第6戦スペインGPの予選後に行われた上位3人の会見では、メルセデスのドライバーふたりに、チーム代表のトト・ウォルフに関する質問があった。じつは前日の金曜日に行われたFIAの会見に出席していたウォルフ代表が、メディアとこんなやりとりをしていたからだ。
記者:トト、ルイス(・ハミルトン)はあなたの未来が自分の将来にとってカギになると言っていました。2021年のあなたの計画は? あなたはまだメルセデスのチーム代表を続けますか?
ウォルフ:私は長い間、この役職(チーム代表)でF1をエンジョイしてきた。オラ(・ケレニウス会長)との関係も私が思う限り良好であり、私たちはほぼ毎日話している。私がF1にとどまりたくなる要因はたくさんあり、現状では、契約を更新しない理由はない
ウォルフはF1を去るとは言わなかったが、メルセデスのチーム代表を続けるとも言わなかった。すると、別の記者がこう突っ込む。
記者:あなたはメルセデスと契約を継続しない理由はないと言いましたが、チーム代表を継続するとは言っていません。チーム代表を降りる可能性もあるのでしょうか
ウォルフ:これは、オラと私の話し合いにかかっている。そして、私たちは常にチームにとって何が最善かを話し合っている
ウォルフはまたも明言を避けた。すると別の記者が再びウォルフに質問を投げかける。
記者:あなたの答えからは『私はチーム代表に留まりたい』とは聞こえません。なぜなら、漠然とした答えだからです。別の言い方をすれば、別の業務でチーム内にとどまる可能性があるのですか
これに対して、ウォルフは「前に言ったことを繰り返すだけだ」と、再び明言を避けた。
■ボッタス「人生とは、自らの夢を追いかけるもの」
こうしたやりとりが金曜日にあったため、メルセデスのドライバーふたりに、ウォルフの将来についての質問が行われたわけだ。まず、ハミルトンがこう答えた。
「忘れてはいけないのは、僕たちのチームには非常に多くのスタッフがいるということだ。チームにはだいたい2000人のスタッフがいる。だから、そのなかのひとりの将来によって、僕がとどまるかどうかを決定することはないということだ」
「確かに僕たちは(ウォルフとともに)チームを構築し、成長させ、常勝集団にした。でもそれは個人によって成し遂げられたわけではない。僕は彼(ウォルフ)と一緒に仕事をするのが楽しいし、彼と交渉するのも楽しいので、彼が(チーム代表として)とどまることを願っている。トトには本当に感謝しているし、彼の決断を完全にサポートするつもりだ」
ボッタスにとってもウォルフは特別な存在だ。かつて自分のマネージャーを務め、F1への道を切り開き、メルセデスへと導いた人物だからだ。
「確かにトトはチームにとって非常に重要な人物だが、ルイスが言ったように、すべてがひとりの人物によって成し遂げられたわけではなく、チーム全員の努力によって達成されたものだ。チームには非常に多くの重要なスタッフがいるから、彼がどんな決断を下しても、僕はそれを尊重し、彼の幸せを願っている。人生とは、自らの夢を追いかけるもので、それによって人々は幸せを得る」
「もちろん、彼が出て行くとしたら、それは残念なことだ。なぜなら、彼は僕にとってとても大切な人だから。でも正直、いまチーム内で何が起きているのかわからない」
ドイツのメディアは、ウォルフはチーム代表としては契約を更新せず、故ニキ・ラウダと同じように非常勤会長のような形でチームに残るのではないかと伝えている。あるいは来年からアストンマーティンとしてスタートを切るローレンス・ストロール率いるレーシングポイントへ移籍するという噂もある。
果たして、ウォルフはどんな決断を下すのか。