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須永兼次の「アニソンをしゃぶりつくせ!」 第7回 大橋彩香・富田美憂…”常連”と”新星”、ふたりの声優アーティスト【アニサマ2020特別編その5】

2020年07月17日 23:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
5回目となる今回は、DAY1より大橋彩香、富田美憂を紹介。いわば「アニサマ常連組」でもある大橋と、昨年ソロアーティストとしてデビューを果たして初の「アニサマ」出場を決めていた富田といったふたりの”声優アーティスト”について、今回は取り上げていきたい。
○【大橋彩香】今だからこそ受け取りたい、大橋彩香の"笑顔力"

ソロとしては2015年から、ユニットも含めれば2013年から連続出場を続けている大橋彩香。まさに’10年代中盤から後半の「アニサマ」で八面六臂の大活躍をみせていた彼女だが、実は現在年内発売に向けて3rdアルバムを制作中ということもあって、昨年夏のシングル「ダイスキ。」以降新譜のリリースはない。

デビュー5周年イヤーも華々しく幕を下ろし、次のステップへと進む彼女がこのタイミングのアニサマで何を歌うのか――密かに注目していたアニソンファンも多かったのではないだろうか。

☆この曲を聴け!……「ENERGY☆SMILE」

大橋彩香の笑顔は、”おひさま”である。もちろんこの5年のなかで彼女は、内面の葛藤を歌う曲やダンサブルに魅せる曲など、数々の挑戦を通じて自身の武器を増やしていった。そういった、彼女の表層的なイメージには直結しないような曲にもぜひ注目してはもらいたいのだが、やっぱり”今”欲しいのはこの曲。

ギラギラと照りつけるわけではないが確実にエネルギーを与えてくれる、”おひさま”のような笑顔とともに歌われる「ENERGY☆SMILE」だ。

しかもこの曲、ただ明るさ100%なだけではないのもまたいい。サビの冒頭2・3小節目に挿し込まれたマイナーコードは、ただでさえ元々リスナーにエモーショナルな感情を湧き起こさせるフックとなるポイントだったのだが、これがいま不思議と、多くの聴き手の無意識的な心情にも当てはまってしまうのではないだろうか。

もちろんこの曲のメインは”SMILE”。だがその裏に見える、ちょっとだけ胸にこみ上げてくるものをこらえるような瞬間――この苦しい春を過ごしてきた多くの人に、これ以上刺さるものはない。それはステージ上の大橋が笑顔であればあるほど、歌声がエネルギーにあふれ生きる力を与えてくれればくれるほどに、より強烈なアクセントとなってリスナーの胸を熱くさせるのだ。

そもそもリリースから5年を経た今ではこの曲は、ライブにおいて随所でエールやパワーを膨らませながらオーディエンスと交換し、ステージ上も客席も隔たりなく全ての人が笑顔で繋がれる曲にまで大きなものとなっている。だからこそ余計に、この曲はいち早く生で観たいし聴きたいもの。

きっと今ライブで歌われれば、ストレートな後押し一本の曲以上に心に刺さり、エネルギーを湧き上がらせてくれることだろう。ライブの開催が叶う日が来たらこの曲を通じて、客席から笑顔と歓声で大橋とエネルギーの交換をしたいものだ。

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○【富田美憂】彼女へのプレゼントでもある、”今の彼女”が歌うべき曲

2015年にデビューし2016年に『アイカツスターズ!』(虹野ゆめ役)で初主演を務め、以降も数々のアニメで多彩な役柄を演じてきた声優・富田美憂。着実に実力を培いながら人気も得てきた彼女は、キャラクターソングや声優ユニットとしての活動などでも確かな歌唱力をみせ、昨年11月に待望のソロアーティストデビューを果たした。

それから1年弱で立つこととなっていた「アニサマ2020」は、ソロアーティストとしての彼女を多くのアニソンファンに提示する、最高の舞台となるはずだった。

☆この曲を聴け!……Present Moment(TVアニメ『放課後さいころ倶楽部』OPテーマ)

前述した、昨年11月にリリースされた彼女のデビューシングルの表題曲。この曲の鍵になるのは、やはりデビュー作ということもあって”はじまり感”だろう。

全体を貫く飛翔感に加えて、飛び立った先に広がる抜けるような青空さえ感じさせてくれる。だから聴くたびに、とにかく気持ちがよくて仕方がない。加えてそれを表現する歌声にも芯があり、ピンと空に向かって伸びていく軌跡さえも見えてしまいそう。

だが同時に印象的だったのが、サビ等声を強めに出す部分でのロングトーンの語尾。ただ強く抜けていくだけではなく、ぱあっと広がっていくようなものなのだ。それも力なく気迫に散っていくというわけでもなく、確固たるひとつの色をもって。自分自身もはっきり立たせながら、楽曲にも非常にマッチした歌声を響かせることに成功していると言っていいだろう。

また、細かくみていくと、イントロのピアノが助走となり一気に大空へと飛び立っていく――という姿も想像できる。曲全体としてだけではなく、曲中の展開でもさらにひとつ”はじまり感”をリスナーに与える構成というのも、またニクい。

そしてこの曲、リリースされたのは富田が20歳を迎える直前。成人やアーティスト活動に向けて飛び立つ直前の彼女にあてられたこの曲は、同時にそんなタイミングを迎えた彼女への”Present”でもあったのだろう。そう感じさせるほどボーカルとのハマり具合抜群のこの曲を歌う姿、2021年のさいたまスーパーアリーナでぜひ目にしたい。

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今回ご紹介したふたりのうち、大橋は活動初期には「ENERGY☆SMILE」のような笑顔やポジティブさを与える楽曲が多く、成長とともに自身のフィールドを広げていった。一方、現在は爽快感の強いアッパーチューンやEDMが中心となっている富田も、これからやりたいことがより明確になったり挑戦が増えることで、楽曲のバラエティもより豊かになるはず。さらに成長したふたりがアニサマ2021のステージでオーディエンスに衝撃を与える姿に、心から期待したい。

さて、次回は大黒摩季、鈴木愛理、鈴木雅之 (五十音順・敬称略)をピックアップ。DAY2に顔を揃えたJ-POP界の大物アーティストがこれまで歌ってきた、そしてアニサマの舞台で聴きたいアニソンとは? どうぞ、お楽しみに!

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken(須永兼次)