2020年08月12日 10:02 弁護士ドットコム
子どもに恵まれ、しあわせな毎日を送る男女。しかし、さまざまな理由で子どもの父親と母親が「法律上の夫婦」ではないというケースもある。弁護士ドットコムにも、既婚男性と5年ほど一緒に生活しているという独身女性が相談を寄せている。
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相談者は男性との間に2人の子どもがおり、4人で暮らしている。「子どもたちの将来のためにも男性と入籍したい」と考えた相談者は意を決し、男性の妻にすべてを打ち明けた。
妻には「慰謝料や養育費を支払う旨の誓約書にサインをすれば、男性とは離婚する」と言われたため、男性と相談者は誓約書にサインした。
ところが、妻は離婚届を出さなかった。相談者が事情を聞くと、妻は離婚の条件として「男性と相談者が別れること」を加えてきたという。
相談者によると、妻は男性が相談者の家を出て1人で生活していることを確認し次第、離婚届を提出することを考えているようだ。男性は、妻が提示する「不倫相手(相談者)と別れること」という条件を受け入れなければならないのだろうか。
離婚問題に詳しい山口政貴弁護士は「男性が早期に離婚を希望するのであれば、一時的であるにせよ、妻のいうとおりに、いったんは不倫相手と別れるということが考えられます」と語る。
ただ、男性が不倫相手と別れたとしても、早期に離婚できるのかは疑問があるという。
「男性の妻は、誓約書にサインしてもそれに納得せずさらに条件を付け加えてくるような方です。仮に不倫相手と別れたとしても、さらに別の条件を提示してくるかもしれません。そもそも男性が不倫相手と別れたとしても妻に離婚届を提出する義務はありません」
もし、男性が相談者と一時的に別れることで妻との離婚が成立し、その後に相談者と再婚した場合、妻は2人が別れなかったことを理由に慰謝料を増額させることはできるだろうか。
「離婚が成立した後に別の女性と交際することは法律上何の問題もありません。心情的には慰謝料を増額してほしいという妻の気持ちもわかりますが、法律上は慰謝料が増額されることはないと思われます」
不貞行為をおこなった男性は「有責配偶者」の立場にある。もし、妻との話し合いや調停がまとまらず、裁判で離婚することになった場合、男性の離婚請求が認められる可能性はあるのだろうか。
山口弁護士は、つぎのように説明する。
「不倫をした側からの離婚請求の可否については最高裁の判例があります。これによると、(1)別居が相当長期間になっている、(2)未成熟子が存在しない、(3)相手方が経済的に苛酷な状態に陥らない、という3つの条件を満たせば離婚が認められるとされています。
今回のケースでは(1)長期間の別居という条件は満たすと思われます。そのため、(2)子どもが未成熟子ではない、(3)妻側に慰謝料や養育費等の金銭をきっちり払う、という条件を満たせば、離婚請求が認められる余地はあると思われます」
【取材協力弁護士】
山口 政貴(やまぐち・のりたか)弁護士
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。
事務所名:神楽坂中央法律事務所
事務所URL:http://www.kclaw.jp/index.html