「これからの社会はどうなるのだろうか」「うちの会社は大丈夫だろうか」
「今の仕事がなくなったら、自分はやっていけるのだろうか」
新型コロナウイルスにより未来がどんどん見えなくなる中での、働く人々の声です。同じような思いをメンバーも抱いています。このような思いに支配されていると、生産性の高い仕事はできませんし、目標に向かって人生を歩むことが難しくなってしまいます。
こんな時こそ、上司のセルフマネジメント力を示し、メンバーに伝えていくことが必要です。今回はセルフマネジメントに焦点を当て、話を進めていきます。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
一度立ち止まって自分の状況を把握することが大切
“セルフマネジメント”という言葉は聞いたことがあるけど、中身をあまり知らないという人が多いのではないでしょうか?セルフマネジメントとは「自分の内面的な状況に気づき、理解していくスキルを身に付け、変化する状況の中で、自分の望む結果を出すこと」を指します。
現在の自分の状況を理解し、自分の目標をしっかり見据え、そこに向かって進む自身の力をマネジメントしていく、といったところでしょうか。セルフコーチングにも似ています。
先の見えない現在だからこそ、不安を抱えながらやみくもに前進するのではなく、いったん立ち止まり、自身をマネジメントしていくことが大切なのです。
5種類の質問に答えてみよう
では、セルフマネジメントはどのようにやるのでしょうか。さまざまな方法がありますが、今回は“ニューロ・ロジカル・レベル”という考え方をベースにお伝えします。
ニューロ・ロジカル・レベルとは、アメリカの博士であり、作家でもあるロバート・ディルツ氏が、イギリスの人類学者グレゴリー・ベントソン氏の考えを体系化したもので、人間の意識を階層に分類したものです。
5つの階層があり、一番下から「環境レベル」「行動レベル」「能力レベル」「信念・価値観レベル」「自己認識レベル」と上がっていきます。上下のレベルは、お互いに影響し合っていますが、基本的には上のレベルが下のレベルに大きな影響を及ぼしています。
管理職のみなさんには、現在の仕事を5階層で振り返っていくことが必要になります。
ステップ1(環境):「今、自分の仕事の環境はどのようなものだろうか」
ステップ2(行動):「今、自分はどのような行動をしているのだろうか」
ステップ3(能力):「今、自分の仕事において、どのような能力を使っているのだろうか」
ステップ4(価値観):「今、自分はどのような事を大切にしながら仕事をしているのだろうか」
ステップ5(自己認識):「今、自分にはどのような使命/役割があるのだろうか」
といった質問に答えていきます。
例えば、もし自動車ディーラーの営業マンであったなら、答えとしては
ステップ①(環境):「車を顧客にお見せするショールームにいる」
ステップ②(行動):「お客様に車を紹介している」
ステップ③(能力):「コミュニケーション能力を使っている」
ステップ④(価値観):「お客様の笑顔を大切にしている」
ステップ⑤(自己認識):「車を通して、人との絆の機会を提供している」
といったものが挙げられるかと思います。この5つの階層をしっかり振り返ると、自分の仕事の意義を理解でき、モチベーションが向上していきます。すると、力強く仕事や人生を前に進めることが出来るようになります。
上司自身が定期的に立ち止まり、この5階層を振り返りながら目標に向かって力強く歩んでいく。その姿はメンバーにセルフマネジメントの大切さを伝えていくのです。
上司自らが、セルフマネジメント力を発揮し、メンバーにもセルフマネジメントを伝えていきましょう。先の見えない時代を自身の足で力強く歩む姿を見せ、メンバーにも自分の足で歩く方法を学ばせる。そんなことが必要な時代になってきています。