フェラーリとセバスチャン・ベッテルの関係がさらにこじれているようだ。4度のF1世界チャンピオンであるベッテルが、フェラーリで2020年シーズンを終えるかどうかも疑わしい状態になってきた。
このところ、チームメイトのシャルル・ルクレールと比べてベッテルのパフォーマンスはかなり低い状態が続いていたが、先週末行われた第5戦70周年記念GPではベッテルの怒りが爆発し、チーム戦略を公に批判する事態となった。
決勝レースでのタイヤ交換後、ピットアウトした時点でトラフィックに引っかかってしまったベッテルは、無線で「このギャップは望んでいなかった。今朝そのことは話し合ったはずだ。僕はこれを何とかしのぐつもりだが、あきらかに君たちはしくじったんだ」と伝えた。
チーム戦略を愚弄されたフェラーリ代表のマッティア・ビノットは、シルバーストンでのレースについて、ベッテルが1周目に犯したミスに大きく影響されたものだと応じた。
フェラーリがチームメイトを優遇しているといった類いの非難は避けたものの、現在33歳のベッテルが見せるしぐさや、チームと彼のそれぞれのコメントからは、フェラーリとベッテルの関係悪化が進んでいることがうかがえる。
元フェラーリF1のドライバーであるゲルハルト・ベルガーは、今週オーストリアのテレビに出演し、「チーム全体の雰囲気を考えれば、今の時点で2021年のラインアップに切り替えるべきだと思う」と語った。
しかしフェラーリにとって、ベッテルをシーズン途中で別のドライバーに替える作業は複雑かつ高額の費用負担にもつながるものだ。フェラーリは、ベッテルのとの契約なかで残る期間について、金銭面の条件を満たす必要がある。
そして経験豊富なF1ドライバーの後任を探す作業は、同じくらい困難だといえる。現時点で契約可能で、かつ各種要件を満たすドライバーはほとんどいないからだ。思い浮かぶのは、ただひとりニコ・ヒュルケンベルグの名前くらいだろう。
『BBC Five Live』のコンサルタントを務める元F1ドライバーのジョリオン・パーマーは、短期的にみてベッテルとフェラーリがうまく協働していくことは難しいと考えている。
「(フェラーリに残ってシーズン終了まで戦うことが)彼にとって可能かどうか、分からない」と、パーマーはBBC Five Liveのポッドキャスト『チェッカーフラッグ』で語った。
「レースのたびにというよりも、今は日を追うごとに両者の関係が悪化している。彼はルクレールと比べて本当にパフォーマンスが低い。そして、そのルクレールには将来性が感じられる」
「フェラーリに加わって2年目のルクレールは、最初のシーズンからベッテルよりも輝いていた。彼は非常に高額の契約を結んでおり、チームにとって中心人物となっていくだろう」
「一方のベッテルはじきにチームを離れるが、今のところポイントを稼ぐことにすら苦慮している。これまで4レースでなんとかポイント圏内に入れた程度だ。唯一ハンガリーGPではポイントを大きく増やせる可能性があったが、そのときも2度コース外にはみ出してしまった」
「ベッテルは、マシンに問題があると考えている。レース後のインタビューでそれを話したがらなかったことからもあきらかだ。とにかく、彼とフェラーリの関係は悪くなるばかりだ」