2020年07月21日 19:02 弁護士ドットコム
大手IT会社「楽天」(本社:東京都世田谷区)で勤務していた40代男性が、勤務中に上司の男性から暴行を受け、頚椎不全損傷やうつ病となり、後遺障害準用2級と認定されたことなどから、同社と上司の男性を相手取り、逸失利益など約2億1756万円を求めて、東京地裁に提訴した(7月21日付け)。
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提訴後、会見した原告の代理人らは「日本有数のIT企業で、業界の先頭に立ってハラスメント防止のために力を尽くすべき。代表取締役会長は政府の重要な審議会の委員を務め、会社の最高責任者として本件に対する的確な対応を指示すべきであるが、これを怠り、責任は極めて重大」と訴えた。
会見での説明などによると、男性は2015年5月に同社に入社し、2016年7月に退社するまでウェブ広告の業務を担当していた。
同年6月14日、本社での会議中に、営業戦略について意見を述べたところ、当時の上司が椅子に座っていた男性の首付近を手でつかんで持ち上げ、壁際に立たせる暴行をしたという。
男性はその後、頚椎不全損傷やうつ病となり、現在も療養中。渋谷労基署は心身疾患について、労災と認定し(2017年8月1日付け)、また後遺障害についても認めた(2019年6月20日付け)。
原告は2019年12月6日、東京簡裁に調停を申し立てていたが、2020年7月15日に不調で終わったという。
原告側代理人の川人博弁護士は、被告人に楽天も含まれている理由を「会議室で仕事中に起きた事件であることから、会社にも責任はある」とした。
さらに、その根拠としては「会社は上司の行為に対する民法上の使用者責任を負う。また、日常的に指導教育すべきであるにもかからわず、こういう事態が起きた」と安全配慮義務違反も指摘した。
調停での交渉でも、楽天は「2人のケンカであり、会社は関係ない」との主張をしていたという。
被害男性は今も療養中だ。用意されたコメントが会見で読み上げられた。
「会議中の暴行で怪我を負い、困って社内のハラスメント相談部署に相談したにもかかわらず、十分な調査をされず相談を否定され、配転希望にも対応してもらえず、退職をせざるを得なかった。暴行を受け、首の手術を行なってから、既に4年も経過しておりますので、早く決着がつくことを心より願います」
楽天は編集部の取材に「楽天では、すべての役職員の人権が尊重され、安心安全に働くことができる職場環境の提供につとめています。ハラスメントに該当する行為が認められる場合、就業規則そのほかにもとづき、厳正に対応しています」とコメントした。
元上司が今も同社社員であるかについて、楽天は個人情報を理由に回答はなかった。