2020年07月17日 10:11 弁護士ドットコム
飲食店で代金を支払わずに、そのまま出て来てしまったという人はいないだろうか。弁護士ドットコムには、次のような相談が寄せられている。
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相談者によると、ある牛丼チェーンで、350円の牛丼をテイクアウトしたところ、帰宅したあとで代金を支払っていないことに気づいたという。
牛丼を手渡される際、店員から何も言われなかったので、もう支払いは終わったと勘違いしたようだ。相談者は「無銭飲食として逮捕されるか?」と心配している。西口竜司弁護士に聞いた。
「新型コロナ感染症の蔓延によって、テイクアウトが増えていますから、もしかして、このような問題も多いのかなという印象を持っております。ちょうど本日(取材のあった7月9日)、私も吉野家さんで昼ご飯をいただきました。
さて、今回のケースですが、刑法の『詐欺罪』あるいは『窃盗罪』が考えられますが、いずれも故意犯です。店員を騙す意思があったり、牛丼を盗む意思があったならば、これらの犯罪が成立する可能性があります。
一方、今回の相談者の場合、『もう支払いは終わった』と勘違いしていることから、店員を騙す意思も、牛丼を盗む意思もなかったものと考えられます。したがって、これらの犯罪は成立しません。
ただし、刑事上の責任を負わないにしても、"代金を支払う"という民事上の義務は負っています。無銭飲食にならないか心配するくらいなら、しっかりと支払っていただきたいと思います」
西口弁護士によると、テイクアウトではなく、店内で飲食していた場合も、店員を騙す意思がなければ、詐欺罪は成立しないという。
一方で、店内で飲食したあと、店員を騙したわけでもなく、ただその目を盗んで黙って店から出てきたような場合は話がややこしくなりそうだ。
「この場合、窃盗罪も成立しない可能性があります。
『えっ』と思われるかもしれませんが、刑法上、『財物』(牛丼)を窃取した場合、窃盗罪が成立しますが、『財産上の利益』(牛丼を提供するサービス)を窃取した場合のことは書かれていません。
『利益窃盗』と呼ばれています。窃盗罪に問われないのです。
店内で飲食したあと、店員の目を盗んで黙って出てくるのは、『財物』を窃取したわけではないので、この『利益窃盗』にあたる可能性があるのです。刑法の難しいところですね」
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士Youtuberとしても活動を開始している。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/