画像提供:マイナビニュース ●「歌うのが楽しい」と思えるようになるまで時間がかかった
声優・西山宏太朗が2020年10月7日、ミニアルバム『CITY』を引っ提げてアーティストデビューを果たす。
○●思いもよらなかったアーティストデビュー
今回はデビューを記念し、本人にインタビューを実施。まだレコーディング中だという本アルバムについてはもちろん、デビューに至るまでの葛藤やこれまでの音楽事情などについてお話を聞いた。
――今回はミニアルバムのことに加えて、デビューに至るまでの経緯についても話を聞きたいと思っています。まず、アーティストデビューの話をもらったのはいつ頃でしたか?
正式にオファーをいただいたのは、2019年の夏ごろだったかな。それより前から「やりましょうよ」というジャブは打ってもらっていました。でも、まさか自分にお声がけいただけるとは思っていなくて。話半分くらいでいつも流していました。
――西山さんは『美男高校 地球防衛部LOVE!』や『B-PROJECT』などの作品、またラジオ番組「ひょろっと男子」から派生したユニットで梅原裕一郎さんと一緒に音楽活動もされていますよね。なので、「ようやく!」という待望の声も多かった気がします。
いやいやいや! 本当に「まさか自分が……」という気持ちが強かったので、お話をいただいてからも悩みました。実は「やります」とお返事するのにも、数カ月いただいたんですよ。
――それほど悩んだのは、アーティスト活動に対する不安があった?
続けられるのかという不安もありましたし、何より、音楽活動は得意な人がやるものだろうと思っていたんですよ。僕はデビュー時から「音楽活動をガンガンやっていきたい」という気持ちがあったわけではなかったんですよね。
――音楽はあまり好きではなかった?
生活の一部にはあったので、音楽自体は好きだったと思います。でも、それは歌う側ではなくて、聞く側としての好き、という感情でしたね。
――どういうジャンルの音楽をよく聴いていましたか?
「ハロー!プロジェクト」が好きなので、つんく♂さんが作詞・作曲される楽曲はよく聞いていて、がっつり影響を受けました。彼女たちのライブパフォーマンスを観て、「かっこいいな」とも思っていたんです。
――ただ、自分がパフォーマンスする側になるとは想像もしていなかった。
そうですね。作品を通してステージで歌唱することはありましたけど、こんなに緊張するんだという気持ちになることが多くって。だから、「歌うのが楽しい」と思えるようになるまで、結構時間がかかったんです。その境地にまで全然至らなかった。もちろん、仲間たちと一緒にやるのは楽しかったですよ。でも、実際に本番で歌うとなれば、緊張のほうが勝っていたんです。
――その気持ちが変化したから今回、アーティストデビューに踏み切ったんだと思います。
2019年にメットライフドームで行われた『アイドリッシュセブン 2nd LIVE「REUNION」』が転機となりました。あのライブでは10曲前後の楽曲を披露するユニットもあるなか、僕が所属するZOOL(ズール)は3曲だけだったんです。ただ、その3曲に思い切り集中して魂を注ぎ込みました。ステージに立った瞬間はやっぱり緊張しましたけど、楽しいという気持ちが徐々に上がっていったんです。その時に「あぁ、少しずつ冷静にステージ立つことができるようになったんだな」って感じたんですよね。それこそ遅いくらいなのですが、「こうすれば楽しめるかもしれない」「こうやればいいんだな」という道筋があのライブで見えた気がしたんです。
○●「夏」と「カレー」と「音楽」を愛するのがシティボーイ
――続いて、西山さんの音楽事情について聞きます。「ハロー!プロジェクト」のほかに聞くジャンルは?
最近はシティポップ感のある楽曲をよく聞くようになりました。
――西山さんは「シティボーイを目指す」と言っていますよね。
はい(笑)。
――もしかして、目指すべき「シティボーイ像」も音楽から影響を受けている?
そうかもしれません。僕にとってのシティボーイは……「夏」と「カレー」と「音楽」を愛する人というイメージがあって。僕自身もその3つが好きだし、その雰囲気に合う楽曲が好きなんですよね。例えば海や夏、夜のエモーショナルな雰囲気に合う楽曲とか。そういう音楽を日々追い求めては聞いています。
――何となく、神奈川が思い浮かびました。
確かに、湘南などはイメージに合いそうです(笑)。
――イメージでしかありませんが(笑)。音楽事情という点ではピアノ。Twitterで、本ミニアルバムのリード曲「真昼どきのステラ」を自身で弾いてみた動画をアップされていました。あれは西山さんの発案だった?
そうですね。最近はなかなか外に出られず、家で過ごす時間が増えたので、みなさんに楽しんでもらう何かができないだろうか、と思ったんです。そこで、スタッフさんを通じて、作曲・編曲を担当されている三好啓太さんに「コードを公開しませんか?」と提案しました。そしたら、三好さんが快諾してくださったんです。
『#真昼どきのステラ』MVが30万回再生突破致しました✨ご覧頂き、誠にありがとうございます!そして、西山さんより弾いてみた動画が届きました????皆さんもぜひおうちで演奏してみてくださいね!#西山宏太朗 #CITY #真昼どきのステラ #ランティス pic.twitter.com/Du8ynuJiZF— 西山宏太朗 Music Official (@KoutarotaroInfo) May 28, 2020
――そういう経緯があったんですね。
いただいたからには「僕もしっかりとやらないといけない」と思い練習を始めたのですが、本当に難しくって。見たことがないコードばかりが並んでいました。ただ、最近は便利なもので、アプリでコードを調べられるんですよ。ひとつひとつのコードを紐解きながら、練習しました。
――実際にどのくらい練習されましたか?
動画で公開されている部分だけで3日くらいは練習したかも。右手で弾きながら左手で動画を撮っていたので、それも大変でした。……いつかは全編通してできるようになったらいいな。
――弾き語りライブなんかも期待しています!
そうですね。いつになることやら……ですが(笑)。
――いつまでも待っています(笑)。ちなみに、もともとピアノは習っていたんですか?
小学生のころに習っていました。教室に行ったときくらいしか触らなかったので、何も成長しないまま時とお金だけかけて終わったという感じです(笑)。ただ、1年前くらいからまたピアノを触ろうかなと、ふと考えるようになって。それでも、ほとんど触っていなかったので、今回はいいきっかけになりました。
――私も自宅で過ごす時間が増えるなか、昔に触っていた楽器を引っ張り出してきましたが、相当腕がさびついていました。
楽器のオフシーズンって恐ろしいですよね……。当時の記憶は何も残っていなかったです(笑)。
●ミニアルバムは日常や1日をコンセプトに
○●ソロでのレコーディングを経て感じた梅ちゃんの心強さ
――西山さんはTVアニメ『美男高校 地球防衛部LOVE!』で歌唱する機会が多かったですよね。
大きなステージで歌うのも、ソロでキャラクターソングを歌うのも、『地球防衛部』が初めてでした。
――その頃と比べて、成長したなと思うことは?
当時は仮歌にならって歌うのに必死でした。まだ歌うことに慣れていなかったこともあってか、スタッフさんたちが優しく、ふんわりと「ここはこういう風にしましょう」とディレクションをしてくださり、完成したら上手く歌えているという感じだったんです。あの時の僕は「曲にノれない」ということを理解できていませんでした。
――当時は、みなさんが今ある最大限を発揮できるためのディレクションをされていたのかもしれないです。
そうですね。ただ、ちょっとずつ「これではだめだ」ということが分かってきて。それからしっかりと個人練習をするようになりました。
――あと、梅原さんと「ひょろっと男子」というユニットを組んでいますよね。ソロで歌う時と梅原さんと一緒に歌うときでは感覚は違いますか?
キャラクターを通していないので近い部分はありますけど、やっぱり梅ちゃんがいてくれるというのは心強いと、改めて感じています。また、梅ちゃんとは声の質が全然違うので、ふたりで歌うときは曲の流れを考えるんですよね。
――曲の流れ?
はい。例えば、梅ちゃんならここをカッコよく歌うだろうから、僕は可愛らしく歌ってみようとか。ふたりで歌うときは、差が出てそれぞれの良さが出たらいいなということも考えるんです。
――梅原さんを意識しながら歌っている。
そうですね。ここはユニゾンだから混ざり合うように歌おうとか、ソロだからはっきりめに歌うとか。当たり前かもしれませんが、そういうことは意識していますね。
――まだレコーディング段階ではありますが、ソロだからあえて考えていることは?
本当に小学生みたいなコメントで申し訳ないのですが、「楽しく歌う」ということですね。これは、僕のアーティスト活動におけるモットーでもあります。「真昼どきのステラ」は楽しくて前向きな楽曲。もちろんリズムなど細かい部分で意識することはありますが、マインド的にはこの曲をデビューにいただけたことが幸せだと思いながら歌っています。
○●スタッフと同じ方向性を向いて制作したミニアルバム
――今回のミニアルバム『CITY』は西山さんの好きなものが反映されていると聞きました。実際の制作にはどのように関わっていますか?
「アルバムのコンセプトをどうしようか」という段階から話をしました。僕は今回のミニアルバムは、日常や1日をモチーフにできたらいいなと思っていて、会議でもそのことを伝えたんです。そしたら、「実は私たちもです」とスタッフの方がおっしゃって! 実際の企画書にも僕が言っていた事とまったく同じ内容が書かれていたんですよ。
――見えている方向性が一緒だったんですね!
そうなんです。すごく嬉しかったですね。
――そんなミニアルバムのリード曲に選ばれたのが「真昼どきのステラ」。
どんな楽曲をミニアルバムに入れるのか相談しているとき、いくつか候補をいただけたんです。その時、「これがいいです!」とお願いしたのが、三好さんの楽曲でした。メロディがとにかく好きで、一度聞いただけで次の日にも思い出すような曲です。実は曲をいただいたときに仮で詞がついていて、それも十分に素晴らしい仕上がりだったんですよ。ただ、改めてどういう詞にしたいかという話をしたとき、1日のなかの昼間を表現して、ウキウキした気持ちになれる曲になればよりいいなと思って。個人的には日常から離れられるワードを入れたいとも思っていたんです。そしたら、スタッフさんが「それなら、ORESAMAのぽんさんがいいですよ」と提案してくれて、今回お願いすることとなりました。
――実際に詞をもらったときの印象は?
「マイペースでもかまわない」や「奇跡とかいいことばかり簡単に起こらないけど」などの言葉に共感できました。ぽんさんが僕のことを知って分かってくれているなと感じて、思わず嬉しくなってしまいましたね。
――共感できる歌詞だった。
そうですね。ここからスタートするんだなという気持ちがより強くなりました。
○●「真昼どきのステラ」レコーディングとMV収録を振り返る
――「真昼どきのステラ」のレコーディングについても教えてください。
この楽曲は生の楽器を使っていて、僕もレコーディング時に立ち会うことができました。そこで三好さんと初めて対面して、ひとつひとつの音にこだわっていらっしゃるのに感動しました。また、「真昼どきのステラ」を制作するなかで本当に色々な方が協力してくださっていることもその場で実感しましたね。気持ちがより引き締まりました。
――気持ちが引き締まった歌のレコーディングでは、どのようなことを意識しましたか?
この曲は和んでゆったり聞いていただいてもいいのですが、僕個人としては、スキップしたくなるくらいノッてもらえればと思っています。「シャララ」の部分は特にノッて欲しいですね! レコーディングのときも手を振りながら歌っていたんじゃないかな。それくらい、ノるということを意識した収録でした。
――それも、シティボーイらしさ?
これは違います(笑)。でも、ノリノリにできたらいいなと思いながら歌っています。ちょっと疲れたときに聞けば、気持ちがあがる曲になればいいな。
――本曲はMVも早々に公開されていますね。ソロでは初のMV収録だったかと思いますが、撮影はどうでしたか?
すごくサクサク進んだので、「こんなに次々と進むんだ」とビックリしました。MV撮影の流れを感じた一日になりましたね。
――私も何度かMV撮影の現場に立ち会ったことがありますけど、想像以上にパンパンと進んでいきますよね。
そうなんですよ! だから、ひとつひとつ後悔していたらダメだなと思い、集中しながら撮影しました。
――撮影するうえで苦戦したシーンは?
コーヒーを淹れるシーンがあるんですけど、コーヒーを豆から挽くということをやったことがなかったので緊張しました。あとはレコードをレコードプレーヤーに乗せるシーンがあって、これもやったことがなかったので、盤のどこを持てばいいのか、針をどこにさせばいいのか分からず……。そこで撮影が一回止まりましたね。
――レコードを触る機会って、今はそれほどないですよね。
そうなんです。でも、家にあったらいいなと思える経験になりました!
――完成したMVを観た感想も教えてください。
オシャレに撮ってくださって、楽曲の雰囲気ともピッタリと合っていて、とにかく感動しました。撮影は朝早くからだったんですけど、それさえも嬉しくって。「そうそう、MVって朝早いんだよ。何かのメイキングで観たことがある」という感覚でした(笑)。
――アーティストデビューするんだという実感がより湧いた?
そうですね!
●ここに来たらポジティブになれる場所でありたい
○●作詞への挑戦
――アルバムの制作はまだ進行中ですけど、今回は西山さんが作詞を担当される楽曲も3曲収録されるんですよね。
そうなんですよ! 作詞については「やりたい」と言っちゃいました(笑)。そもそも、アーティストデビューをする話をいただいたとき、「音楽活動をやりましょう」ではなく、「面白いことをやりましょう」と言葉をかけてもらっていたんです。その時にも作詞をやりたいと言っていて、制作が進む中で「早速、書いてみたらどうですか?」と提案してもらって。半分はノリでやった部分もあったんですけど、気が付けば3曲も詞を担当させていただけることになりました。
――詞はどうやって作っていきましたか?
初めて作詞をするので、本当に手探り状態でした。家のなかを動き回って、楽曲を聞きながら口ずさんで……という感じでしたね。
――言葉のチョイスって本当に難しいと思うので、作詞できる方にはリスペクトの気持ちしかないです。
本当に難しかったです! なんと言っても正解はないですから。僕は響きが好きな言葉をチョイスしたり、言いたいことを表す言葉を調べたりしながら、詞を作っていきました。完成した詞をスタッフさんに見せるときは、なんだか自分の心の内をみせるような気がして、緊張しましたね。
――その詞を世の中に出すことになります。
早く聞いて欲しいですね!
――ということは、自信あり?
あはは(笑)。でも、スタッフさんがいいねと言ってくれたので、不安はないですね。今回はこのスタッフさんたちだからこそデビューしたと言っても過言ではありません。それくらい信頼を置いているスタッフさんが「いい」と言ってくれているから、大丈夫だと思います。
――自分で作詞された曲のレコーディングもされましたか?
完成はしていませんが、レコーディングは進んでおります。
――提供曲と自作曲のレコーディングでは込める思いも違った?
そうですね。共感というよりは「そのまま」という感じかな。自分で詞を作っているときのストーリーが明確にあるので、そこに気持ちをおとすことができました。……よく考えると、自分で作詞した曲を歌ったんですよね。いま質問されて実感しました。
――作詞した曲を歌うことは、自分しか味わえないある種の特権だと思います。
そうかもしれないですね! 今、じわーっと責任を感じてきました。もちろん、覚悟をもって作詞をやりますと言いましたけど、改めて考えてみると、素晴らしい作詞をしてくださっている方々がいるなかに自分もいるんですよね。あれ、これ……どんどんハードルがあがってる?
――かもしれません(笑)。
ですよね(笑)。でも、スタッフさんが「ここがよかった」という感想を言ってくれるんですよ! 僕もそれにノセられています。
――早く色々な人からの感想も欲しい?
欲しいです。早く届けたいですね。
○●鈴村さんのように表現できたら
――今後目指していきたいアーティスト像は?
今はまだアルバムを作ることしか見えていない、というのが正直なところです。こうなりたいとか、こういうのをやりたいというのは、まだぼやーっとしているんですよね。とにかく、ミニアルバムに収録される一曲一曲に気持ちを込めて歌いたいと思います。ただ、自宅で過ごす時間が増えたなかで、色々なアーティストの方のライブDVDを観て刺激を受けたんですよ。特に印象的だったのが、鈴村健一さんの「満天LIVE」と「WARAUTA」。音楽を楽しそうに表現して、ステージ上を楽しく駆け巡っていらっしゃる姿がすごく素敵だと感じました。僕も鈴村さんのように表現できたら、と思っています。
――私も鈴村さんのパフォーマンスを拝見したことがあります。本当に、お客さんも巻き込んで楽しんでいるというのが印象的でした。
楽しいとかポジティブな感情っていい意味で伝染していくと思うので、僕もそうでありたいなと思っています。
――西山さんがライブを開催するときは、どういうことがやりたいですか?
どうだろうなぁ。僕がライブをやるとなったときは、もしかしたら歌だけじゃないかも。踊るだけの曲があってもいいし、トークショーみたいなものを歌の間に入れてもいいな。歌だけじゃない何かを一緒にできれば、面白そうだなと思っています。
――ライブというよりも、エンターテインメントのイベントになる。
そうですね! そういうのをやっていきたいです。それ、いいですね。そのまんま書いておいてください(笑)。「エンターテインメントをやっていきたい」です!
――西山さんが展開されるエンターテインメント、とても楽しみです! 最後に、今後アーティストとして活動をしていくなかでの目標を教えてください。
アーティストデビューするとなったとき、「よかったね」「おめでとう」という言葉をたくさんいただきました。喜んでくださっている方々に、さらに楽しいものを提供して、嬉しい気持ちをいっぱい共感できたらいいなと思っています。まだざっくりとしていて申し訳ないですが、観ていたら面白いとか、ここに来たらポジティブになれるといった場所でありたいですね。
○●西山宏太朗 デビューミニアルバム『CITY』
発売日:10月7日
初回生産限定盤(CD+Blu-ray Disc)
価格:3,500円(税抜)
通常盤
価格:2,200円(税抜)
・CD
リード曲「真昼どきのステラ」ほか5曲、全6曲収録
Blu-ray Disc
リード曲「真昼どきのステラ」のMV+メイキング映像などを収録予定(M.TOKU )