トップへ

「人事ロト」 町職員が異動予想、1口500円賭けて処分…賭博罪にも問われる? 福島県鏡石町

2020年08月01日 09:11  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

福島県鏡石町は7月21日、町職員が「人事ロト」と称して、町役場の人事異動を予想して現金を賭けたなどとして、関係した職員11名を減給(10分の1)や戒告の懲戒処分にしたと発表した。処分は7月20日付。


【関連記事:「就職したら結婚する。お前は就活しなくていい」そんな言葉を信じた女子大生の悲劇】



発表などによると、投票用紙に2020年度の人事異動に関する予想を記入し、役場内倉庫に置かれた投票箱に賭け金を入れるやり方で行われ、1口500円で1人当たり1~2口賭けたという。



人事異動前に発覚したため配当こそ行われなかったが、人事異動の発表が遅れるなどの影響は出た。



賭け金が少額なうえ、結果として配当されることがなかったとしても、賭博罪は成立するのだろうか。清水俊弁護士に聞いた。



●配当がなくても賭博罪は成立する

ーー賭けの対象が人事異動でも賭博罪は成立するのでしょうか



「賭博とは、『偶然の勝負ごとに金銭等を賭けること』をいいます。



人事異動はサイコロを振って決めているわけではないでしょうが、その人事異動の決定権の外にいる人間にとっては、人事異動の結果はまさに確実に予見できない『偶然の勝負ごと』になりますので、賭博罪が成立します」



ーー実際には配当が行われなかったようです



「賭博罪は『挙動犯』といい、実行に着手した時点で既遂となりますので、実際の配当がなくても成立します。



本件でいえば、2020年度の人事異動という賭けの対象を決め、役場内倉庫に置かれた投票箱に賭け金を入れた時点で賭博罪が成立しています。



人事異動の結果が公表されていない時点で発覚したとか、掛け金が配当されていないなど、その後の事情は、賭博罪の成否に影響しません」



●単純賭博であれば、不起訴となるケースは少なくないが…

ーー今後、刑事責任の追及はどうなるでしょうか



「犯罪が成立する場合でも諸事情を考慮して不起訴となることは賭博罪に限らずあり得ることですが、不起訴となるかどうかは個別のケースごとに判断されるため、本件について、報道を見る限りではなんとも言い難いです。



ただ、もともと単純賭博罪自体は、刑法犯の中でも比較的軽い罪であるため(50万円以下の罰金又は科料)、不起訴とされるケースが多いかもしれません。



また、本件の場合は、賭け金も投票箱に入る程度の金額でしょうし、すでに懲戒処分などの社会的制裁を受けていたり、これまでに前科がないなどの諸事情を考慮して不起訴となるケースが多いのではないかと考えます。



ただ、「人事ロト」が常態化し、その中で主犯と呼べるような主催者や利益を貪っている人間がいた場合には、常習賭博罪(3年以下の懲役)や賭博場開張図利罪(3月以上5年以下の懲役)も含め、処罰される可能性があると思われます」




【取材協力弁護士】
清水 俊(しみず・しゅん)弁護士
2010年12月に弁護士登録、以来、民事・家事・刑事・行政など幅広い分野で多くの事件を扱ってきました。「衣食住その基盤の労働を守る弁護士」を目指し、市民にとって身近な法曹であることを心がけています。個人の刑事専門ウェブサイトでも活動しています(https://www.shimizulaw-keijibengo.com/)。
事務所名:横浜合同法律事務所
事務所URL:http://www.yokogo.com/