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MotoGP:ほぼ“真夏”の路面温度を記録した第2戦スペインGP。上位ライダーもグリップに苦戦「タイヤがすぐにダメになった」

2020年07月22日 20:31  AUTOSPORT web

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2020MotoGP第2戦スペインGP スタートシーン
7月17~19日にヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトでMotoGP第2戦スペインGPが開催された。本来、第5戦として5月1~3日と2カ月半前に行われる予定だったスペインGPは新型コロナウイルスのパンデミックによりスケジュールが変更されている。

 開幕戦カタールGPではMotoGPクラスが中止されたため、ようやく初戦を迎えた最高峰クラスだったが、決勝レースを振り返ったほとんどのライダーはタイヤグリップの低下についてコメントした。これは7月開催となったスペインGPの気温、路面温度が例年より高かったことが原因であるのかもしれない。

 昨年の5月3~5日に行われたスペインGPでの決勝の気温は21度、路面温度が42度だった。週末で一番温度が高くなったのはFP2の気温25度で、路面温度は46度だ。

 さらに2018年5月4~6日に開催されたスペインGPの決勝データを見ると、気温25度、路面温度40度。レースウイークでは予選Q2が気温こそ24度と下回ったが路面温度は44度を記録した。ヘレスの過去5年間のデータを遡ってもほぼ同様の気温と路面温度が記録されていた。

 そんななか、今年のスペインGPの決勝では気温が32度、路面温度は53度をマーク。一番温度が高くなった予選では気温33度、路面温度54度と例年より10度近く上回っていることがわかる。

 決勝レースではヤマハファクトリーのふたりは両側ソフトタイヤを履いたが、それ以外のライダーはフロントにハード、リヤにソフトを選択した。

 バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は、技術的な問題でリタイアしたものの「気温が高くリヤタイヤを消耗して正しく機能させることができなかった。数周経つとグリップが低下してリヤタイヤには問題があった」とタイヤについて言及。

 アプリリアのブラッドリー・スミスは「スリップストリームに入るとタイヤの温度と空気圧はチャートから外れ、まったくグリップしなかった」とコメント。KTMのポル・エスパルガロもスリップストリームにつくと「いくつかのコーナーでフロントタイヤの温度がかなり高くなった」という。

 上位を走り初優勝を飾ったファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)でさえ「グリップがほとんどなく、タイヤがすぐにダメになった」とレースを振り返っている。

 タイヤがグリップしなくなった原因は路面温度だけだろうか。タイヤにもフォーカスを当ててみるが、最高峰クラスのオフィシャルタイヤサプライヤーを務めているミシュランタイヤは2020年シーズンに新しいスリックタイヤを開発している。主にリヤタイヤは大きくリニューアルして、プレシーズンテストからライダーがテストを行った。

 2月ではあるが、セパンテストで新しいリヤタイヤを試したスズキのアレックス・リンスに聞くと「基本のパフォーマンスがすごく上がった。(予選用ソフトタイヤは)どのライダーも平均的に大きくタイムを上げるのに役に立ったよ」と印象を語っている。

 そして7月13日、ミシュランタイヤはスペインGPに持ち込んだタイヤについて、昨年からグリップ、パフォーマンス、耐久性を向上させたと説明している。また、7月のヘレスは気温が高くなることを予想して、過去のデータを分析。コンピュータシミュレーションを実行して、新しいタイヤの構造に一致する化合物を選択しタイヤを製作したという。

 ミシュランがMotoGPクラスにタイヤ供給をスタートした2016年以降に決勝で50度を超えたのは、2017年のカタルーニャGP(54度)2018年のイタリアGP(51度)、マレーシアGP(53度)、2019年のカタルーニャGP(51度)の4戦と少数。そのためタイヤ製造にコンピュータシミュレーションを使用しなければならなかったことも納得できる。

 タイヤのパフォーマンスが向上したことでクアルタラロは予選Q2で1分36秒705をマークしオールタイムラップレコードを樹立。しかし、予選セッションの気温、路面温度は上述の通り、レースウイークで一番高かった。

 今回、気温の上昇を予想して新たに投入されたタイヤは、予選には適合したものの、決勝にはマッチせずグリップが低下したのだろう。とはいえスペインGPが昨年まで第4戦として開催されているため、開幕数戦を経験できず、初戦となった2020年の新型マシンの熟成具合に不安を残していたことが要因である可能性もある。

 しかし、2018年からレース周回数が25周に変更されたヘレスの優勝者のタイムは2018年が41分39秒678(マルケス兄)、昨年は41分08秒685(マルケス兄)、41分23秒796(クアルタラロ)と今年が大幅に遅かったわけではないことから、マシンに戦闘力がなかったわけではないことがわかる。

 MotoGPは7月から11月まで過密日程のなかヨーロッパ内で13戦が行われている。開催時期の変更により例年より気温が高くなるグランプリ、逆に10月以降に延期されたことで気温が低くなるグランプリではタイヤ選択が重要になるだろう。

 今週末も同地ヘレスでアンダルシアGPが開催される。優勝を目指すためにはアタックを試みてギリギリを攻める必要があるが、気温と路面温度、そしてタイヤの使い方を考慮して安定したペースを刻むことも勝利の鍵に繋がるのかもしれない。