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「密な学校こわい」7歳児童の人権SOS、法務局「あきらめて」に批判…反響呼んだ保護者の想い

2020年07月22日 10:21  弁護士ドットコム

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児童が「密な学校がこわいです。オンライン授業にして下さい」と相談したら、「あきらめて」と返事されたーー。そんな内容がツイッターに投稿され、波紋をよんでいる。


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ツイートしたのは、大阪府吹田市在住の「しまねこ」さん。息子(7)が新型コロナウイルスに感染することを懸念し、学校で配布された「子どもの人権SOSミニレター」で相談したところ、人権擁護委員から「今は、あきらめて、学校でがんばってみてはどうかな」などと書かれた返事がきたという。



このツイートに対し、「同じ子を持つ親として、怒りで震えた」「相談に対して『あきらめて』って初めて見た」「全然子どもに寄り添えていない」などの多数のコメントが寄せられ、リツイート数も5万回を超えるなど大きな反響を呼んだ。



どのような想いでツイートしたのか。しまねこさんにツイートに至った経緯やその想いを聞いた。(編集部・若柳拓志)



●病気抱える身、「密」な一斉登校に疑問

SOSミニレターを出すことになったきっかけは、6月から一斉登校が始まったことだという。



「5月半ばから分散登校が始まりました。息子は、その時点では問題なく登校していたんですが、6月から一斉登校となることを先生から聞き、『”密”になってしまうのに、なぜ?』と感じたようです」



息子は帰宅後、怒った様子で一斉登校のことを話した。分散登校がしばらく続くものと思っていたようだという。



このご時世、密な環境にはだれでも懸念を示すだろうが、7歳の児童がここまで怒りをはっきり示すのには理由があるようだ。



「息子は定期的な受診が必要な病気にかかり、コロナ禍での登校にはより慎重にならざるを得ない事情があります。息子自身もそれを自覚しているからこそ、密な環境になる一斉登校に怒ったんだと思います」



●ツイートはSOSミニレターに関する問題提起でもある



SOSミニレターは息子本人が相談内容を書いて出した。そしておよそ2週間後、今回のツイートした日(7月14日)に返事が届いた。最初に中身を読んだのは息子本人だという。



「『なんでやねん』と怒ってました。自分の言葉で一生懸命書いて相談したのに、答えは『今は、あきらめて』。怒って当然です」



しまねこさんもショックを受けた。もし先に返事を読んでいたら、息子には見せなかったという。



「取り扱いが難しい内容ということなら、『こちらでは対応しかねます』という返事でも仕方ないなと思っていました。あるいは、『オンライン授業受けたいんだね、もう少し待っててね』くらいの返事でもよかったんです。



まさか『あきらめて』と言われるとは。息子の気持ちをほんの少しでもくみ取るような内容なら、ここまでショックを受けることもなかったと思います。



虐待やいじめなどの悩みに対して、『あきらめて我慢しなさいよ』とは返事しないはずです。最後の砦と思っていたところに『あきらめて』と言われた側はどうすればいいのでしょうか」



また、同じような返事をもらうかもしれない他の子どもも心配だという。



「このような返事をもらう子どもたちがどれだけ傷つくか。そう考えたら、いてもたってもいられず、ツイートしました」



もっとも、実際にあった出来事を知らせるためだけにツイートしたわけではないようだ。



「どうして、このような返事が届くのか。個人で書いたのか、組織として書いたのか。ツイートには、SOSミニレターのあり方に関する問題提起の意味もありました」



別にツイートしたからといって、急にオンライン授業が始まるとは思ってない。しかし、これほどショッキングな返事をもらって、じっとしてもいられない。それがしまねこさんの率直な想いのようだ。



なお、オンライン授業は現在に至るまで行われておらず、息子は今も登校しているという。



●「あきらめて」の返事は、組織として作成されたもの

SOSミニレターは、主に学校を通じて全国の小中学生に配布されるもので、相談したいことを書いて法務局に送り、悩みごとの解決を図ろうとする取り組みだ。大阪法務局の担当者によれば、法務局と府人権擁護委員連合会が共同で取り扱っているという。



返事については、「組織として行っており、人権擁護委員が一人で作成しているわけではない」という。返事に明記される人権擁護委員の名前は、「作成に主として関わった委員」のもので、法務局の職員など複数人が作成に関与していると説明する。



相談内容は必ずしも人権に直接かかわるものに限らず、「『困ったことは何でも相談してください』ということで実施している」とし、「送られてきたSOSミニレターについては必ず返事する運用となっている」そうだ。



つまり、しまねこさんの息子は決して相談先を間違えたわけではない。「あきらめて」という返事は、相談対応のプロが複数人で作成したものだったということになる。



オンライン授業は複数の自治体で行われている。仮に実施が容易ではない事情があるとしても、「オンライン授業にして下さい」と相談する子どもにかけてあげる言葉は「あきらめて」以外にもあったのではないだろうか。



大阪法務局の担当者は、しまねこさんのツイートがひろく拡散されたことについて「承知している」とし、今回批判が集まった返事については、「色々な意見をいただいているので、真摯に受けとめなければいけない。今後に活かしていきたい」という。