2020年08月03日 10:01 弁護士ドットコム
契約書や給料、移籍やファンとのトラブルーー。地下アイドルがあいやすいトラブルと対処法をまとめた「地下アイドルの法律相談」(日本加除出版)が7月20日に出版された。
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これまで数々の地下アイドルから相談を受けてきた深井剛志弁護士が、法律相談Q&Aを執筆。漫画家の西島大介さんがマンガを手がけ、元地下アイドルのライター・姫乃たまさんのコラムも収録されている。
深井弁護士は「契約書に書いてあるからといって、拘束力があり有効な条項であるとは限りません。地下アイドル本人はもちろん、事務所の人やファンにもぜひ読んでもらいたいです」と話す。
地下アイドル業界は、事務所や運営側も法律知識に乏しく、問題が起こりやすいという。深井弁護士は「数多くの事務所で、法的トラブルに発展するような問題がおきていると思います。しかし、顕在化しているのはその一部だけです」と明かす。
地下アイドルからもっとも多く寄せられる相談は、「辞めたいのに事務所側が辞めさせてくれない」、「辞めるならお金を払え」など辞める際のトラブルだ。契約書にアイドル側からの契約解除を認めるような条項が書いてあることは少なく、中には契約解除にともなう違約金を求める場合もある。
「仕方なく違約金に従ってしまう人も多いが、払う必要がないこともあります。また、事務所側に重大な契約違反がある場合や、アイドルが労働者だと認められれば、労基法に基づきやむを得ない事由による契約解除ができます」
労基法が適用される「労働者」かどうかは、契約内容や働き方の実態などをみて判断される。深井弁護士は「私の元に相談に来たアイドルは、仕事を断れないなどといった事情があり、労働者性が認められる方が多いと思います」という。
また、アイドル業界で暗黙の了解のようになっているのが「恋愛禁止」だ。契約書に交際禁止を明記したり、ルールを破ったら損害賠償を請求すると書かれていたりすることもあるという。
しかし、過去の裁判例では、恋愛禁止条項を破ったことを理由とする損害賠償請求を認めなかったケースがある(平成28年1月18日東京地裁判決)。
判決は、異性との交際について、「人の人生を自分らしくより豊かに生きるために大切な自己決定権そのものである」などと示し、損害賠償という制裁で禁止することは行き過ぎと結論づけている。
深井弁護士は「アイドル側が知識武装しても、事務所側とは力関係に差がありすぎる。多くの人が地下アイドルに関する問題に関心を持つことで、業界全体が変わっていくのではないかと思います」と呼びかけた。