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セシルマクビー全店閉鎖で「500人解雇」の報道、従業員はこれからどうすればいい?

2020年08月04日 10:01  弁護士ドットコム

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ギャル系ファッションとして人気を博した「セシルマクビー」(CECIL McBEE)が、全国43店舗の直営店と、ECビジネスの終了を決めた。日本のギャル文化をけん引したブランドだけに、驚きが広がっている。


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ファッションビジネス・ジャーナリストの松下久美さんの記事によれば、「無借金経営で、従業員の給与や取引先への支払いはすべて行う」という。



また、この記事の中で、ジャパンイマジネーションのオーナーである木村達央会長兼社長は、解雇対象が500人にのぼること、「僕としては従業員の行き先が一番気がかりなポイントで、できるだけのことをしたい」との考えを明らかにしている。



解雇対象となった従業員としては、このまま働き続けたいと考える人もいれば、応じるにしてもこれからの生活に経済的な不安を抱える人もいるだろう。



事業縮小にともなう解雇には応じなければならないのだろうか。また、解雇に応じるとしても、補償などはどうなるのだろうか。労働問題に詳しい島田度弁護士に聞いた。



●法律上は「整理解雇」にあたる

ーー事業縮小にともなう解雇には応じない場合、解雇を争うにはどのような手段があるでしょうか



解雇の有効性を争うには、労働者の地位確認訴訟、地位確認の仮処分などが考えられます。紛争の長期化を望まない場合は労働審判という方法もあります。



争うとした場合の見込みですが、ブランドの終了に伴う解雇なので、法律上は整理解雇にあたります。整理解雇を行うには、いわゆる4要件を満たさなければならないとされています。




(1)人員削減の必要性
(2)解雇回避努力義務が尽くされていること
(3)解雇者選定基準及び選定の合理性
(4)説明・協議義務を尽くしたこと




記事によると、ジャパンイマジネーションはこれまで無借金経営で運営してきた優良企業であり、今年2月の時点でも121億円の売上高があったとのことです。



●人員削減に必要はあるのか

そうだとすると、いかに売り上げが落ちてきているといっても、570人中500人もの大量解雇をする必要性が本当にあったのかについては疑問が残ります。解雇を避けるために何らかの対処は可能であったのではないのでしょうか。いわゆる4要件のうち(1)と(2)を満たさない可能性が少なからずあるように思われます。



また、少なくとも記事中からは、従業員に対して説明・協議を尽くしたとはうかがわれませんので、(4)の要件も問題となりうるでしょう。



詳細な事情がわからないのでこれ以上はなんとも言えませんが、これらの事情次第では、十分解雇を争えるように思われます。



ーー解雇に応じる場合、従業員は失業保険などの補償は受けられますか。また、受けられるとして、正社員と非正規社員とでは扱いは異なりますか



整理解雇なので、会社都合による解雇として待機期間なく失業保険は受給できます。この点については正規雇用と非正規雇用で違いはありません。




【取材協力弁護士】
島田 度(しまだ・わたる)弁護士
東京大学法学部卒業
札幌弁護士会所属
札幌市民オンブズマン 代表
いのちと健康をまもる北海道センター 理事
ブラック企業被害対策弁護団 北海道ブロック 事務局長
事務所名:きたあかり法律事務所
事務所URL:http://kitaakari-law.com/