2020年07月27日 10:31 弁護士ドットコム
外が暑いと、エアコンから出てくる風が冷風ではなく、温風になってしまうーー。そんな恐怖の職場で働く人が「室温35度になってもエアコン修理をしない会社に問題はないですか」と、弁護士ドットコムに相談を寄せた。想像するだけで、熱中症になりそうな内容である。
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相談者によれば、職場のエアコンは「外の気温が高いと熱風しか出ない」そうだ。恐るべきことにそんな状態が半月以上も続いており、室温は32~35度の日が続いている。当然の結果として、職場で熱中症になった人も複数名出たそうだ。
ところが、職場の責任者は「夏は暑いのが普通で我慢すればいいと思っている」といい、対応をとっていないという。
この職場に法的な問題はないのだろうか。村松由紀子弁護士に聞いた。
この職場が安全配慮義務違反などの罪に問われる可能性はあるのでしょうか。その場合、会社(責任者)はどのような責任を問われるのでしょうか
「労働契約法は、安全配慮義務について定めています。罰則はありませんが、この規定に違反すれば、従業員の被った損害(治療費や慰謝料等)を賠償する責任があります。
未だに根性論で片付けられることもある『熱中症』ですが、実は、平成8年(1996年)に厚生労働省から『職場における熱中症予防対策』という通達が出されています。その後、2度も見直され、内容も細かく規定されています。
この通達は、『暑さ指数』というものを活用するように提言しており、31度以上は、『危険』とされています。さらに、『高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設けること』という記載もあります。
相談者のように、室温が32-35度の状態が続いているのに放置した結果、熱中症になれば安全配慮義務違反として、損害賠償が認められる可能性が高いでしょう」
もしこのような劣悪な環境下で熱中症になった場合、労災は認められるのでしょうか
「熱中症は、労働基準法施行規則の別表に『暑熱な場所における業務による熱中症』と記載されている通り、労災の対象疾病となっているため、要件をみたせば労災と認められます」
毎夏、エアコンをめぐっては「暑い」「寒い」のバトルが繰り広げられます。労働者が知っておくべき法律などがございましたら、お教えいただけますと幸いです
「事務所衛生基準規則によると、事業者は、エアコンを設けている場合は、『室の気温が17度以上28度以下』になるように努めるとされています。あくまで努力規定ですが、一つの指標にはなるかと思います」
【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士5名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:http://www.yun-ken.net/