアーの模様(韓国公演)を追った映画『EYES ON ME : THE MOVIE』が2020年8月7日、日本での上映が始まった。ご存じの通り、この作品は昨年秋に公開する予定だったが、一連の騒動で一旦中止に。以降も新型コロナウイルスの影響でペンディングになったものの、このたび全国ロードショーが決定。日本のWIZ*ONE(IZ*ONEのファンの呼称)もひと安心といったところである。


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 ニュースサイトなどで、本作は“コンサートフィルム”と紹介されることが多い。しかし、実際はライブパフォーマンスに加え、本番に向けて一生懸命に取り組む12人のメンバー(チャン・ウォニョン、宮脇咲良、チョ・ユリ、チェ・イェナ、アン・ユジン、矢吹奈子、クォン・ウンビ、カン・ヘウォン、本田仁美、キム・チェウォン、キム・ミンジュ、イ・チェヨン)の姿も丁寧に紹介しており、むしろIZ*ONEの実像と魅力に迫る“ドキュメンタリー”と言ったほうが良いかもしれない。


 ツアーの最初の開催地である韓国・ソウルの公演が開催されたのは昨年の6月上旬。本作はその1カ月前の準備段階からカメラを回す。公演用のVTRの撮影をしたり、新曲の振り付けを行ったりとメンバーたちはかなり忙しそうだ。


 中でも印象に残ったのは「AYAYAYA」と「SO CURIOUS」のレコーディングだろうか。12人全員が真剣にのぞみ、カメラに笑顔を振りまくこともない。自分のパートを録るときはもちろん、休憩中も楽譜をじっと見つめている。それもそのはず、この2曲はツアーの目玉となるもので、振り付けも含めて初披露となるためだ。


 後日行われたダンスレッスンも興味深かった。IZ*ONEはエンターテインメントにおいて非常に優れたグループだが、結成してからしばらくは歌唱に重きを置いていたように思う。したがってダンスの方は大所帯ならではのフォーメーションの美しさはあるものの、スピード感やキレの良さなどは意図的に控えめにしていた印象を受けた。だが、「AYAYAYA」と「SO CURIOUS」はこれまで以上にシャープに激しく歌い踊っている。


 「はじめての振り付けで混乱してしまう」(本田)、「ファンのみんなが満足してくれるにはどこまでやったらいいのか……」(イェナ)といったコメントからわかるように、ダンスの難易度は相当高かったようだ。それでも「今はWIZ*ONEの期待に応えたい」(ミンジュ)と努力することを惜しまない。


 映画では「AYAYAYA」と「SO CURIOUS」の本番の様子もしっかり収められている。短期間で仕上げたとは思えないほど複雑かつダイナミックなパフォーマンスは、とてもフレッシュだ。これは「La Vie en Rose」「Violeta」といった“フラワーシリーズ”で見せた優雅さ、ロマンチシズムと対になる演出であり、映画のハイライトにしたのも頷ける。


 もうひとつ印象的なシーンをあげるとすれば、ステージ上のメンバーたちのコメントである。リーダーのウンビは目を潤ませながら「悲しいことも辛いこともWIZ*ONEのおかげで乗り越えられた」と感謝の言葉を口にする。ユジンも「満員のコンサート会場にいる夢から覚めたとき、ひとりぼっちになったと思い悲しくなった。今日来てくれたみんなもコンサートが終わったら、こんな気持ちになるのかなと思いました」と大粒の涙をこぼす。ファン思いのIZ*ONEらしいエンディングは、コンサート会場に訪れた人と同様に劇場の観客にも大きな感動を与えたことだろう。


 IZ*ONEは2020年9月13日にオンラインで単独コンサート『ONEIRIC THEATER』を開催する。前述のアジアコンサートツアーから約1年2カ月ぶりということで、ファンの期待もかなり高まっている。タイトルから想像できる通り、今回は現時点での新作『Oneiric Diary(幻想日記)』からのナンバーを中心にしたセットリストになりそうだ。


 オンラインならではの仕掛けもふんだんに盛り込まれるのは間違いないが、パフォーマンスは『EYES ON ME : THE MOVIE』での「AYAYAYA」と「SO CURIOUS」で見せたスタイルをさらにブラッシュアップしていくのではないかと推測している。花をモチーフにした楽曲でグループのスタイルを確立した彼女たちは、従来のイメージを壊すことなくよりアグレッシブに進むはずーー。YouTubeで公開されている「Merry-Go-Round(回転木馬)」(『Oneiric Diary(幻想日記)』収録)の歌と踊りを観ていると、その予想はあながち外れていないような気がするのだ。さて、結果はどうなるか、『ONEIRIC THEATER』の開催を楽しみに待ちたいと思う。(まつもとたくお)