第6戦スペインGPの木曜日に行われたチーム別の記者会見で話題となっていたのは、パワーユニット(PU)の『予選モード』に関するものだった。
というのも、今週になって国際自動車連盟(FIA)が、予選時のみPUをパワーアップさせる使用法、いわゆる予選モードを非合法化する予定であることを書面で各チームに通知していたからだ。早ければ、次戦ベルギーGPから予選モードの禁止が適用される可能性もある。
この質問を受けたピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は「個人的には残念。だって、F1は限界で攻めるスポーツだから」と答え、ルノーのダニエル・リカルドも「予選は本来、全力でアタックするもの。ルノーの予選モードは、昨年大きく前進していたからね」と回答した。
ただし、シルバーストンでの2戦でメルセデスと優勝争いを演じ、今シーズンのタイトル争いを行いたいレッドブル・ホンダにとっては、捉え方は少し異なるようだ。マックス・フェルスタッペンは、次のように答えた。
「ある意味、正しい解決法だと思っている。予選後、僕たちはマシンに触れて何かを変更することはレギュレーションで基本的に禁止されているんだから。エンジンモード以外はね。だから、そのルールを厳格に適用するのであれば、エンジンモードも含めるべきだ」
シャルル・ルクレールが所属するフェラーリは、今シーズン、パワーユニットの性能不足に悩んでおり、予選モードの話題については、あまり興味がなさそうだったが、その答え自体はじつに興味深いものだった。
「正直、僕たちのパワーユニットは予選とレースで何も違いはないから、予選モードが禁止されたとしても影響ないんじゃないかな」
今年は予選でフェラーリPU勢が軒並み苦しい戦いを強いられており、フェラーリのパワーユニットの性能不足がささやかれていたが、ルクレールの回答はそれを裏付けるものだった。
したがって、予選モードが禁止されても自分たちのパフォーマンスは変わりないが、相対的にはどうなるかはわからないという。それはほかのパワーユニットマニュファクチャラーはみな、大なり小なり予選モードを持っているからだ。
「だから、僕らにとっては、予選モードが禁止されることは悪いことではない」
最後に登場したメルセデスのドライバーであるルイス・ハミルトンは、今回の噂にやや苛立ちを見せつつも、強気の姿勢だった。というのも、現在のF1で最も強力な予選モードを持っていると言われているのがメルセデスで、今回の決定はメルセデスの独走を止めようとする思惑が見え隠れしているからだ。
「これは明らかに僕たちをスローダウンさせるためのものだと思う。でも、彼らの望み通りにはいかないよ。やりたければ、勝手にやればいい。僕は全然構わない」
しかし、チームメートのバルテリ・ボッタスはハミルトンとは異なり、慎重な姿勢だった。
「ほかのPUマニュファクチャラーがどんな予選モードを持っているのかわからないので、正直答えられない。ただ、この話は予選のバフォーマンスだけにとどまらず、レースにも影響を与えかねないということだ。というのも、エンジンのモードには予選のモードだけでなく、防御モードやセーフティモードなどさまざまなモードがあるからね」
「僕たちはレースで状況に応じてそれらを使い分けることで、エンジンのライフを節約したり、アタックを仕掛けたりしている。だから、それがなくなると、もしかしたら、オーバーテイクがいままよりも難しくなるかもしれない」
スペインGPの木曜日に突然、話題となった「ベルギーGPからの予選モードの禁止」という噂。ちなみに下位チームの何人かは、まったくその話題を知らない者もいた。いかに今回のFIAのルール変更が急だったかがわかる。