アルファタウリ・ホンダは昨年のトロロッソ時代に2度の表彰台を獲得し、さらなる飛躍が期待されていた。しかし開幕3戦を終えた時点で、緒戦の7位入賞が最高位。コンストラクターズ選手権暫定7位で、中団グループ内ではマクラーレン、レーシングポイント、ルノーに次ぐ4番手の立ち位置という、やや不満の残る序盤戦となった。
このチームと組んで4年目となる本橋正充チーフエンジニアは、その辺りをどう見ているのか。第3戦ハンガリーGP直後の独占インタビューで、存分に語ってもらった。
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──まずは先週末(第3戦ハンガリーGP)のアルファタウリ・ホンダの戦いぶりから、振り返っていただけますか。決勝レースは、ちょっと残念な結果に終わってしまいましたが。
本橋正充チーフエンジニア(以下、本橋CE):そうですね。初日からパワーユニット(PU)トラブルに見舞われたりして、十分な周回ができなかった。そしてレースも、ギヤボックストラブルでリタイアに終わりました。
ただ(ピエール)ガスリーはあまり走れなかったなかでも、パフォーマンスを発揮できる走りを見せてくれた。結果自体は残念でしたが、その部分は次戦以降に繋がる週末だったと思っています。
──ドライ路面での予選タイムは去年より確実に速くなっていて、進化を実感させるものでした。
本橋CE:クルマ自体のポテンシャルは、十分にあると思っています。ただセットアップを含めて、なかなかタイムをまとめて結果に繋げるところまでいけない。その意味でこの3連戦はいい点、悪い点がいろいろ見えましたね。
──2月のバルセロナテストでは、わりといい感触を持てていたと思います。ホンダとの協力関係も3年目を迎え、レッドブルからのパーツ供給も受けて、去年以上の飛躍が期待されました。その意味ではこの3連戦は、ちょっと期待外れだった印象です。
本橋CE:そうですね。セットアップが決まらない大きな理由に、マシンの理解が進んでいないということがあると思います。冬のテストは、比較的安定したコンディションで走れました。
しかし開幕してからは天候や路面コンディションが変化していく中で、どういう挙動を示すか、それに対してどんなセットアップをしていくか、まだ学んでいる最中というところですね。
──この3戦を見ると、ガスリーとダニール・クビアトの一発の速さであるとか、パフォーマンス差が去年より大きい気がします。
本橋:そこは、見方かなと思っています。確かに一発の速さでは差が見えるのですが、ロングランではダニールもけっこういいペースで走っていますしね。たまたまいい要素が、ガスリー側に多いのかなという感じです。
ただ具体的に二人の何がいい点で何がよくないかについては、チーム側もまだしっかりわかっていない。その辺りのデータ解析も、これからというところですね。
──クルマへの理解が、まだ進んでないということでしょうか。
本橋CE:思ったものとは違う挙動が返ってくるといいますか……。ドライバーフィーリングも含めてです。セッティングの方向性自体は決して間違ってないのですが、出てくる効果の精度が悪いというか。そんな気がします。
──マシンパッケージとして潜在能力は高いはずなのに、それがコース上で速さとして出せていないということですか?
本橋CE:そう思っています。
──今年の中団グループは、力関係が大きく変化しています。開幕3戦を見る限り、レーシングポイント、マクラーレンがトップ2を形成し、ルノーが迫っている。そこから少し離れてアルファタウリ・ホンダ、さらに離れてハース、アルファロメオ、ウイリアムズという理解で間違っていないですか。
本橋CE:実際の予選、レース結果が、今の力関係を反映していると思っています。アルファタウリ・ホンダは、だいたいその位置付けにいるという認識ですね。上位勢との関係でいえば、我々が落ちたというより他が伸びた感じです。早く追い付くために何をすべきか、チーム側と考えているところです。
──今季はほとんど毎週のように、立て続けにレースが開催されます。その過密スケジュールのなかで先行チームに追い付いていくように改良を重ねていくのは、いつも以上に大変ではないですか?
本橋CE:そうですね。そこはチームもそうですし、HRD Sakuraやミルトンキーンズにとっても、大きなチャレンジになります。
連戦の時は今までもそうでしたけど、コース上で起きている事象をレース現場から正確に伝えて、彼らのサポートをしっかり仰ぐ。そのやり方自体は変わりません。時間がないなかで、最大限の効果を引き出す。その考えの下で、現場エンジニアたちも情報の送り方とか、戻ってきたデータのクルマへの反映とか、今まで以上に気を使ってやっています。