カーリンの角田裕毅が、シルバーストンで行われたFIA-F2第5戦のレース2で、F2初優勝を遂げた。タイヤに厳しい展開となることを予期し、レース中はタイヤマネージメントに専念。終盤に、一気に勝負に出た。
上位2台の同士打ちという幸運にも助けられたものの、冷静なレース運びが勝因だったことは間違いない。もともとタイヤの使い方のうまさには定評のある角田だが、その長所を遺憾なく発揮したレースだったといえるだろう。
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──FIA-F2初優勝、おめでとうございます。
角田裕毅(以下、角田):ありがとうございます。昨日よりずいぶん路面温度が下がったこともあって、スタートはよくなかったです。でも他のドライバーも苦戦していたようで、ポジションを落とさずにいけました。そこは大きかったですね。
(先行する)プレマの2台は序盤かなり速くて、後ろからも(他のクルマが)迫っていた。後ろとの差をしっかり見ながら、プッシュしすぎないようタイヤをいたわって走りました。
タイヤマネージメント自体は、すごくうまくいったと思います。すぐ前に2台が走っているせいで乱流がひどかったので、タイヤを保たせる走り方は決して簡単ではなかったです。
そうやって抜く隙をうかがっていた終盤、(プレマの)2台がやり合ったおかげで簡単にトップに立てたのはラッキーでした。その後もペースが落ちず、その点でもすごくいいレースでした。
──タイヤをうまく保たせられたということは、後ろから迫っていたジャック・エイトケン(カンポス・レーシング)もそれほど大きな脅威ではなかったのですか?
角田:最初の1周は、けっこう危なかったです。でも徐々に離れていって、ついてくるのが大変そうなのがわかりました。その後はほとんど後ろを気にすることなく、プレマを追うことだけに集中しました。
──左フロントタイヤにくっきりと線が見えていましたが、ドライビングへの影響は?
角田:だいぶ感じていました。レース中盤には特にアンダーステアがひどくなりました。これはまずいなと思って、ペースを少し落として、フロントをいたわる走りに切り替えました。
そうやって挙動がニュートラルになるまで我慢して、その後ペースを取り戻すことができました。そのあたりの対応が、結果的によかったなと思っています。
──10周目ぐらいに、前の2台にかなり近づいていました。そこでフロントタイヤのタレがひどくなったのでしょうか?
角田:そうですね。あそこでプッシュして近づいて、ダウンフォースが抜けたまましばらく走ったのが、原因だったと思います。それからは乱流の影響が来ないところまで下がって、ペースの回復を待ちました。
──もし前の2台がぶつかっていなかったら、最終的に何位だったとご自身では思いますか。ロバート・シュワルツマン(プレマ・レーシング)はかなりペースが落ちていましたが、ミック・シューマッハー(プレマ・レーシング)も抜けていたでしょうか?
角田:どうでしょう。かなり接近はできていたと思います。シュワルツマンを抜くのは、そんなに難しくなかったでしょうしね。ペースは落ちていなかったし、シューマッハーより少しだけ速かったので、近づく自信はあった。ただ抜くところまでいけたかどうか、そこは微妙だったかもしれません。最終周にどうだったか、という感じですね。
──あの2台が接触したタイミングで、角田選手も仕掛けようと思っていたのですか?
角田:はい。シューマッハーがシュワルツマンに接近するまでは、僕がプッシュすると彼も差を広げる。その繰り返しでした。なのでシューマッハーが仕掛けるまでは、僕も後ろでじっと待っていようと。
──その辺りの駆け引きについては、エンジニアと無線でやり取りしたのですか?
角田:そこまで話はしなかったですね。エンジニアからは、「左前輪のデグラデーションに気をつけて」という無線が、何周かおきに来てました。
──攻めのタイミングなどは、自分で考えて判断したということですね。
角田:そうですね。その辺りは実際に運転してるドライバーでないと、わからない部分ですから。
──今回の初優勝で、ドライバーズ選手権でも8位から6位に上がりました。とはいえ選手権の順位や今後の見通しなど、そのあたりのことはまだそれほど意識してないのでしょうか?
角田:特に意識はしていないですが、ただシーズン序盤はあまりにも意識していなかったと思ってます。意識しないで目前のレースに集中しようと思っていたのですが、それが逆に冷静さを欠いて何度もフロントウイングを失うことに繋がった気がします。レースのことしか考えられない、余裕のない精神状態だったんでしょうね。
まだ今は6位ですし、シーズンも前半で、ランキングを意識するような段階ではない。僕の目標はあくまで、チャンピオンになることです。