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雨の日は幽霊が見つけやすい? 霊視芸人・シークエンスはやともの「ヤバい生き霊」体験

2020年08月13日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 小学3年生のときに殺人事件の現場を目撃してしまい、それ以来霊が見えるようになってしまった吉本興業所属の芸人・シークエンスはやとも。初恋の相手が幽霊だったり、霊から同棲を持ちかけられたりと、数奇な人生を歩んできた彼がこの度初めて単行本を上梓した。


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 『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系列)に霊視ができる芸人として彗星の如く現れ、一躍人気者になったはやともの霊感は父親譲り。タクシー運転手である父は幽霊が乗ってくるとメーターを回さずに走り始めるという(客を乗せずにメーターを回すとドライバーの自腹になってしまうため)。本書ははやともが雑誌『女性自身』にて連載していたコラム「ポップな心霊論」を再編集してまとめたもの。コラムのタイトル通り内容はポップであり、ホラーに苦手意識のある人でも安心して読み進めることができる。


 吉本に入りたての頃、はやともは劇場で会う人に挨拶していたら挨拶を返してくれない人がいることに気付いた。いつのまにか社員さんにも距離をおかれるようになり、思い切って聞いてみると「誰もいないところに挨拶するヤバいやつ」だと思われていたことが判明。実は返事をしてくれない人は劇場にいる幽霊だった……というオチなのだが、同じく霊感がある彼の父親も似たような経験をしている。


 以前、はやともの父が入院していたときのこと。いつものようにお見舞いに行くと担当の医師から声をかけられる。「お父さんには、認知症の兆候があるかもしれません」話を聞くとはやともの父は病院の庭を散歩しているときに誰もいない場所に向かって挨拶をしており、看護師さんたちにも気味悪がられているという。はやともが気になって次の日の朝見に行くと、庭を散歩している最中に突然立ち止まって「おはようございます!」とあいさつする父の姿が。


〈親父が見ているほうには、先生が言っていたように“生きている”人は誰もいませんでした。でもそこにはちゃんと、幽霊が立っていたんです。〉


 私たちは幽霊と言われると映画『リング』の貞子や、映画『呪怨』の加椰子などのような見た目を想像しがちだが、実際はそうではないらしい。


〈目の前にいるのが、幽霊なのか生きている人なのか。一瞬で判断するのは、けっこう難しいです。〉


〈見た目は、生きている人とぜんぜん変わらないので、区別がつかなくて苦労したこともありました。〉


 はやともは生きている人とそうでない人の判断がつきやすいのは雨の日だと、以前とあるライブで発言している。「生きている人は傘をさすが、幽霊は傘をささないから」だそうだ。それ以来、私は雨の日に傘をさしてない人をたまに見かけると、もしかして……と思うようになってしまった。おばけはおばけらしい見た目をしていない。今すれ違った人も、この世の人ではないかもしれない。彼の話を聞いて、霊という存在がぐっと身近に感じられるようになった。


〈霊体の中心には、僕が「プライベートゾーン」と呼んでいる“魂”のような部分があって、僕が霊視をするときは、そこを深く覗き込むことで、人の性格や本心を見極めています。〉


 誰がどの人をいいと思っているか霊視でわかるため、芸人仲間の合コンにひっぱりだこだというはやとも。だが、人の本心がわかってしまうのはもちろんいいことばかりではない。


〈友達だと思っていた相手が、実は自分を嫌っていると知ってしまったり、信頼していた人から、裏切られていることに気付いてしまったり……。嫌な思いをしたこともたくさんあります。〉


 はやともを初めてライブで見たとき、若いのにどこか達観したような喋り方をする人だなと思った。それがどうしてなのかこの本を読むとなんとなくわかる。霊感があるがゆえに様々な体験をしてきて、人を信じることができなくなってしまったのかもしれないと。


〈せっかくお笑い芸人になったんだし、やっぱり1人でも多くの人を笑顔にしたいじゃないですか。見えちゃうものはしかたないんだから、この能力を少しでも誰かの役に立てようって思ったんです。〉


 小学生の頃に『地獄先生ぬ~べ~』を愛読し、霊が見えるという体質に少しでも憧れを持っていた自分を、私は深く恥じた。創作上のカッコいい霊能者のイメージが先行して、実際に霊感のある人がどれだけ大変な思いを抱えて生きてきたか、私は全然わかってなかったのだ。


〈この本を読んだ方にはわかっていただけるかと思いますが、正直なところ、僕の人生は結構ハードモードでした〉


〈でも今のところ、こうして元気に生きているし、夢だったお笑い芸人にもなれて、応援してくれる家族や、かわいがってくれる先輩、バカ話で笑い合える仲間たちに囲まれて、けっこういい人生を歩んでいます。〉


〈ハードモードな人生も、自分の考え方次第でどうにかなるものなんだなって実感しています。〉


 ハードモードな人生をたくましく乗り越え、お客さんを笑わせるためにはやともは舞台に立ち続ける。彼の巧みな話術に、私は今日も惹き込まれていく。


(文=ふじこ)