2020年08月07日 18:22 弁護士ドットコム
新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の運行会社の日本法人「カーニバル・ジャパン」(東京都中央区)の元従業員3人が8月7日、同社に対して、解雇の無効や期間中(7月以降)の賃金などを求めて、東京地裁に提訴した。
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また、違法な解雇だとして、同社社長に計330万円の損害賠償も求める。
提訴後、元従業員らは会見で「とてもいい会社だと思っていたし、クルーズ業界も非常に魅力的と思っていた。コロナの件があったとしてもこういう対応をとるのはよくない」と訴えた。
訴状などによると、男性2人、女性1人の原告らはいずれも2012~2013年ころに同社に入社した。営業やカスタマーサービスなどの業務に従事していた。
同社には67人の正社員がいた。うち24人は6月4日、退職合意書へのサインをするように求められた。退職に応じない7人のうち、本件の原告3人は連合ユニオン東京に加入し、団体交渉で解雇の撤回や、雇用調整助成金などを利用した雇用の維持を求めたが、6月30日付で解雇された。
7月6日に不当労働行為の救済を都労委に申し立てしている。また、6月23日、7月13日に団体交渉も実施したが、要求が認められず、提訴に至った。
経営危機を理由とする整理解雇には、(1)人員削減の必要性(2)解雇回避努力(3)人員選定の合理性(4)手続きの正当性の、いわゆる「整理解雇の4要件」を満たす必要があるが、原告側代理人の今泉義竜弁護士は「整理解雇の4要件を満たしていない」と主張する。
(1)については、同社が深刻な経営状況にあったことは事実だが、4月には、社長が解雇しない旨を述べ、また原告らを含む従業員は2%程度の昇給が実施されるなど、人員削減の必要はないとする。
(2)についても、雇用調整助成金の活用などによって雇用維持に努めていなかったという。(3)退職勧奨の際に理由は示されなかった。のちの団交で同社は「勤務成績」を理由としたが、原告側はその具体的内容は不明であるとする。(4)についても、15分の面談で4日後を期限としたサインを求められるなど、相当性は認められないとの主張だ。
原告の元従業員らは、ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染の対応にも必死で追われてきた。カスタマーサービスを担当する30代男性は、記録に残していないものをのぞき、1日20件以上の誹謗中傷の電話やメールに対応したという。
「お客様を下船させるなとか、おまえたちを絶対許さないとか、国民の税金を返せとか、火をつけにいくなど」ひどいものだったそうだ。
また、感染した乗客の医療費を支払う際に「法外な値段を請求されることもあって、対応していた」という。
別のクルーズ船の予約を担当していた女性は「会社の経営が厳しいことは私たちもわかっています。安易に解雇したことに納得していません」と話す。
「私たちも会社と一緒に状況を解決していくため、協力するつもりで団交に臨みましたが、一切受け入れてもらえず、提訴に踏み切りました。
残っている社員もいつ解雇されるかとビクビクしています。このまま諦めてしまうと、残った社員も同じことになるかもしれません。諦めずに戦います」
会見後、同社は編集部にコメントを寄せた。
「カーニバル・コーポレーション&plcは、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大に伴い、現在もなお、保有する全客船の運航中止を続けております。
これを受け、日本法人である株式会社カーニバル・ジャパンも今後の運航再開の目処が立たないことから、人員削減を伴う組織の変更をせざるを得ない状況となりました。
この変更により影響を受けた従業員に対して、誠意をもって対応していく所存でございます。
また、提訴に関しては訴状が届いていないので、コメントは差し控えさせていただきます」